「南無阿弥陀仏」と唱えれば、みんなが平等に救われる 法然の教えの魅力とは 『特別展 法然と極楽浄土』レポート
- 2024.05.06
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2024年4月16日(火)から 6月9日(日)まで、東京国立博物館 平成館(東京・上野)で、特別展『法然と極楽浄土』が開催されている。平安時代末期、戦乱や天災などに脅かされる不安定な世に生まれた法然は、「南無阿弥陀仏」と唱えれば極楽往生できるという「専修念仏」を説いて浄土宗を開き、広い支持を得た。本展は、令和6年(2024)が浄土宗開宗850年の節目に当たることから、重要寺院などが所蔵する貴重な文化財によって浄土宗の歴史を辿るものである。
本展東京会場広報サポーターを務めるアーティスト/浄土宗僧侶の西村宏堂も登場した内覧会の様子をレポートする。
※会期中、一部作品の展示替えを行います。
西村宏堂『みんなが平等に救われる』法然の教えの魅力
光を浴びて輝く法衣姿で現れた西村は、《仏涅槃群像》(江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵)に囲まれながら、本展や法然への想いを語った。
本展東京会場広報サポーター・西村宏堂
――展覧会の感想をいただけますか。
筆で書かれた字を見ると、書いた人の心が伝わってきて、実際に触れ合っている気持ちになれるのがまず素敵だな、と思いました。あと、これは見どころのひとつでもあるのですが、90cmの阿弥陀仏の像(《阿弥陀如来立像》鎌倉時代 13世紀 京都・上徳寺、前期展示)があるんですね。唇に水晶が薄く嵌められていて、リップグロスみたいに反射してキラキラしていて、写真では見えない、実物を見るからこそ楽しめる芸術だなあと感じました。教科書に載っているだけではない生のものを見て胸にぐっとくる、臨場感の湧く体験でした。
――法然さんの魅力を教えていただけますか。
『みんなが平等に救われる』という教えが魅力だなと思いました。私には同性愛者という後ろめたさがあったのですが、法然上人は「どんな人でも救われますよ」という趣旨の教えを、あらゆる人に向けて残されています。私が人としての価値を感じていいんだと思うきっかけになりましたし、自信をもらいました。
――来場者に向けてメッセージをお願いします。
実は私、美術大学のファインアート科を卒業しているので、いろいろな美術館にも行ったのですが、見るだけじゃなくて、なぜそれが大事なのかを知らないと、面白さを味わいきれないと思うんですね。今回のオーディオガイドは、現在と過去を行き来して生きているようにも感じられる歌舞伎役者の方が担当なさっていて、あたかも昔の世界を見てきたかのようなご説明で説得力がありますので、是非、耳と目の両方で楽しんでいただけたらと思います。
今回のために法然上人に関して復習をしてきたという西村。インタビュアーの質問に答える声には心地良いリズムと抑揚があり、コメントには自身がメイクアップアーティストであることや、アートに造詣が深いことに由来する誠意と説得力が感じられた。
本展東京会場広報サポーター・西村宏堂
法然の足跡を辿っていく
阿弥陀如来が建立した極楽浄土への往生を願う信仰は、日本では「浄土教」「浄土信仰」と呼ばれている。法然は、浄土教が盛んであった比叡山で学び、独自の教義を確立して教団をつくった。これが「浄土宗」である。法然の「南無阿弥陀仏」と唱えれば救われるというシンプルな教えは広い階層の信者を獲得した一方で、立場が違う教団から批判を浴び、仏教界からは念仏を止めるように求められたという。
本展は、そんな法然の姿を今に伝える《法然上人坐像》や《法然上人像》、法然の伝記を描いた絵巻《法然上人絵伝》といった肖像の類や伝記が多数揃っており、確固とした信念を抱いて活動した法然の姿や生涯が明らかになっていく。
重要文化財《法然上人坐像》鎌倉時代・14世紀 奈良・當麻寺奥院蔵【展示期間】4月16日(火)~5月12日(日)
左:《法然上人像》(隆信御影)鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵、 右:《法然上人像》(伝自筆)鎌倉時代・13~14世紀 福岡・善導寺(久留米市)【展示期間】4月16日(火)~5月12日(日)
国宝《法然上人絵伝》鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵(部分)※会期中、展示替えあり
法然の直筆とされる「選択本願念仏集 南無阿弥陀仏 往生之業念仏為先」の文字が見られる《選択本願念仏集(廬山寺本)》も展示されており、黒々とした字形から、教えにかける熱情を感じられる。
重要文化財《選択本願念仏集(廬山寺本)》鎌倉時代・12~13世紀 京都・廬山寺蔵【展示期間】 4月16日(火)~5月12日(日)
法然は、貧富の差が出やすい造寺造仏には積極的ではなかったという。しかし信者や弟子に対しては、阿弥陀の造像なども認めていた。本展では、教えに帰依する人々が、念仏を唱え臨終を迎える時に心の拠りどころとしたであろう絵画や仏像の名品を多数目にすることができる。
《阿弥陀如来および両脇侍立像(善光寺式)》鎌倉時代・13世紀 福島・いわき市蔵 【展示期間】 4月16日(火)~5月12日(日)
浄土宗関連の名品を一挙公開
