NODA・MAP最新作『兎、波を走る』(作・演出:野田秀樹)が開幕~ベールに覆われていたものが見えるとき…【ゲネプロレポート】

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 NODA・MAP第26回公演『兎、波を走る』(作・演出:野田秀樹)が、2023年6月17日(土)、東京芸術劇場 プレイハウスで開幕した(東京公演は7月30日(日)迄。その後、大阪公演、博多公演あり)。出演は、高橋一生 松たか子 多部未華子 秋山菜津子 大倉孝二 大鶴佐助 山崎一 野田秀樹 ほか。ここでは、初日の前日に報道向けに公開されたゲネプロ(総通し稽古)の様子をお届けする。

 冒頭、脱兎役の高橋一生による詩のようなセリフで心を掴まれ、『兎、波を走る』の世界に我々観客は一気に巻き込まれる。この芝居のモチーフである『不思議の国のアリス』のアリスが、兎を追いかけて不思議の国に迷い込んでしまうように。

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

 『兎、波を走る』は、脱兎を追って不思議の国に行ってしまったアリス(多部未華子)と、娘を探し続けるアリスの母(松たか子)の物語という主線と、潰れかかった遊園地の物語が、2本の平行世界のようにして猛スピードでひた走っていく。

 潰れかけた遊園地は不動産業者のシャイロック・ホームズ(大鶴佐助)によって競売にかけられているところ。元女優ヤネフスマヤ(秋山菜津子)はこの場所で幼い頃、ママと見た「アリスの物語」を再現したくて、第一の作家?(大倉孝二)に脚本を書かせている。だがそれは、幼い頃に楽しんだ物語とは違っていて、気に入らないヤネフスマヤは第二の作家?(野田秀樹)にも依頼する。

 おなじみの『不思議の国のアリス』では、アリスが大冒険のすえ現実の世界に戻っていくが、第一、第二の競作するアリスの物語は、混乱の様相を呈していく。さらに、第三の作家?(山崎一)が現れて、世界はさらにまたひとつ、開かれていく。オリジナル作品が時を経て換骨奪胎、あるいは二次創作されていくうちにずいぶん様変わりして、それが無数のマルチバースとして存在していく。だが、ガワは変わっても芯の部分はひとつーー。混乱の闇の果て、アンダーグラウンドに奥底に潜む芯なる部分にかすかな光が当たる。素早く変わっていくいくつもの世界の行き来を追いかけているうちに、ベールに覆われていたものが見えはじめて来たときの、衝撃たるや。

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

 言葉にできない、などと書くのは、文筆を生業としている者として最もやってはいけないことだが、そう書くしかない。

 野田秀樹の冴え抜いた筆によるアリスの物語と、遊園地の物語と、第三の新たな物語、めまぐるしく入れ替わる世界を俳優たちがキレのいい身体表現で、全力で駆け抜けていく。

 脱兎役の高橋一生はNODA・MAPに初出演した『フェイクスピア』(21年)で第29回読売演劇大賞最優秀男優賞を受賞した。二度目の出演でも、抜群にキレのいい身体性を持ちながら、その反面の影のある表現が今回も脱兎を奥深いものにしている。

 アリス役は多部未華子。NODA・MAP初参加の多部は、伸びの良い高い声が野田秀樹の世界にハマっている。アリスの衣裳(衣裳:ひびのこづえ)を着こなし、純粋無垢な少女そのものだ。

 消えた娘を探し続けるアリスの母役は松たか子。前作『Q』(19、22年)からNODA・MAP連続出演で、彼女がいると安心する。例えば、NODA・MAPがオーケストラとしたら、その基本の音は、彼女の声でチューニングされているのではないか(いわゆる「ラ」の音より松の声はもうちょっと高い気がするが)。

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

 NODA・MAPに過去何作も出演している大倉孝二と秋山菜津子は、軽妙なテンポで遊園地パートを盛り上げる。高橋、松、多部の醸すテイストとかなり違って、別の世界であることがわかりやすい。

 アリスを捜索する東急半ズボン刑事、はたまた、ある場所である教えを行っている東急半ズボン教官と第三の作家?を演じる山崎一は、『半神』(99年)から24年ぶりのNODA・MAP参加。飄々としながら、この男、何者なのか? 感を漂わせる。

 シャイロック・ホームズを演じるのはNODA・MAP初参加の大鶴佐助。アングラの雄・唐十郎を父に持ち、詩的なセリフに合う声質を受け継ぎながら、『兎〜』ではドライな現代人的役回り。でもそれだけではないものが滲む。

 そして、野田秀樹。『フェイクスピア』でシェイクスピアの孫を演じた野田がふたたび、ある大作家をモチーフにした役を演じる。第一の作家と第二の作家の作家対決(?)は見どころのひとつだろう。

 遊園地の現実と、劇中劇らしいアリスの世界と、新たに生まれくる物語、現実と妄想、過去と現実と未来、すべてが混ざり合い混沌とするかと思えば、すべてが整然と繋がって見えたり。このあらゆる事象の交錯に寄与するのは、美術(堀尾幸男)、照明(服部基)、プリズムミラーや、アンサンブルの活躍と、人形劇師・沢則行による人形の数々や映像(上田大樹)である。俳優たちの演技とこれらが融合して、圧倒的な総合力として、不思議の世界が立ち上る。同じ像の連なる無間地獄のようなビジョンや無数の人形たちの集まった場面は、美しくもちょっとこわくて、子供が見たら、一生忘れないのではないだろうか。いや、大人だって一生忘れられそうにない。

 言葉でうまく言えなくても、心に、脳に、刻み込まれる何かが強烈にある『兎、波を走る』を観たあとは、いつもはスルーしていた街の片隅の風景に、ふと目を止めてしまう。アリスを探して。

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

NODA・MAP 第 26 回公演『兎、波を走る』(撮影:篠山紀信)

取材・文=木俣冬

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『医療法人篤志会 さこだ歯科 presents 体験型アトラクション恐竜島の大冒険【PARK版】 in ライカ南国ホール』が、7月27日(木)から8月22日(火)まで、鹿児島・ライカ南国ホールで開催されることがわかった。