多くの将軍家や諸大名に支持されてきた浄土宗は、徳川家康が増上寺を江戸の菩提所、知恩院を京都の菩提所と定めて先祖の菩提を弔ったことで興隆を極めることとなる。浄土宗や法然関連の展示において、江戸時代まで紹介するのは珍しいとのことだ。
重要文化財《大蔵経(宋版)》中国 ・北宋~南宋時代・12世紀刊 東京・増上寺蔵 ※会期中、展示替えあり
会場には、増上寺蔵の《五百羅漢図》が全100幅のうち会期を通じて計24幅展示される。色鮮やかな羅漢たちがずらりと居並ぶ様は迫力満点で、ドラマチックな構成や強烈な造形、技巧の高さを感じさせる緻密な筆致に圧倒される。
《五百羅漢図》狩野一信筆 江戸時代・19世紀 東京・増上寺蔵 (注)全100幅のうち24幅を展示 ※会期中、展示替えあり
知恩院からは《宗版一切経》などのほか、《八天像》のうち帝釈天像、持国天像、金剛力士像(阿形)、密迹力士像(吽形)を見ることができる。正面から風を受けて衣が後ろに流れる様を示すという、躍動感溢れる雄姿を堪能しよう。
重要文化財《宋版一切経》(部分)中国 南宋時代・12世紀 京都・知恩院蔵
《八天像》持国天像、帝釈天像、密迹力士像、金剛力士像 康如・又兵衛等作 江戸時代 元和7年(1621)京都・知恩院蔵
修復後初公開の作品も!大スケールの作品が集結
会場内にスケールの大きい作品が多数集結していることも、本展の特徴のひとつ。浄土宗の三大聖典のひとつである『感無量寿経』を綴織で表した《綴織當麻曼陀羅(つづれおりたいままんだら)》は、阿弥陀去来を中心とする浄土世界が展開する圧巻の作品で、見上げていると、そのまま浄土に吸い込まれるような気持ちになる。
国宝《綴織當麻曼陀羅(つづれおりたいままんだら)》中国 唐または奈良時代・8世紀 奈良・當麻寺蔵【展示期間】4月16日(火)~5月6日(月・休)
《阿弥陀二十五菩薩来迎図(あみだにじゅうごぼさつらいごうず)(早来迎 はやらいごう)》は、文化庁・宮内庁・読売新聞社が推進する「紡ぐプロジェクト」の文化財修理事業で対象になった作品で、今回が修復後の初公開となる。背景の色味などが明るくなり、美しさや繊細な表現の魅力が増した来迎図をじっくり味わおう。
右:国宝《阿弥陀二十五菩薩来迎図(早来迎)(あみだにじゅうごぼさつらいごうず はやらいごう)》鎌倉時代・14世紀 京都・知恩院蔵【展示期間】4月16日(火)~5月12日(日)
また、《仏涅槃群像》の一部を紹介したコーナーも目を見張る。大小合わせて82像あるうちの26像が展示されており、横臥する釈迦は体調282cm、取り囲む菩薩らは等身大と大型の作品が多いので、迫力ある像たちに囲まれる体験を味わってほしい。ここは鑑賞者でも撮影が可能とのこと。
《仏涅槃群像》(部分)江戸時代・17世紀 香川・法然寺蔵(注)本展では、涅槃像と群像の一部を展示します。
本展のオリジナルグッズも充実しており、蓮の花クッションや象のぬいぐるみ、中には展覧会タイトル『法然と極楽浄土』にちなんだ風呂桶、湯を注ぐと「極楽」の文字が浮かび上がる感温湯呑なども。使っていると極楽浄土へ行ったような気分を味わえそうだ。
物販コーナー。蓮の花クッションや象のぬいぐるみなど。
物販コーナー。風呂桶など、ユニークな品も勢揃い。
200点程度の展示品が一堂に会する『特別展 法然と極楽浄土』は、平安~鎌倉時代から江戸時代に至る浄土宗関連の美術品を幅広く紹介され、850年という長い歴史と信仰を実感することができる貴重な機会だ。修復後初公開となる作品を鑑賞でき、美が甦った成果を目の当たりにできるのも嬉しい。特別展『法然と極楽浄土』は、東京国立博物館 平成館(東京・上野)にて、6月9日(日)まで開催中。
文・写真=中野昭子
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vistlipが、[ENCORE:BLAZE SHOW DOWN]と題したワンマンライブを5月3日、新宿BLAZEにて行った。これが、2024年7月に閉館となる新宿BLAZEでvistlipが行う最後のワンマンライブである。
バンドにとって“ホーム”と呼べる、親しみ深いライブハウスの存在はとても大きい。もちろんvistlipにもそういった場所があり、すでに閉館してしまったZepp Tokyoも毎年周年ライブを行ってきた“約束の待ち合わせ場所”として重要なライブハウスの一つであったし、ワンマンライブやイベント出演を含めてかなりの本数を行ってきたこの新宿BLAZEも欠かせない場所の一つである。
智(Vo)
「ついにこの会場でライブをするのが最後となってしまいました。今までありがとうございました。みんなもきっと数え切れない位きてくれたと思うんだけど、このvistlipとBLAZEの最後の瞬間をみんなと過ごせることをすごく嬉しく思います。……が! BLAZEなくなったら、vistlipどうすればいいんですかー⁉」――智
現在、楽屋の壁には多くのアーティストがサインと共に“ありがとう”という言葉を残しているのだが、vistlipは感謝を通り越して「どうすればいいんですか!?」と言ってしまう程には、大切な場所だったということが伺える。ただし、音楽とは切っても切れないライブハウスという存在は、何もバンドだけのものではない。同じ空間でその時々の空気感の元、音楽を共有してきたバンドのファンにとっても思い入れの深い場所なのである。そこで今回は、事前に「最後の新宿BLAZE公演で聴きたい曲」のアンケートを募り、それを基にセットリストが組まれていた。リクエストをしっかり反映していたからこそ、智は「すごく変わったセトリでしょ?」とMCで話していたが、そこにはこの会場で“聴きたい(演奏したい)曲”と“やるべき曲”が揃っていたようにも思う。ある意味、vistlipとファンとで用意した、新宿BLAZEへ贈る餞(はなむけ)ともいえるメニューと言っていいだろう。
Rui(Ba)
[ライブはTohya作のSEから幕を開け、勢いを帯びた「My second B-day.」でのっけから一体感を帯びていった。やはりこの日印象的だったのは、アルバム『LAYOUT』(2015年3月)からの楽曲が多くセレクトされていたこと。おそらく、当時アルバムを引っ提げたツアー初日をここ新宿BLAZEで行い、その日(2015年4月24日)からvistlipとの歴史が始まったことが皆の記憶に残っていることも理由として挙げられるだろう。浮遊感から壮大なサビへと展開する「REM SLEEP」。インストゥルメンタル「To be awake is to be alive」から続いた「LAYOUT」では、アンダーグラウンドな空気を纏いつつもエモーショナルな側面も持ち合わせており、ラストで“喜びをあげたい”の後に“あなたに”という言葉を力強く添える場面もあった。後のMC中に「あの時とはバンドの雰囲気も少し違って、今だからこそできる「LAYOUT」だったりするのかな」と智が振り返っていたが、時の流れによって成熟したバンドの演奏や心情を投影したプレイは、懐かしさにも相まって胸を打つものがある。そして終盤には、一際ヘヴィに煽った「Good girl gone bed.」や本編を笑顔溢れる形で締めくくった「Idea」もまた、アルバム『LAYOUT』からのセレクトだった。
Yuh(Gt)
今回のようにファンのリクエストを軸にライブを構成する際には「なかなか自分たちじゃやらない曲に気付かせてくれる」と、メンバー基準でセットリストを組む時にはない発見があることにも触れていた。そして、「LAYOUT」と並んで「すごく“ココ”でやりたい曲だった」と話していたのが、歌詞の中に“新宿”の街並みを表す言葉が登場する「BLACK-TALE」。さらに、「BitterSweet Ending」と「アンサンブル」では、海が奏でるアコースティックギターがロックサウンドの中に人間味のある温かさをプラスするファインプレーを見せた。中でも、「BitterSweet Ending」の“君が目指したエンディング”という部分がやけに耳に残ったのは、新宿BLAZEでのラストライブで聴くこの日ならではのことだったようにも思える。こういった具合に、自分の中に飛び込んでくるフレーズや音に心を動かされる部分が“その時々”の状況や心情によって変わることもvistlipの音楽の魅力の一つとも言え、それによってvistlipを取り囲むものと――ファンやライブ会場とドラマを積み重ねてきた、とても情に厚いバンドであることを再認識できる場面でもあった。
Tohya(Dr)
終盤には、まさに新たな旅立ちにふさわしいと言わんばかりの「Dead Cherry」を始め、vistlipのライブでは定番でありながらも、先に触れたアルバム『LAYOUT』のツアー中にもしっかりと鎮座していた楽曲たちが控えていた。
……が、ラストスパートに差し掛かる前に、バスドラムのヘッドが破れるというハプニングが発生。ちょうどMCで「『LAYOUT』のツアーで、「My Second B-day」でペダルが外れて演奏中止したこともあった。あと、昔SHIBUYA BOXXでやった主催で「Dead Cherry」をミスって裏で大泣きしてた」とTohya自身が話していた矢先の出来事に、「持ってるな~」と思ってしまったのはここだけの話。「そんな若い頃もありましたね」と言ったYuhも「「LAYOUT」のアルペジオは緊張する」と話していたのだが、彼がフライングVを男らしく鳴らすところも魅力的でありつつも、抒情的なフレーズに合わせたギターソロも素晴らしく、例えばこの日演奏した「REM SLEEP」のクリーンな音色に思わず涙腺をやられて視界がにじむほどだったこともお伝えしておきたい。
Umi(Gt)
こうして、ラストスパートは「HEART ch.」の白熱ぶりを受け継ぐように「LION HEART」へ突入すれば、海のラップパートはいつになく言葉を詰め込んでいる様子で、時折会場のあちらこちらを指さしていた様子からも彼なりの形で新宿BLAZEへ刻み込みたい気持ちを表していたようでもあった。そしてしっかりと「Idea」で本編を締めくくった後、止まないアンコールに応えて「彩」を披露。激しい楽曲では一層アグレッシブになる瑠伊が鳴らしたベースが合図となるようにヘッドバンキングが起こる場面や、観客が前へと詰めかける逆ダイブの応酬によって、この会場で最後の最後に見せた情景は実にライブハウス然としたものだった。
「今日も最高に熱いライブでした。今日というこの夜をBLAZEに返せることが本当に幸せです。絶対に、絶対にまたどこかで会おうな! BLAZEのスタッフさんも!」――智
最後の智の言葉に応えるようなタイミングで、会場の客電が一気に明るくなった。7月には、vistlipにとって大切なライブハウスがまた一つ幕を閉じることとなる。しかし、その同じ月の7月7日にvistlipは17周年を迎え、この日のライブで海とYuhのバースデーライブも発表されたように、バンドはこれからも続いていく。最初に“新宿BLAZEへ贈る餞(はなむけ)”と言ったが、もしかすると“これから”があるバンドにエールを送っていたのは会場の方かもしれない。この日の熱いライブの後に残ったのは、そんな温かな気持ちだった。