『恐竜島の大冒険』は、夏休み期間にあわせて「恐竜」をテーマに開催されている、体験型アトラクション。昨年2022年は、長崎県の出島メッセ長崎で行われた。鹿児島初開催となる今回は、オリジナルのアスレチックや恐竜ライド、恐竜スライダー、ディノパークといったプレイエリアを設置。そのほか、恐竜と撮影できるフォトスポットや、ドイツの老舗恐竜メーカー「シュライヒ」などの物販恐竜グッズの販売も行われる予定だ。

さらに、ジオラマづくり、スノードームづくりといったワークショップも開催されるとのこと。チケットは、本日6月17日(土)からイープラスほかにて発売中。イベント詳細は、『恐竜島の大冒険』イベント公式ホームページを確認しよう。

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週刊少年ジャンプ(集英社)にて連載中の人気作品『ブラッククローバー』(著:田畠裕基)初の映画で、現在日本全国ロードショー&Netflix世界独占配信中の『ブラッククローバー 魔法帝の剣』の挿入歌に、感覚ピエロの新曲「Break Together」が起用されていることが明らかになった。

今作品では、「Break Together」だけでなく、第1クールOP「ハルカミライ」も劇中歌に使用されている。
 
なお、感覚ピエロは7月で結成10周年となり、約1年ぶりとなるワンマン公演を7月14日 (金) 東京 渋谷 Spotify O-WESTも決定している。

 

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Eveとしては自身最大規模のキャパシティとなるさいたまスーパーアリーナ2DAYS公演『Eve Live 2023「花嵐」』が、2023年11月25日(土)・26日(日)に開催されることが発表された。

これは、Eve オフィシャルYouTubeチャンネルにて本日・6月17日(土)に開催された『Eve KAIZIN from 日本武道館 YouTube Live Streaming』ライブ配信終了後に突如告知映像が流れサプライズで解禁された。8月には、大阪城ホールと神奈川・ぴあアリーナMMにて両公演2DAYSで開催されるアリーナツアー『Eve Arena Tour 2023 ⻁狼来』の開催も控えておりSOLDOUTが発表されている。

なお本日20:30から『Eve Live 2023「花嵐」』の最速先行受付も開始している。

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バケツ、デッキブラシ、ゴミ箱のふたなど、あらゆるものを楽器にしてしまうパフォーマンスショー『STOMP ストンプ』が、2023年8月16日(水)~ 8月27日(日)東急シアターオーブで開催される。13年ぶりとなる来日公演には、史上2人目となる日本人ストンパーの櫻井多美衣(さくらいたみい)も出演。スペイン公演真っただ中の櫻井に、世界53カ国以上で上演されているショーの魅力と、自身初となる凱旋公演に向けた意気込みを聞いた。

――世界53カ国以上で1500万人を動員している『STOMP』が13年ぶりに日本で上演されます。ここに注目して見たら面白いよというポイントがあれば教えてください。

13年ぶりの日本公演では、メンバーも新しくなり、また『ポルターガイスト』『スーツケース』など新しいナンバーも加わっています。チームワークを大切にしているので、キャスト同士がアイコンタクトをしていたり細かいところまで見てほしいです。

――お互いを信じて、呼吸を合わせることが大切なんですね。

そうですね。お互いの音をよく聴くことを大切にしています。例えば、誰かがギャグをやる場面があったら、そこにフォーカスが向けられるようにするとか。姿が見えなくても、個々が発する音の大小で動きを推測できたりするので、みんなそれぞれの音にとても敏感です。

――櫻井さんは2016年8月にオーディションで選ばれ日本人として2人目のストンパーになりました。現在はヨーロッパツアーの一員として活躍されていますが、参加して気が付いた、『STOMP』の魅力についてお話しいただけますか。

ステージからお客さんひとりひとりの顔がしっかり見えるんです。反応がよく見えるので、メインキャラクターは、その反応を見て内容を変えることもあります。「今日は、子どもが多いからギャグは止めよう」とか。ピースとピースをつなぐものを臨機応変に変えられるのもSTOMPの魅力だと思います。

――東京公演ならではの仕掛けもありそうでしょうか。

あると思います。ヨーロッパを周っていてもスペインやドイツなど国によって反応が違うと感じるので、日本では日本のお客さんに1番喜んでもらえるようなことを考えたいですね。

――各地でのお客さんのリアクションに違いはありますか。

国ごとに違いますね。ドイツでは、アンコールのときに拍手や声の代わりに足を踏み鳴らすんです。本編が終わって楽屋に戻ったとき、客席から地響きのような音が聞こえたのが面白かったです。

――ステージでは、マッチの小箱やアメリカンサイズの買い物カートなど、あらゆるものを楽器に変えてしまいます。日常生活で「これ、鳴らしてみたいな」という職業病のような思いが生まれることはありますか。

ホームセンターに行くと、みんな叩いていますね(笑)。「これ、いい音するよ」と言い合っています。基本的に、ステージで使用するものは全て用意をしてくれているのですが、入ったばかりの頃、渡されたビニール袋の音が気に入らなくて、良い音がする袋を探したことがありました。それから、ツアーであちこち旅をする中で、初めて見る形のペットボトルとかは「叩いてみたい」と思います。ソーダが入っているもの、ミネラルウォーターのボトルなど、同じペットボトルでも音が違うんですよ。

――『STOMP』を見たお客さんは「叩きたい」という気持ちになると思うので、身近にあるものから音の違いを発見するのも面白いですね。

そうですね。例えば(小道具の)新聞は毎回現地のものを用意していただくのですが、紙の厚さによって音が違います。日本の新聞は分厚いので硬くて重い音がするんですよ。みんな真面目に読んでいるように見えますが、現地の言語で書かれているので、私の場合、スペイン語やドイツ語の新聞を渡されたときは全然読めませんでした(笑)。