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2024年5月5日(日祝)、当日“レベル39”を迎える、しょこたんこと中川翔子のバースデーライブ「Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう(年齢非公表)」が、東京・品川インターシティホールにて開催された。昼夜2部制にて、演出やセットリストも全て変えて臨んだ両部の模様をレポートする。
【昼公演】
バンドメンバーに続いて、“ラプンツェル”のようなオーロラピンクの煌びやかな衣装でステージに現れたしょこたん。登場を待ち望んだファンから黄色い声があがると、「souffle secret」「せーので恋しちゃえ」からライブスタート。「甘いスイートソングたちを集めた」という昼公演らしく、会場をスイートな空気で包み込んだ。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
MCパートでは、(年齢非公表)としながらも、しっかりライブタイトルに冠された「さんきゅう(39)」に触れ、「ドラクエだったらパルプンテを覚えちゃうし、ポケモンだったらモロバレルに進化しちゃう」と自身のレベル(年齢)をいじってみせると、その後は「Magical Circle」、「君にメロロン」、そして松本隆作詞、細野晴臣作曲の「劇場版ポケットモンスター ダイヤモンド・パール アルセウス 超克の時空へ」の主題歌「心のアンテナ」を歌唱した。
ポケモンに続くは、ラプンツェルのテーマソング「自由への扉」、そして「輝く未来」。そのオーロラピンクの衣装も相まってしっとりと歌いあげる姿は、まるでディズニープリンセスさながら。と思ったら、歌い終わると客席の女性に「今日何食べてきたの?」と投げかけるなど、ファンとのフレンドリーな一面も覗かせた。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
ライブはそのままカバーコーナーへ。自他ともに認めるフリークである松田聖子の「赤いスイートピー」、そしてドラゴンボールの主題歌「ロマンティックあげるよ」、と自身のルーツを掘り下げる選曲で、盛り上がりは更に加速する。
さらに続いては「ドラゴンクエスト」生みの親である、堀井雄二が手がける名作ゲーム「オホーツクに消ゆ」のリメイク版「北海道連鎖殺人 オホーツクに消ゆ ~追憶の流氷・涙のニポポ人形~」主題歌、同氏による初作詞で、ヒャダイン作曲の新曲「流氷に消ゆキラリ」を初披露。壮大なバラード曲を初披露する緊張の姿に、“オホーツク”をイメージした青いサイリウムで、客席のファンも懸命に応える。なんと、客席で実際に見守っていた堀井氏を見つけると、ステージ上から声をかける一幕も。
そのまま、バンド編成では初披露となる、新進気鋭のクリエイター・Sohbanaが手がけたアニメ「16bitセンセーション ANOTHER LAYER」OP主題歌「65535」へ。そして、2010年に発売されたアルバム「Cosmic Inflation」に収録された「Jewelry heart」を披露すると、久々の歌唱ということもあり、タイトルコールと同時に大歓声が上がった。
さらに続くのは、kz(livetune)が手がけた「Discovery」、そしてDECO*27が手がけた「Satellite Girl」。今を時めくクリエイターたちといち早くコラボレーションしてきた、中川翔子の音楽性の高さも伺わせる。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
ライブ本編もいよいよクライマックスに。デビュー曲「Brilliant Dream」、そしてアニメ「ポケットモンスター XY」のエンディング主題歌「ドリドリ」を熱唱すると、ファンも「翔子!翔子!」とエネルギー全開のエールを送る形で、充実の本編を締め括った。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
アンコールでは、グッズTシャツ姿のしょこたんが再登場。ファンの大歓声があがると、ステージにサプライズケーキが運びこまれる。バンドメンバーである「ギザレンジャー」の演奏にあわせて、OPアクトを務めた“WE3M”や会場のファンからの「ハッピーバースデー」の大合唱で、“レベル39”を盛大にお祝いされた。
最後はライブの鉄板曲「rainbow forecast」を歌唱。その歌声で会場をレインボーに染めあげて、多幸感溢れるステージを後にした。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
【夜公演】
夜公演は、ブルーグリーンの衣装に身を包んで登場。キュートなナンバーが並んだ昼公演から一転、夜は自身の代表的ロックナンバー「9lives」からスタート。休む間もなく「diamond high」で一気にボルテージは最高潮に。
会場に集まったファンへ、改めて“レベルアップ”の報告をしたのち、「ホリゾント」、「GAME」、「続く世界」という3曲立て続けのロックなパフォーマンスで、血が滾るように真っ赤に染まった客席を煽っていく。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