――100分のショーにはセリフがありません。リズムと動きのみで表現する『STOMP』を楽しむ秘けつについて教えていただけますか。

解釈の自由さを楽しんで欲しいです。セリフがない分、私たちはリアクションで表現するのですが、受け取る側がそれをどうとらえるかは自由です。言葉があると、言葉の意味などに集中してしまいがちですが、『STOMP』にはそれがありません。実はキャストの中には英語ができない人もいて、私たち自身がコミュニケーションを言語に頼ってはいないんですよ。それでも問題なく舞台は進みます。だから音や表情、目線などを見て、そこにお客さん自身が感じたことをプラスして受け取ってほしいです。

――櫻井さんがお気に入りの場面などはありますか。

フィナーレです。「ビンズ」という曲では、8人が一斉に叩くのですが、それまでセットの一部のように見えていたものなど、さまざまなものを叩いて命を吹き込んでいくんです。その様子を楽しんでほしいですね。私自身の見どころは……大きなオレンジ色のバケツを叩いている役のときに注目してほしいです。キャスト一人ひとりがそれぞれいろいろな背景を持っていて、ショーの中にはその人が中心となって光り輝く場面があるんです。私も力強くぶれずに芯となる音を鳴らす時間があるので、ぜひ見ていただきたいです。

――『STOMP』の公式YouTubeチャンネル(https://www.youtube.com/@StompJapan)では、櫻井さんのコメント動画も見ることができますね。メンバーと並ぶとでこぼこで、その身長差に驚きました。ご苦労などはありますか。

私は身長150センチなので、一番大きいメンバーとは60センチ以上の差があります。音量については調整をして叩いているので問題ないのですが、殺陣のようにお互いのプロップを叩く場面では、身長差がある同士がペアになると「手が届かない」ということがあるので、リハーサルで確認をするようにしています。

――櫻井さんご自身、身長をいかした「技」などはありますか。

誰よりも低くなることが出来ると自負しています。誰かがジャンプをしたり、上の方に目線が行くことをしているときは、私は下の方で何かをするようにしています。観ていた友だちから「イリュージョンだね」と驚かれました。

――100分間のショーを完走するために、日ごろどのようなトレーニングをされているのでしょうか。

元々タップダンスをしていたので、脚力と持久力は問題ありませんでした。(『STOMP』に入って)鍛えなくてはと思ったのは上半身です。毎日、100回の腕立て伏せは欠かせません。最初は1日50回とか、25回を4セットとかから少しずつ始めて、今では大きな音を出すことも苦ではなくなりました。毎日ジムに行く人もいるけど、私はスクワットなど自重トレーニングをすることが多いです。スタッフの中には、ウォームアップをリードしてくれる人もいるので、助かっています。

――日本公演は8月。連日の公演でお忙しいと思いますが、オフのときにしたいことなどはありますか。

帰国するのは昨年の夏以来。お仕事で帰るのは初めてです。みんな日本の食事をすごく楽しみにしているので、時間が合えば一緒に食事に行きたいです。私の父が料理人なので、おススメしてくれたお店に行きたいと思っています。あとは、夏ですから、夏祭りとか花火とか、見に行けたらいいですね。

――櫻井さんにとっては初めての凱旋公演ですね。改めて意気込みと見どころをお願いします。

家族や日本で暮らしているお友だちにも来てもらえるので、ひとつひとつの公演を楽しみたいと思っています。お客さんからのエナジーもたくさんもらえると思うので、それを力にしたいです。公演では、コール&レスポンスをする場面もあるので、お客さんも常に手を叩ける準備をして、一緒に体を使って『STOMP』を体感してほしい。せっかくのライブですから、座って見るだけではなく、一緒に楽しめたら嬉しいです。

STOMPストンプ2023年8月公演30秒映像

取材・文=翡翠

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金属恵比須・高木大地の<青少年のためのプログレ入門> 
第38回/最終回 「停滞こそ我が墓碑銘」

 

2017年7月より続いた当連載もとうとう終わりを告げる時が来た。SPICE連載の“墓碑銘”に何を残せばいいだろう。

プログレッシヴ・ロックは1960年代後半に生まれ、1970年代に全盛期を迎えたジャンルである。その後80年代、90年代など何度かリバイバルブームがやってきたものの、「曲が長い」「難解」「複雑」という曲の特性上、“辺境の音楽”というイメージの特徴を持つ。

プログレをこよなく愛するSPICE編集の安藤氏が、このままだとプログレが滅んでしまうと危機感を覚え、30年以上プログレを愛好し演奏をしている筆者にお声がけいただき始まったのが当連載である。

筆者は1991年、小学5年の時に金属恵比須の前身バンドを結成して今まで続けている。小学校から最近まで「最年少のプログレ・バンド」と呼ばれてきた。中学の時には「ピンク・フロイドみたいなことをやってる中学生がいる」と面白がられ、NHKに出演もした(教育番組だったが)。安藤氏から初めて原稿を依頼されたのは2015年、35歳で『ハリガネムシ』リリース直後。この時も「最年少」と呼ばれていた。

それから8年。インディーズ・プログレ界は戦国時代の様相を呈し百家争鳴。金属恵比須の「万年最年少」も卒業である。メジャー・シーンに転身したバスクのスポーツ、ディスクユニオンで記録的な売上を樹立する曇ヶ原、イタリア進出のEvraak、日本語のセンスが映える百様箱など――あなたたちがここにいてほしい。胸を撫で下ろす。

ということで本連載「プログレ入門」の意義は果たしたと思うし、今後は皆様に盛り上げていただきたい。

バスクのスポーツ

バスクのスポーツ

曇ヶ原

曇ヶ原

Evraak

Evraak

百様箱

百様箱

 

■改めて「後退」すべきプログレ・アルバム五選

筆者にとって、今の「プログレ」とは――。

一つに、70年代のプログレ・バンドが展開したクラシックやジャズなどの他ジャンルを融合した音楽。そしてもう一つは、70年代のプログレ・バンドの音楽を基調とするものの、さらにそこに新たなエッセンスを添加して「プログレス(前進)」する音楽だと思っている。

今の「プログレ」は「後退」と「進歩」というアンビバレントな二つの要素を止揚する、ヘーゲルの弁証法のようなことを求められていると考える。

そこで、筆者が影響を受けた作品を紹介したい。

まずは「後退」部門。事実解説は省きあくまで個人的な視点を書き連ねることをご了承いただきたい。なお「後退」というネガティブな意味で捉えがちな言葉をあえて使用するのは、「いったん振り返ってみる」ということを具体的に示していると思ったからである。ポジティブな類語だと「伝統」などと表現されるが、むしろ抽象的すぎて意味を捉えきれない気がしている。あえて過去を振り返ることを直接的に表現するなら「後退」の方が具体的でわかりやすいと思っている。

ピンク・フロイド『狂気』(1973)

「プログレといえばコンセプト」という印象を与えたアルバム。鼓動・時計・レジスターなどの効果音を利用し曲間を繋げて「組曲」にする巧みな編集は、後世に多大な影響を与えた。我が金属恵比須のファースト・アルバム『箱男』でも流用している。

また「走り廻って」のシンセサイザーによる無機質な電子音リフレインも近未来的でSF的でもあり、プログレスした印象を与えた。なお、タンジェリン・ドリームが「あんなの電子音楽じゃないよ」と、我こそが電子音楽の表現者だといったというが、何よりフロイドの恐ろしい点は「電子音楽みたいなワケわかんことやってる」感を醸し出すこと。勝手にリスナーが想像し話を膨らませて「凄いかも」と思わせてしまうほどのオーラを放っていたといいうことだ。ハッタリ。プログレのバンドでは最も重要な点である。

イエス『危機』(1972)

「プログレといえば長い組曲」という印象を与えたアルバム。表題曲は「i. 着実な変革」「ii. 全体保持」「iii. 盛衰」「iv. 人の四季」という4楽章で構成されている。何かいいたげだけれどもまったく意味がわからない思わせぶりな邦題をつけた功績が大きいかもしれない。また、楽章のスタイルによって「クラシックと融合」という風評もあるが、音楽的に見れば音大出身キーボーディストのリック・ウェイクマンがクラシカルなフレーズを度々弾いているのみで、直接の影響は感じられない。

この後、フォロワーたちがこぞって組曲形式を真似て長大な曲をつくり始めるが、「危機」を超える組曲はなかなか出会えない。なぜなら、「危機」のメインメロディは3つぐらいしか出てこず非常にシンプルな構成をしているからである。20分近い長さを少ないメロディを飽きさせずに変奏で繰り返すという高度なテクニックを使っているのだ。フォロワーの多くは、曲を長くするためについつい色々なメロディを詰め込みがちで、曲が長いから余計に印象が薄まってしまう現象が起きる。が、ロックの基本は「リフレイン」(同じフレーズを繰り返すこと)。プログレもやはりロックなのだ。

エマーソン・レイク&パーマー『恐怖の頭脳改革』(1973)

「プログレといえばジャケットのインパクト」という印象を与えたアルバム。映画『エイリアン』のデザイナーとして有名なH.R.ギーガーが描いた骸骨の女性に目が奪われる。レコード発売時は変形ジャケットとして発売され、骸骨が真っ二つに割れメデューサが現れるという凝った作りだった。にもかかわらずこの絵が音楽のどの部分を意味するのか、にわかには理解しがたい。こういったケレン味も大切。プログレは音楽でのインパクトはもちろん、ビジュアルも大仰で思わせぶりなのが重要である。

ジェネシス『月影の騎士』(1973)

「プログレにはキーボード必須」という印象を与えたアルバム。「ファース・オブ・フィフス」「シネマ・ショウ」というキーボード・ソロのオンパレードがその後のプログレの方向性を決定づけた。プログレっぽい曲をつくりたい!――と思ったらとりあえずオルガンかシンセサイザーで分散和音を弾き続ければそれっぽくなる。ジェネシスは「ザ・プログレ」テンプレートをつくり上げた。また「ギター・ソロは泣きのフレーズ」というプログレのセオリーも「ファース・オブ・フィフス」で完成されたといえよう。とかくに「プログレやりたい!」と思ったらまずはこのアルバムを徹底的に真似するとすぐにそれっぽくなる。

キング・クリムゾン『太陽と戦慄』(1973)

「プログレといえば変拍子」という印象を与えたアルバム。「変拍子」とは、通常の音楽で用いられる4/4拍子や3/4拍子以外の、普段あまり使われることのない5/4拍子や7/4拍子といった特に奇数で素数が分子の拍子のことをいう。普段聞きなれないものだから容易にノることはできない。ノれないのにカッコいいロックをやってしまったのが「太陽と戦慄パートII」だ。奇数拍子と偶数拍子が入り乱れ、容易に理解することが難しい曲で、かつ不協和音の嵐。いっそう不穏にさせるこの雰囲気もプログレには欠かせない。

筆者にとってのプログレのエッセンスは、
・コンセプト
・長い組曲
・ジャケットのインパクト
・キーボード必須
・変拍子
ということになる。逆にこの5点を体現すればおのずとプログレになるのである。

奇しくもか、必然なのか、1973年の作品が多い(『危機』のみ1972年9月)。ちょうど50年前にプログレはピークを迎えた。1973年に「後退」することが、プログレ道にとってまずは第一歩になると考えている。

■「進歩」のための書籍三選

次に「進歩」のおすすめを見ていきたい。

ただし音楽ではない。

ミュージカル映画『ウェストサイド物語』の作曲者で指揮者として高名なレナード・バーンスタインは、指揮者をすればするほど作曲ができなくなるとぼやいていたらしい(TV番組「タモリの音楽は世界だ」による)。指揮者は作曲者の技法などをくまなく分析しなければならないため、やればやるほど「ああ、この手法、この作曲家やってるわ」となってしまい、自分の打つ手がなくなってしまうのだ。

また、キング・クリムゾンのベーシストのトニー・レヴィンは、聴く音楽はオーケストラの作品が多いらしい。ロック以降の音楽を聴くと似てしまうから聴かないという趣旨の発言を見たことがある。

音楽を聞いているだけではプログレスしない。ということで書籍を紹介する。金属恵比須のバンド活動に影響を与えた3冊だ。

『USJのジェットコースターはなぜ後ろ向きに走ったのか?』(森岡毅著、2014年、角川書店)