MCパートでは、尊敬してやまないという、ジャッキー・チェンから祝い花が届いたことに喜びを見せると、急遽アカペラで「ポリス・ストーリー」の主題歌「英雄故事」を歌ってみせる。続けて披露するのは、5月31日(金)に全国公開される、ジャッキー・チェンの50周年記念アクション超大作映画「ライド・オン」のサポートソングでもある「Go For It!」。中川翔子が作詞した同楽曲を、今回、初のセルフカバーする形になった。
昼公演の「ロマンティックあげるよ」に続き、夜公演もドラゴンボール主題歌「DAN DAN 心魅かれてく」をカバー。ドラゴンボール作者の鳥山明氏への愛を爆発させたのち、いしわたり淳治作詞の大人の恋を歌った「誰にも言えないキスのあと」、アニメ「鋼の錬金術師 FULLMETAL ALCHIMIST」エンディング主題歌「RAY OF LIGHT」と、人気曲で会場を沸かす。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
唯一、昼公演と同じセットリストとなった新曲バラード「流氷に消ゆキラリ」で、相変わらず抜群の歌唱力を見せつけたのち、こちらもバンド編成では初披露となる、水曜日のカンパネラ・ケンモチヒデフミが手がけた自叙伝ソング「中川翔子」へ。“水カン”節のおしゃれなサウンドに、耳に馴染むキャッチ―なメロディ、そこに “しょこたん”というエッセンスが加わって完成された一曲に、新たな音楽性を感じずにはいられない。
夜公演もいよいよラストスパート。「calling location」、「Dream Driver」と歌ったのち、「まだまだいけるか!」と客席を煽ると、そのまま自身の代表曲「空色デイズ」に突入。いつも以上に超ハードでロックな「空色デイズ」を見せつけると、“キュート”と“ロック”が入り乱れた「Spiral」で夜公演を締め括った。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
夜公演も再びアンコールに登場し、盛大に“レベルアップ”の喜びをファンと分かち合うと、「これからの未来も何があっても絶対大丈夫。みんなとまたいっしょに生きていきたい。つよがっていきましょう!」と決意を述べ、本当のラストナンバー「つよがり」を歌い上げた。
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
いつまでも「ありがとう」とファンへの感謝を叫びながら、昼夜あわせて全33曲、白熱のバースデーライブのステージを後にした。
撮影=Ayumi Nagami
Shoko Nakagawa Birthday LIVE 2024 さんきゅう (年齢非公表)
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東京スカパラダイスオーケストラのデビュー35周年のKICK OFF楽曲「風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA (10-FEET)」が、本日5月6日(月)に配信開始になった。
配信開始前からラジオでのオンエアで楽曲を聴いたファンからは「TAKUMAの声、10-FEETとしても、東京スカパラダイスオーケストラのタッグとしても何回も聞いてるはずやのに、いつもの歌声と全然違う!」「今までのコラボと180度違う…!新鮮だけど、懐かしさもある、魂震わせるアツさもある。」といった感想が寄せられており、まだ楽曲を聴いていないファンからも、今までの両者のコラボ楽曲とは違った楽曲として期待値が高かった。
ティザー映像Vol.2も本日公開されており、ティザー映像Vol.1よりはもう少しMVの内容を想像することができる。5月10日(金)20時にはミュージックビデオがプレミア公開予定で、スカパラメンバーもコメントで参加するとのことなので、それまでは配信を聴いて楽しみに待とう。
谷中 敦(東京スカパラダイスオーケストラ)コメント
「風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA(10-FEET)」のリリースによせて
青春の後に来る季節はどんなでしょう。
自分は若い頃から情緒を吹き飛ばす夏はあまり得意ではなかったので、
大人びた顔で、人のいなくなった秋の海を散歩するのが格好いいと思っていました。
人生を通じて、数々の友情を沢山の人々と交わして来ました。
力いっぱい付き合ってきたつもりですし、
行き過ぎはあったにせよ、自分が注げる限りの愛情を注いできたつもりでいます。
でも、中には守れなかった、実現出来なかった約束がいくつかあって、
それは何十年もの間、思い出してしまうのです。忘れないのです。
期待に応えてあげられなかったことや、
守らなくても裏切りにはならないぎりぎりの約束、
そんなことが逆にその相手との絆を強くしてしまうのです。
後悔はしたくないですが、そんな心残りと共に、青春が過ぎ去った秋に皆に背を向けつつ、
ひとり海を見つめる時間も大切かなと自分は思います。
今回、今まで様々なシーンで思い出を共有してきた大好きなTAKUMAと、
思いを重ね合わせて一つの作品を作り上げられたこと、とても嬉しく思っています。
響かせ合うこと=生きること、です。素晴らしい歌唱に感謝しかありません。
ありがとうTAKUMA!
風に戦ぐブルーズ feat.TAKUMA (10-FEET) [Teaser vol.2] / TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA
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『KOBE SONO SONO’24』2024.4.6(SAT)兵庫・道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク 大沢
4月6日(土)、道の駅 神戸フルーツ・フラワーパーク大沢にて『KOBE SONO SONO ’24』が行われた。「おいしい・楽しいがあふれた空間で、心地よい音楽とともに」をテーマに、昨年新たにスタートした神戸の春フェス『KOBE SONO SONO』。花と自然に囲まれて音楽やカルチャーが楽しめるとあって、早くもファンが続出しているイベントである。今年も会場にはFLOWER STAGE、FRUITS STAGE、MONKEY STAGEの3ステージが設置され、全16組のアーティストが素晴らしいライブを繰り広げた。さらに飲食やカルチャー雑貨など、地元神戸のお店が多数出店。今年もSPICEではその模様をレポートする。なおSpotifyでは、当日のセットリストがプレイリストとして公開されているので、そちらもチェックしてみてほしい。
道の駅 フルーツ・フラワーパーク大沢は、北神戸の自然豊かな山々に囲まれている。敷地内には遊園地やファームマーケット、ホテルなどがあり、ガーデンリゾートとして1日中楽しむことができる場所。
KOBE SONO SONO
ぽかぽか春の陽気で晴天に恵まれたこの日、開場と同時に入園した人々は、のんびりと景色を楽しみながら、ピクニックシートを広げて開演までの時間を思い思いに過ごしていた。
KOBE SONO SONO
『KOBE SONO SONO』は出店ブースもお楽しみのひとつ。地元神戸や兵庫県内で人気の店舗を中心に、35もの飲食店とショップが出店、さらに似顔絵屋さんやクラフト体験、シルクスクリーンのワークショップも実施された。アーティスト物販テント横のBshopのブースでは、『KOBE SONO SONO』とのコラボTシャツやトートバッグ、タオルが販売されていた。さらに今年はFLOWER STAGEとFRUITS STAGEの間の広場に「うしさん」の形のボルダリングスペースも出現。子どもたちは大喜びでよじ登っていた。
KOBE SONO SONO
会場内では、bird(irish session)による軽快なアイリッシュ音楽が3ステージにわたり神出鬼没で行われ、日本伝統芸能猿まわし 二助企画による「猿まわし」も人々を賑わせていた。
ステージ装飾は、今年もFLOWER STAGEを「建築集団・々(ノマ)」が、FRUITS STAGEを「電子工作グループ・ヅカデン(宝塚電子倶楽部)」が手がけた。FLOWER STAGEに敷き詰められたひし形のタイルは約500枚。落ち着いた色味で、あたたかみのある舞台が出来上がっていた。FRUITS STAGEは植物とミラーボールで囲まれたオーガニックな雰囲気で、アーティストのライブを彩っていた。
ここからは各ライブステージの模様をレポートしよう。
グソクムズ 撮影=オイケカオリ
『KOBE SONO SONO ’24』のトップバッターを飾ったのは、FRUITS STAGEに登場したグソクムズ。たなかえいぞを(Vo.Gt)、加藤祐樹(Gt)、堀部祐介(Ba)、中島雄士(Dr)からなる、東京・吉祥寺を中心に活動する4人組バンドだ。「街に溶けて」からゆったりとスタートしたライブは、あまりの気持ち良さに心がふるえるような素晴らしさがあり、野外ステージの醍醐味を存分に味わえるものだった。たなかの甘く包容力のある歌声が美しいアンサンブルに乗ってどこまでも広がり、最高に気持ちの良い音楽を届けてくれた。子ども連れの家族も楽しそうに、あちこちで笑顔が咲き乱れていた。
Laura day romance 撮影=渡邉一生
続いてはFLOWER STAGEが幕を開ける。司会進行役のFM802 DJの土井コマキが開会宣言し、4月度FM802邦楽ヘビーローテーションアーティストのLaura day romanceにバトンをつなぐ。サポートに内山祥太(Ba)、小林広樹(Gt)、西本心(Key)を迎えた編成で響かせるサウンドは唯一無二。井上花月(Vo)のスモーキーで美しい歌声と、鈴木迅(Gt)の情景を思い起こさせるギターリフ、礒本雄太(Dr)の安定したビート。「brighter brighter」や「sweet vertigo」など、一筋縄ではいかないLaurasの一面もしっかりと提示しつつ、ラストは「Young life」「sad number」と明るいナンバーで爽やかに締め括った。
maya ongaku 撮影=オイケカオリ
初登場のmaya ongakuは様々な楽器を用い、独自の空間芸術でその場にいた者を魅了した。園田努(Vo.Gt)、高野諒大(Ba)、 池田抄英(Key.Sax.Flut)の3人が向き合う演奏スタイルも特徴的。「Nuska」で民族的な雰囲気を醸し出すと、まだ未発表の新曲ではエキゾチックでサイケなサウンドやギターフレーズの反復で没入させ、フィールド音楽が随所に散りばめられた「Melting」を経て、浮遊感たっぷりの「Pillow Song」まで全4曲を披露した。即興音楽やセッションの要素も含んだ演奏で、一度見ると忘れられない世界へと誘ってくれた。