マーケティングのビジネス本。窮地に陥ったユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)をV字回復させた森岡氏の筆による。

キーワードは「方向性を間違えたこだわり」(24ページ)。アトラクション「ピーターパンのネバーランド」でハイレベルなエイジング加工していたのだが、お客様からは古くてボロいと不評だったとのことで、消費者の求めるものとのズレを感じ、消費者の求めるものは何か、求めないものは何かを考え直し、さかなければならない時間と費用を考え直した。

金属恵比須は、いかに方向性を間違えたこだわりを大事にしていたかということを悟る。筆者の例だと「ベース・ペダルのこだわり」というのがあった。イエスやジェネシスが荘厳なアレンジの時に、ベーシストがベース・ギターとは別に、ペダル型の鍵盤(足鍵盤)を用いて低音を鳴らすというシーンがある。技術が発達した今となってはあえて足鍵盤に頼らずとも他の楽器で再現できる音色だ。これをあえて再現するのはプレイヤーの自己満足でしかない。そもそもリスナーの多くは足でベースを鳴らすという行為を求めていない。求めているのはプレイヤー。

なぜ足でベースを弾かなくてはならないのか。プレイヤー目線では理由があるが、リスナーには理由はない。おまけにプレイヤーとしては作業がひとつ増えるのでプレイに影響が出てしまう。よって練習が必要だ。が、その演奏に時間を割く必要があるのか。その時間を感動する音楽をつくり出す方に回した方がいいのではないか。金属恵比須としてはこれが「方向性を間違えたこだわり」と感じたのである。

また、このようなことも書かれていた。

「差別化という美しい戦術に憧れて溺れることがあります。差別化すること自体にこだわってしまい、本来の目的を失ってしまうのです」(39ページ)

当時のUSJは「映画だけのパーク」を目指しており、そのターゲットが「不必要に狭すぎる」(37ページ)を危惧し脱却したという。プログレにおいては「プログレ」と名乗るだけで相当狭くしているにもかかわらず、内部で戦国時代だから「〜〜系プログレ」とさらに細分化する。ただでさえ「プログレ」でニッチなのに、それをさらに細分化しリスナーを限定するというのは、はたして正しい選択なのか。「プログレ・バンド」というだけで十分差別化されているので、金属恵比須は「プログレ・バンド」と名乗っている。

『いつかギラギラする日 角川春樹の映画革命』(角川春樹・清水節、角川春樹事務所、2016年)

角川映画を興し、映画界に革命をもたらしたメディアミックスの祖・角川春樹氏の“武勇伝”。角川最初の映画『犬神家の一族』に衝撃を受け、影響を受け続けている筆者としては読まないわけにはいかない。

薬師丸ひろ子を発掘するオーディションの時にドキュメンタリー映画『野性号の航海 翔べ 怪鳥もあのように』を同時上映した。角川氏が埴輪をもとに作った古代の舟で47日かけて朝鮮半島に渡るという内容。角川氏はこう語る。

「『野生号の航海』の興行は史上最低の入りでしたから。なんか文句あんのかって(笑)。(中略)映画は思い入れだけじゃ出来ないことを思い知る、いい経験になりました」(69ページ)

この言葉に突き動かされた。読んだのは『ハリガネムシ』発表からしばらくたち、次のフル・アルバムを構想していた頃。『ハリガネムシ』はやりたいことの思い入れを詰め込んだ作品だった。

前述の森岡氏からも学び、間違ったこだわりで突っ走ろうとしているかもしれず、次のアルバムではリスナーから見放されるかもしれないという危機感もあった。そして何より音楽至上主義に陥っている危機感があった。思い入れだけでは続けられないのだ。

「制作・宣伝・配給・興行、そのすべてが『映画』なんです」(47ページ)

続いてこの言葉にも衝撃を受けた。音楽を制作するだけがプログレではないのか。「遠足は家に帰るまでが遠足です」のように「リスナーの手に届くまでがプログレ・ミュージシャンです」ということか。プログレ・ミュージシャンとしての思い入れと自己満足は作曲の段階のみに押し留め、その後はプロデューサーに徹することを心がけるようにした。特に意識したのが「宣伝」である。といっても自主制作ゆえにCMや広告が出せるような財政状況ではない。「宣伝」と大仰な言葉でも突き詰めれば「知らせること」。SNSしか武器がない自主制作バンドがSNS以外でどうやったら知ってもらうだろうか。

そこでメディアミックスを活用するように。角川映画の最初の発想は、横溝正史の書籍を広げようとするために映画を作りレコードも作るというメディアミックスだった。同じことをバンドが出版社に声がけをして行なったら面白いのではないか。結果生まれたのが、作家・伊東潤氏と角川書店に協力いただき、2018年に発表した『武田家滅亡』である。

余談だが、角川氏が映画業界に乗り出す前からどうしても作りたいと考えていた映画は小松左京『復活の日』だったらしい。その願いは1980年に深作欣二監督の手によって実現しているものの、商業的にはうまくいかず以降は大作路線を捨てプログラム・ピクチャーの道を進み、『セーラー服と機関銃』などのヒット作を生み出していく。やりたいこと、求められていること、やらなければいけないこと、この3点がうまく有機的に結び付かなければならないのだ。

『「週刊文春」編集長の仕事術』(新谷学著、ダイヤモンド社、2017年)

新谷学氏は2012年より「週刊文春」にて数々のスクープを連発し話題をさらった編集長(現「文藝春秋」編集長)。「文春砲」が流行語となったのも新谷氏在任時だ(新谷氏が生み出した言葉ではない)。本書は新谷氏の企画発想術や交渉術、統率力が記されたビジネス本。筆者は大学時代、週刊誌の編集者を志望し就職活動をした過去もあり、本書は発売直後に購入しすぐに読み終わった記憶がある。

まずは「いい企画」に関して。

「企画の良し悪しを見極めるひとつの大きなポイントは『見出しが付くか付かないか』だ」(90ページ)

つまりインパクトがあって面白くてわかりやすいタイトルがつけられる企画は良い企画だということだ。

「タイトルは短いほうがいい」(92ページ)

ともある。バンドにおいてはアルバムもライヴもイベントも広義の「企画」だ。ということでこの頃からこれを心がけいくつかイベントを催した。2019年7月に新曲「ルシファー・ストーン」を発表した際に体験型イベントを企画。「ルシファー・ストーン」というパワーストーンのありかをTwitterを用いてリアルタイムで公開するヒントをもとに見つけ出すことを競う。題して「ルシファー・ストーンを探せ!」。1982年、角川映画『化石の荒野』で行なった「金塊探しキャンペーン」を参考にしているが、当イベントもKADOKAWAからのご協力をいただくことができた。これもメディアミックスの発想からである。

ルシファー・ストーンを探せ!

ルシファー・ストーンを探せ!

ほかにはディスクユニオン・ロックイントーキョー(渋谷)で行なった「キンゾク万博2021」。ディスクユニオンからのポップアップストア依頼に対し、どういうネーミングがいいだろうと考え抜いて思いついたのが「キンゾク万博」だった。名前が決まった瞬間、1970年の大阪万博が思い浮かび、おのずと売場のイメージも出来上がった。太陽の塔をシンボルにその周りを「歴史館」「各メンバー館」などに配置し、それにあった商品を並べていく。新谷氏のアドバイスからは少々ズレるかもしれないが、シンプルなタイトル・見出しがつくことによって内容が決まっていくのである。

キンゾク万博2021(左から佐野雄太監督、稲益宏美、筆者の同級生トリオ)

キンゾク万博2021(左から佐野雄太監督、稲益宏美、筆者の同級生トリオ)

また、金属恵比須の動きで最も重要なのが次の言葉だ。

「初めて挨拶をかわした後、たいてい一度は会食をする。(中略)基本的にはサシでじっくりと付き合う」(49ページ)

2010年代より演奏者以外の方々からお声がけくださる機会が多くなった。金属恵比須のメンバーは皆、人好きで好奇心旺盛である。ライヴ会場でそのような方々と出会い、名刺交換をさせていただくのだが、バタバタしてちゃんとお話ができない。これを読んでからは興味を持っていただいた方には会食をお誘いすることに。そしてサシを心がける。サシだと本音で話し合うことができ、そこからいろいろな方を紹介いただくという好循環が生まれた。その結果、ある新聞社とレジェンドのロック・バンドを引き合わせるなど“マッチングアプリ”のようなこともしたり。直接金属恵比須が関わらなくても、音楽・文化の発展に寄与できればと進んで“マッチング”を行なっている。

「普通の人は『今度飯行きましょう』とか『また改めて』というセリフの社交儀礼として言いがちだ。しかし、私が尊敬するすごい人たちは、社交辞令で終わらせない。『やりましょう』と言ったら、すぐ『じゃあ、いつやろうか?』と日程調整に入る」(46ページ)

とも書いてあったので、すぐに会食の日を決めるようにしている。

これによって、金属恵比須を応援していただく方々と物事をすぐに決められるようになり、さまざまな分野とともに企画を立ててきた。

以上が「進歩」の部分である。こうして筆者は1973年への「後退」と未来への「進歩」を織り交ぜ、「プログレ」を培っているのである。「3歩進んで2歩下がる」ではなく「50歩下がって100歩進む」のだ。
 

■停滞こそ我が墓碑銘

最後にもうひとつ。近年は樋口真嗣監督の影響が最も大きい。「平成ガメラ」シリーズで昭和ガメラを復活させ(特技監督)、『シン・ゴジラ』『シン・ウルトラマン』でも昭和の特撮を新しい地平に導いた特撮映画界のレジェンドである。数々の偉業を見れば分かるとおり、「後退」と「進歩」のバランスが絶妙で、ちゃんとプログレスした世界観を作り上げている。この手法こそがこれからの金属恵比須に必要だと強く思い、図々しくお付き合いさせていただき、勝手に慕わせていただいている。樋口監督の著作を紹介したい。

『樋口真嗣特撮野帳』(樋口真嗣著、パイ インターナショナル、2022年)

樋口監督がこよなく愛するコクヨのノート「野帳」。映画の絵コンテやアイデアをメモするノートをそのままスキャンして、野帳の形に似せてそのまま本にしたものである。『シン・ウルトラマン』や『シン・ゴジラ』の制作の過程を覗き見しているようで罪深くも面白い。巻末にはインタビューがあり、樋口監督が映画・アニメに飛び込んだ経緯などが語られる。その中でアニメや特技監督をやってきた経験から『ローレライ』で監督を務めた時のエピソード。少し長いが引用する。

「今までのアニメや特撮だと、自分でコントロールしたい、絵コンテどおりにしたいってところに対して、その部分を抱え込んでしまうことが多いんですよね。ただ、そこを抱え込んでしまうと、絵コンテ以上のものにはならない。(中略)妻夫木聡さんとか話しかけてくれるんですよ。『監督が、その人の芝居が好きで呼んでるんだったら、その人の芝居を信じてあげましょうよ』(中略)そうだ、この人たちに託せるものは託したほうがいいんだな、と気づきはじめるんですよね」(625ページ)

プログレもまさに同じ。複雑な楽譜を書くことに酔いしれたり、コンピュータ上で美しいアレンジをして悦になったり、とかくに“机上の空論”になる傾向がある。でも結局はバンドで演奏する音楽だ。金属恵比須のメンバーには、人間椅子、頭脳警察、GERARDを渡り歩いた伝説的ドラマー・後藤マスヒロだっている。演奏はプレイヤーに託した方がいいに決まっている。複雑な楽譜を書くこととその再現は、まさに「方向性を間違えたこだわり」なのだ。

さて、本職の映画ばりに音楽と楽器(特にシンセサイザー)に精通する樋口監督。前号にも書いたが、金属恵比須のニュー・アルバム『虚無回廊』についてこのような感想をいただいた。

「音楽家は常に前に進まなきゃならないのに、一人(筆者)だけ引きずられて心配になっちゃう(笑)。どこが“プログレッシヴ(前進的)”なんだよって(笑)」
「こんなにモーグ・シンセサイザーを使いこなして、“あんな音、いまだに出してるんだ”って。時代が停滞しすぎていてむしろ新しい!」