Homecomings 撮影=渡邉一生
FLOWER STAGEの2番手はHomecomings。今年2月に畳野彩加(Vo.Gt.)、福田穂那美(Ba.Cho.)、福富優樹(Gt.)の3人体制となったホムカミのサポートドラムを、先ほどライブを終えたばかりのLaura day romanceの礒本がつとめる。畳野の透明感のある歌声がバンドアンサンブルに気持ち良く溶けてゆく。「US / アス」「ラプス」とエヴァーグリーンなサウンドを響かせた後は「Moon Shaped」や「Blue Hour」でエモーショナルな一面も見せる。礒本サポートのホムカミは少し力強さがあり、これからの道すじを示すような、信頼で結ばれた関係性も表れたプレイだったように思う。いつまでも聴いていたくなるみずみずしいステージだった。
ベルマインツ 撮影=羽場功太郎
MONKEY STAGEでは、地元神戸出身のバンド・ベルマインツがアコースティック編成で登場。盆丸一生(Vo.Gt)、小柳大介(Vo.Gt)のツインボーカルと前田祥吾(Ba)のコーラスが耳を潤す。新曲「だって」を含む8曲を披露して、最高に心地良い空間を作り出した。3人の見せる情景美とグッドメロディは、目が覚めるような新鮮さが感じられた。
幽体コミュニケーションズ 撮影=羽場功太郎
その後、同ステージに登場した幽体コミュニケーションズもまた、中毒性のある音楽体験をさせてくれた。paya(Vo.Gt)、いしし(Vo)が対面に座り、その間に吉居大輝(Gt)がスタンバイ。男女混成の美しすぎるハーモニーは心を浄化し、色々な音が混ざり合う演奏や、payaの身体的なパフォーマンスは好奇心を刺激する。独自の世界観だが楽曲はポップで、新曲を含む全7曲でどっぷりと没入させた3人だった。
奇妙礼太郎 撮影=オイケカオリ
FRUITS STAGEに現れた奇妙礼太郎は、音楽のコミュニケーションの楽しさを再認識させてくれた。くしゃっとした笑顔でラフにMCをするが、ひとたび歌い出せばたちまち人々を虜にしてしまう。<お昼休みはウキウキWatching>と誰でも歌えるポップソングを筆頭に、「ギンビス」「おでん」などの楽曲でも「え? 一緒に歌ってくれんの? やったあ」とお茶目にオーディエンスを巻き込む様子もさすがだし、巻き込まれるのもとても楽しい。あっという間にコール&レスポンスが起こり、その場の全員を奇妙ワールドに連れていった。最後は「オー・シャンゼリゼ」で、大盛り上がりのステージを終えたのだった。
藤原さくら 撮影=渡邉一生
FLOWER STAGEでは、昨年の『KOBE SONO SONO ’23』と今年1月に月世界で行われたプレイベントにも登場した藤原さくらが、春らしいブルーストライプのシャツにジーンズ姿で登場した。サポートは関口シンゴ(Gt)、中西道彦(Ba)、別所和洋(Key)という豪華な布陣。ドラムレスで奏でられる楽曲たちは優しくあたたかく、藤原のスモーキーな歌声が気持ち良く空間一体に溶けていく。MCでは昨年の『SONO SONO』の気温の低さに触れ「今日は完璧な気候ですね」と笑顔を見せる。新旧織り交ぜたセットリストで、ラストはニーナ・シモンの「I Wish I Knew How It Would Feel to Be Free」をカバー。お昼帯にぴったりの、ハートフルでカッコ良いステージだった。
名誉伝説 撮影=オイケカオリ
FRUITS STAGEの4番手は、2023年に結成、5ピースバンドの名誉伝説はなんとライブ自体が2回目で、関西でのライブはこの日が初。こたに(Vo.)、けっさく(Gt)、ひだまりユトリ(Ba)、大波メロディ(Dr)、うたかず(Key)が横一列に並び、1音目からみずみずしいサウンドと透明感のある歌声を解き放つ。ポップでかわいらしい「ラヴィング」、パワフルで疾走感たっぷりの「feat.あなた」、遊び心あふれる「ポルトロン」、ロックな「地獄でスキップ」など、ライブが進むにつれて勢いを増し、様々な表情を見せてくれた。これからの彼らが非常に楽しみな35分だった。
トータス松本 撮影=渡邉一生
FLOWER STAGEのトータス松本はグリーンのスーツとブラウンのハット姿で「こんにちは〜」と笑顔で登場。「ワンダフル・ワールド」に続けてEテレ『みいつけた!』に書き下ろした最新曲「ただいま!」で<ただいま神戸!>と歌うと、オーディエンスは大興奮。歌われる楽曲たちはどれも懸命に日々を生きる人々を受け止め、ポジティブに寄り添ってくれる。懐の大きな歌詞と歌声が真っ直ぐに心に突き刺さった。兵庫県西脇市出身のトータスは、北神戸の風景に哀愁と郷愁を感じたのか「こそばゆい」と口にして、最後は「バンザイ~好きでよかった~」で<今日はこうやって生まれた故郷の近くで歌えた喜び>と上を向いてパワフルに歌い上げ、元気をくれる素晴らしい時間となった。
浦上想起・バンド・ソサエティ 撮影=オイケカオリ