本人はプログレスしているつもりなのに、映画の最先端をひた走る樋口監督にはそうは見えていなかった。思えば「メディアミックス」「会食」なども、よく考えれば「進歩」した方法ではない。結局はプログレスしていないのかもしれない。

停滞こそ我が墓碑銘。

6年間、まことにありがとうございました。

高木大地(金属恵比須)

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ロザリーナが、10月29日(日)に大阪・梅田シャングリラ、11月19日 (日)に東京・Shibuya eggmanと2都市でのワンマンライブの開催することが発表された。オフィシャル先行もスタートしている。

そしてロザリーナの未発表新曲「my star」が7月クールのTVアニメ『EDENS ZERO』の新エンディングテーマに決定したことも発表された。「my star」のリリースや詳細は追って発表されるとのこと。

『EDENS ZERO』は「週刊少年マガジン」にて連載中の真島ヒロの漫画作品。TVアニメ『EDENS ZERO』は毎週土曜24:55より日本テレビ系にて全国放送中。7月からのエンディングテーマ「my star」もチェックしておきたい。
 

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福岡のフェス『TRIANGLE』が手がける新たなアコースティックフェスが、今年も『TRIANGLE EXTRA Acoustic Resort』というタイトルで、2023年9月30日(土)福岡・LASPARK RESORT内特設ステージにて開催が決定した。

例年、福岡市内のビーチで開催してきた『TRIANGLE』。昨年は、初めてアコースティック形式のフェス『TRIANGLE'22 Acoustic Resort』を開催。 普段のライブハウスやフェスではなかなか観ることのできないアーティストたちのアコースティック演奏をリゾート施設で観ることができるとあって話題を集めた。

出演者は後日発表となるが、一足先にダイナミックプライス先行の発売がスタート。一般価格よりお得にチケットを買えるチャンス。また、本公演では小学生と未就学児童は入場無料、中学生と高校生は学割チケットでの入場が可能となる。学割チケットと一般チケットの販売時期は、後日発表されるので要チェックだ。

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ammo『道玄坂ギャラクシーロマンスナイト』 2023.06.11(sun)Spotify O-EAST

ソールドアウトと聞いてはいたが、身動きが取れない程の人で埋まったフロアを見た瞬間思わずスゲェと声が出た。6月11日、渋谷Spotify O-EAST。結成5年、派手な仕掛けも宣伝もなくひたすらライブハウスでやり続けてきたバンドが立つ過去最大のステージ。ammoの人気は本物だ。

フロム大阪、ammo始めます――。ボーカルギター岡本優星の名乗りが聞き取りづらいほどの大歓声がフロアを満たす。1曲目「ハート・フル」から「未開封」「深爪」と、ほぼ曲間無しで激しくエモくアップテンポの楽曲が立て続けに投下される。端正な顔を崩さずにギターを搔きむしりマイクに言葉を叩きつける岡本優星。ふてぶてしさ満点で音数の多いベースラインを操りながら激しく動き回るベースコーラスの川原創馬。いかした金髪ウルフカットとしなやかな二の腕でパワフルビートを叩きまくる北出大洋。いきなりの新曲も、ammoらしい直情径行なパンクチューンですんなりセトリに溶け込んでる。4曲やって10分ちょっと。すごいスピード。

岡本優星

岡本優星

「でかいっすね」「でかいね」「気合入ってるってことです。最後までよろしく」

3人のMCは広いステージをほんの少し意識しつつ、かといってやることは変わらない。ammoのすべてを見せるだけ。初めてライブに来る観客に向け、岡本が曲中で「好きにさせてやるから。好きにやって帰って」と言ってのけた「歯形」を筆頭に、中盤のセトリはミドル、アップ、スローを組み合わせてより深く聴かせるモードへと変化する。特に「不気味ちゃん」「寝た振りの君へ」「(emoji)」のスロー/ミドル三連発は圧巻で、ammoの最大の魅力である恋愛詞の切実さが最高に際立つ。岡本の書く恋愛詞は物語だけでなくその場の空気や感情さえも感じ取れるほどリアルなもので、自虐的な程に誠実だったり我儘だったり、好き嫌いや技巧を超えて届く異様なパワーがある。感情の起伏にぴたりと合わせてリズムを変える北出と川原の存在も見逃せない。曲が終わっても拍手すら起きない。誰もがじっと聴き入るしかない。

「期待は応えるものじゃなくて超えるものだと思ってます。精一杯やって帰ります」

川原創馬

川原創馬

音を止めずにチューニングを合わせていた岡本が、後半戦の開幕を高らかに告げる。スローダウンしていた観客が再び激しく動き出す。アップテンポで疾走する「最後は繋がる分かれ道」から「CAUTION」、そして「フロントライン」へ。MCタイムではないはずだが、岡本が曲を止めて語り出す。音楽に夢中だった高校生が、いつのまに音楽を生き方にしていたこと。ライブハウスがきっかけをくれたこと。バンドの将来を揶揄する声をはねのけ、「今パンパンのO-EASTでライブやってます」と誇らしげに叫ぶ岡本に向けられる祝福の拍手。「突風」「星とオレンジ」「これっきり」へ、曲の繋ぎ目もわからないほどノンストップの全力疾走。フロアは熱狂、ダイブの嵐だ。

「もう1時間もやってる。ヤバくないですか」

ぐちゃぐちゃのフロアを気遣う岡本の言葉に「足らん!」と声が飛ぶ。岡本は今年に入って独り暮らしを始めたらしい。慣れない日々の中で感じる他者への感謝と、「音楽で恩返ししたい」という言葉は本音だろう。様々な思いを乗せてライブはいよいよ最終セクションへ。「わかってる」から「ハニートースト」へ、岡本が今日初めてギターソロを聴かせてくれた。技巧よりも感情をたっぷりと乗せたいいソロだ。ここからゴールまでは一直線、超速パンクチューン「包まれる」のエンディングを何度もリピートして盛り上げ、「後日談」のサビでは大合唱、「歌種」はイントロから大合唱、そのまま怒涛のフィナーレへとなだれ込む。短距離走を何本も繰り返して、いつのまにかマラソンの距離を走り切っていたような充実感。「またライブハウスで会おうぜ」。岡本の言葉がはずんでる。

北出大洋

北出大洋

「アンコールなんで、ゆっくり聴いてってください」

90分の全力ライブのあと、アディショナルタイムは肩の力を抜いて「初恋病」「賭け愛」と、ポップな曲を2曲続けて。一礼してステージを下りたものの、鳴りやまない拍手と歓声に呼び戻されたダブル・アンコールは再び熱く激しく、「それでも変われないでいる」ともう一度「包まれる」を歌い切り、2時間近くに及ぶ東京ワンマンは幕を下ろす。リリースタイミングでもツアーでもない東京単発ライブを、コロナ禍では考えられなかったぎゅうぎゅうの人で埋め尽くした意味は大きい。そして終演後、11月の東名阪ワンマンツアーが発表された。ファイナルの東京公演は今日のキャパシティをはるかに上回るZepp Shinjuku。しかしそれはチャレンジではなく必然だ。ammoの歌を求める人が増えているから、ammoはそこへ歌いに行く。ammoは成長し続けている。

取材・文=宮本英夫 撮影=toya

ammo

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2023年8月4日(金)~8月20日(日)『「熱海殺人事件」バトルロイヤル 50ʼs』の上演が決定した。

今年誕生から50周年を迎える、つかこうへいの『熱海殺人事件』は、1973年の発表以降、翌年1974年に岸田戯曲賞を授賞、後に映画化される等、日本の演劇史上プロアマ問わず最も愛され上演され続けている作品(推定累計8,500 ステージ)。紀伊國屋ホール59年の歴史の中で、最も上演回数の多い作品でもある。

50周年を迎える今回、キャストには、“東京警視庁にその人あり”と言われた木村伝兵衛部長刑事は、『水戸黄門』や『HiGH&LOW THE WORST』など数々のドラマや映画、舞台に出演し、2020年ザ・ロンゲストスプリング、2021年1月ラストレジェンド、6 月新・熱海殺人事件の3シーズンに渡り木村伝兵衛を演じ続けている荒井敦史 と 映画『THE LEGEND &BUTTERFLY』にて信長の側近、堀久太郎秀政役を、声優としては『TRUGUN STAMPEDE』にて主人公ヴァッシュの双子の兄、ミリオンズ・ナイヴズ役を演じ、また「エン*ゲキ」シリーズ等で作家、演出家としても活躍している池田純矢 がダブルキャストで演じる。

荒井敦史

荒井敦史

池田純矢

池田純矢

捨て身の潜入捜査を行うヒロイン水野朋子婦人警官には、2021 年ラストレジェンド、2022年ラストスプリングで注目を集め、コアな熱海ファンの間でモストインプレッシブアクトレスと呼ばれた新内眞衣 。乃木坂46卒業後、その活躍はバラエティーMC、ラジオパーソナリティ、舞台女優として華々しく輝いている。今回、スタンダードチームのヒロインとして登場し、3 年連続のヒロイン出演は50周年記念公演の歴史に名を刻むことになる。

新内眞衣

新内眞衣

東京警視庁に転任して来る熊田留吉刑事は、『いつも心に太陽を』『広島に原爆を落とす日』『新・幕末純情伝』といったつか作品はもちろん、『あずみ』『フラガール』など岡村演出作品にはかかせない存在の高橋龍輝 と、舞台『ハイキュー!!』をはじめ、2021年『新・熱海殺人事件』では大山役を演じるなど、数々の舞台に出演し、今年4月には映画『ゲネプロ★7』にて主演を務めた三浦海里 がダブルキャストで演じる。

高橋龍輝

高橋龍輝

三浦海里

三浦海里

犯人大山金太郎は、舞台を中心に活躍し、ダンスエンターテインメント集団「梅棒」メンバーとしても活動中で、近年では振付も行うなど、多彩な才能を発揮している、多和田任益 。熱海は、2017、2021 年に熊田留吉役、2020年には木村伝兵衛役を演じ、今回大山を演じることで、紀伊國屋ホール公演初の全役制覇となる。

多和田任益

多和田任益

演出は、つかこうへい没後 2011 年から 13 年に渡り紀伊國屋ホールでの『熱海殺人事件』をプロデュースし続けている岡村俊一が、そして、総合演出に、フジテレビエグゼクティブディレクターの河毛俊作があたる。河毛氏は、2001 年テレビドラマ版の『熱海殺人事件』の演出も務めている。

また、今回、50周年を記念して、スタンダード公演の他に、オーディションメンバーを加えたフレッシャーズ公演と、エキサイト公演、そしてキャストを大胆に入れ替えたシャッフル公演、トークショー等が予定されている。

フレッシャーズ公演は、水野朋子役と大山金太郎役にオーディションメンバーを加えた公演で、オーディションで水野役に選ばれたのは、パチンコ「海物語シリーズ」のキャンペーンガール「ミスマリンちゃん」10 代目に選ばれ、現在 TBS テレビドラマ『王様に捧ぐ薬指』にも出演している、小日向ゆか。そして、大山役は、2022 年度関西演劇祭にてベストアクター賞を受賞し、今年『新・幕末純情伝』にも出演した、北野秀気 が挑戦する。

エキサイト公演では、昨年『初級革命講座飛龍伝』ヒロイン役を熱演し、映画『ヘルドッグズ』や主演映画『私の知らないあなたについて』など、数々の話題作への出演が続く、佐々木ありさが、水野役を務める。

佐々木ありさ

佐々木ありさ

小日向ゆか

小日向ゆか

北野秀気

北野秀気

また、ゲストも迎え、キャストを大胆に入れ替えた、シャッフル公演や、50周年記念イベントとして、50周年を記念し、スペシャルゲストを迎えたトークショーも開催。そして、“「熱海殺人事件」を若い世代にも繋げていきたい!!”ということで、日にち限定で割引価格を用意し、該当公演日は、開演前に演出家による熱海殺人事件の解説セミナーを実施する。

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