昨年に続いてFRUITS STAGEに登場した浦上想起・バンド・ソサエティ。浦上想起(Vo.Key)を中心に、しょけん(Gt)、シンリズム(Ba)、平陸(Dr)を迎えた編成での「バンド・ミニマル・ソサエティ」バージョンで出演。浦上は「呼んでいただいて大変光栄です」と喜びを口にして「星を見る人」からライブスタート。伸びやかな歌声とダイナミクスなサウンドから訪れる緩急の反復に、ただ身体を揺らされる。ボーカルの比率よりも演奏パートが多めの楽曲たちは、リズムの変容やフレーズの妙を本能的に楽しむことができて面白い。最後は「新映画天国」を壮大かつポップに響かせて多幸感を残したのだった。
Summer Eye 撮影=羽場功太郎
MONKEY STAGEのSummer Eyeは、会場全体をくまなくステージに変え、自由度の高いライブで見る者を魅了した。ステージ上にパラソルと机、ラップトップを置き、自分でトラックを流しながら、「PHOTO」の腕章をつけてオーディエンスの間をハンドマイクで練り歩きながら歌う(20mのケーブルを用意してもらったそう)。マイクレスのアカペラで「人生」を披露した時は、全員で歌に集中する時間が特別で、ドキドキするほど素敵だった。本人も「めっちゃ良い時間過ごしてるねー! 来て良かったですありがとう!」と満足げ。彼の繊細さとラフさ、色気と魅力が存分に詰まった濃厚なライブだった。
KENT VALLEY 撮影=羽場功太郎
MONKEY STAGEのトリをつとめたのはKENT VALLEY。幽体コミュニケーションズの吉居がサポートギターに入り、打ち込みのビートを流しながら2人でエレクトリックサウンドを響かせていく。KENT VALLEYは「神戸でライブやるのは初めてかもしれない。こんな良いイベントに呼んでもらって嬉しいです」と挨拶し、オートチューンも使ったボーカルとコラージュ的な要素もあるサウンドでじわじわと熱を上げ、ダンスナンバー「HALL-ROLL」でぐんと盛り上げて「Blueworks」まで、たっぷり9曲を歌い切った。
Bialystocks 撮影=渡邉一生
昨年、FRUITS STAGEのトリですさまじい存在感を放ったBialystocksが、今年はサンセットタイムのFLOWER STAGEで極上時間を彩った。サポートに西田修大(Gt)、越智俊介(Ba)、小山田和正(Dr)を迎え、「幸せのまわり道」をゆったりと奏で始める。甫木元空(Vo)のボーカルは見る度に凄みを増し、うっとりするほどのフェイクに絡みつく菊池剛(Key)のピアノも美しく、会場全体を掌握する。歌詞の世界観と野外のロケーションのマッチングが素晴らしく、思わず空を見上げてしまう。「頬杖」「Upon You」といった代表曲から、ハイトーンボーカルとリズム隊がエッジーな「灯台」、最後に奏でられた「Nevermore」まで全8曲。Bialystocksのクリエイティブさを感じた至福の時間だった。
角舘健悟(Yogee New Waves) 撮影=オイケカオリ
FRUITS STAGEのトリは、今年1月に神戸月世界で行われたプレイベントにも登場した角舘健悟(Yogee New Waves)。リハからそのまま板付で本編に入ると、「SISSOU」「to the moon」と張りのある歌声をアコギ1本で楽しそうに響かせる。上白石萌音に提供した「ひかりのあと」、大名曲「CLIMAX NIGHT」を披露する頃には、ブルーだった空の色が濃紺へと変わっていった。MCでは今は曲作り期間だと近況を報告した。クラップに乗せて新曲をグルーヴィにプレイすると、まさに音楽が空気を動かし、風が通り抜けてゆくように会場全体が歓びに満ち溢れた。最後は春にぴったりの「Bluemin' Days」で軽やかにフィニッシュ。角舘の満面の笑顔と鳴り止まない拍手が、この時間が豊かなものであったことを示していた。
KIRINJI 撮影=渡邉一生
そしていよいよ大トリのKIRINJI。一昨年秋に大阪城音楽堂で行われたプレイベント以来の出演となる。すっかり暗くなったフルーツ・フラワーパークに浮かび上がるFLOWER STAGEに堀込高樹(Vo.Gt)千ヶ崎学(Ba.Cho)、小田朋美(Vo.Syn)、宮川純(Key)、シンリズム(Gt.Cho)、伊吹文裕(Dr)登場した。ファンクな「非ゼロ和ゲーム」、アーバンで疾走感のある「nestling」、堀込節が炸裂した「指先ひとつで」、インスト曲の「ブロッコロロマネスコ」と続けて演奏し、圧巻の実力とバンドグルーヴでオーディエンスを圧倒する。軽く自己紹介とMCを挟み後半戦。小田がメインボーカルをとり堀込がラップを歌う「killer tune kills me」、最高にクールなダンスナンバー「Runner's High」で猫も杓子も踊らせて、ラストは「時間がない」で盛大に締め括る。すぐさまアンコールを求めるクラップが起こると、メンバーがカムバック。堀込は「アンコールするつもりじゃなかったので、ちゃんと練習してない曲やります」と言いつつも、聴こえてきた「The Great Journey」にオーディエンスは大歓喜。最高にヘヴィなグルーヴと音圧、バンドセッションで最高潮の盛り上がりを見せ、華やかにステージを終えた。
こうして2回目となる『KOBE SONO SONO ’24』も大団円で幕を閉じた。来年の春はどんな景色に出会えるのだろうか、今から楽しみにしていよう。
取材・文=久保田瑛理 写真=KOBE SONO SONOオフィシャル 提供(撮影:渡邉一生、オイケカオリ、羽場功太郎)
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