SUPER BEAVERがカバーに初登場、福山雅治のドラマ主題歌、マイヘア新曲など『New Music Wednesday[M+T]』が注目の新作11曲紹介

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話題の新曲を最速で知れる、Spotifyの人気プレイリスト『New Music Wednesday』を、ナビゲーターの竹内琢也が深掘りするポッドキャスト『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』。このSPICEでは同番組で紹介されている、プレイリストだけでは知ることのできないエピソードやSpotifyのエディター(プレイリストを構成している人たち)のこだわりをピックアップして掲載。

今週は……アルバムをリリースしたSUPER BEAVERがカバーに初登場! 福山雅治のドラマ『春になったら』主題歌のほか、Age FactoryやMy Hair is Bad、SuchmosのYONCE擁する新バンドHedigan’sの新曲、注目のreina、Chevonなど邦ロック色が強い今週注目の新作11曲を紹介! また紹介アーティストのライブやフェス情報も掲載しているので要チェック。番組への感想やリクエストは「#NMWミュージックアンドトーク」をつけてツイートを!

SUPER BEAVER「切望」

SUPER BEAVERのニューアルバム『音楽』がリリースになりました。『New Music Wednesday』のカバーを飾るのは初めてとなります。SUPER BEAVERは先週リリースされた、いきものがかりのコラボレーションアルバム『いきものがかり meets』に「コイスルオトメ」で参加、『New Music Wednesday』にもリストインし、プレイリストの中でも多くの反応がありました。今作はTVアニメ『僕のヒーローアカデミア』第6期オープニングテーマ「ひたむき」、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』前後編の主題歌である「グラデーション」「儚くない」、CMソングとしても使われている「決心」、『第103回全国高校ラグビー大会』テーマソング「値千金」、そして先行配信されていた「幸せのために生きているだけさ」に新曲6曲を加えた全12曲が収録されています。(SUPER BEAVERはアルバムに向けて色んな楽曲をリリースしたり、『ヒロアカ』、『東京リベンジャーズ』の曲もあり、メディア露出も多くて、最近改めてSpotifyの中でも聴かれている印象。)『New Music Wednesday』には「切望」がリストインしています。

Age Factory「SONGS」

Age Factoryの2021年リリース『Pure Blue』以来、約2年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム『Songs』がリリースになりました。先行でリリースされていた「Blood in blue」、「Party night in summer dream」、「向日葵」、「Lonely Star」「ALICE (feat.牛丸ありさ)」を含めた全10曲が収録されています。(Age Factoryもずっとリスナー数は増え続けていて、もちろん若い世代が中心ではあるんですけど幅広い世代に聴かれています。)『New Music Wednesday』にリストインしているタイトルトラックの「SONGS」は、「歌うこと」をストレートに表現し、ライブでシンガロングすることをイメージして制作された楽曲です。同楽曲で、日本のロックシーンの話題曲を集めたプレイリスト『J-Rock On!!』のカバーを飾っています。『J-Rock On』は最近リブランドされたSpotifyの人気プレイリストですが、このカバーを飾るのはAge Factoryにとって初めてとなります。3月からレコ発ワンマン・ツアーが開催されることも発表されており、全国5カ所と初の海外ライブとなる台湾公演が予定されています。

AAAMYYY「救世主」

AAAMYYYの新曲「救世主」がリリースになりました。Tempalayのメンバーとしても活躍し、多くのアーティストの客演も務めるなど様々な活動をしていますが、自身のソロ作品としては約1年半ぶりとなります。同作はMONJOEをプロデュースに迎えており、ふたりがタッグを組むのは2019年にリリースされた「DAYZ」以来2度目となります。(MONJOEさんはDATSや、過去にはYahyel、そしてソロとしての活動などもありますが、最近はプロデュースワークが非常に多いです。向井太一(TAIL)、AAAMYYYやFIVE NEW OLDなど他アーティストへの楽曲提供やCM音楽制作も増えてきています。)Spotifyでは日本の女性アーティストの歌を特集するプレイリスト『Women's Voice』のカバーを飾っています。

reina「A Million More」

reinaのEP「A Million More」がリリースになりました。reinaは日本R&Bシンガー。幼少期から90年代のR&Bやヒップホップを中心に様々なブラックミュージックに影響を受け、自身の音源をリリースする前から石若駿、黒田卓也、VivaOla、Wez Atlasなどのアーティスト達と共演しています。昨年は1stアルバム『You Were Wrong』をリリースしていました。今作はreinaにとって初のEPで、プロデュース、ミックス、マスタリングはKota Matsukawaが担当しています。(reinaさんは一聴してそのすごさがわかる日本人では少ない本格派のR&Bシンガー。業界からの注目度も高いでしょうし、今後も非常に注目。Kota Matsukawaさんも最近よく番組で紹介しています。さらさやVivaOlaを手掛けたり、VivaOlaが最近出してるシングルは全部携わっていて、素晴らしいトラック、サウンドを作られています。)『New Music Wednesday』にはタイトルトラックの「A Million More」がリストインしています。Spotifyでは日本の現行のソウルミュージックを特集するプレイリスト『Soul Music Japan』のカバーを飾っています。

デュア・リパ「Training Season」

デュア・リパの新曲「Training Season」がリリースになりました。『New Music Friday Japan』でカバーを飾り、『New Music Wednesday』にもリストインしています。(自分の恋愛について歌った曲だそうで、「最近数回のデートがうまくいかなくて、最後のデートが一番キツかった」と。翌朝スタジオに行って、同楽曲に参加しているキャロライン・アイリン、トバイアス・ジェッソ・Jrにその話をすると「トレーニング・シーズン・イズ・オーバー」、要するにトレーニング相手じゃなく、共に成長できる恋愛しようぜみたいなことを言ってくれて、その心情を歌ったそうです。)作詞にはデュア・リパと先ほどのキャロライン(デュア・リパの代表曲「New Rules」「Don’t Start Now」「Dance The Night」などを共作)、トバイアス(ハリー・スタイルズ、アデルなどの作品を担当、デュア・リパの前作「Houdini」にも参加)に加え、ダニー・L・ハール(キャロライン・ポラチェックの作品など)、そしてテーム・インパラのケヴィン・パーカーが参加。ダニーとケヴィンはプロデュースも行っています。日本時間2月5日(月)に行われた『第66回グラミー賞』ではいち早くこの楽曲をパフォーマンスしていました。

Paledusk「PALEHELL」

PaleduskのニューEP「PALEHELL」がリリースになりました。Paleduskはメタル/ハードコアサウンドを軸にしながら多様なジャンルのエッセンスを取り入れる福岡発の4人組バンド。オーストラリアのレーベル「Greyscale Records」、EU/UKの「Avocado Bookings」と契約し、2023年4月にはアメリカのレーベル「SharpTone Records」との契約を発表。海外のフェスやライブにも多く出演しています。同作にはVIGORMAN、Coldrain、CVLTEのAviel Kaei Tozzo、CrossfaithのKenta Koieなど数多くの客演アーティストが参加。2019年にリリースされPaleduskの代表曲としてファンからの人気も高い「NO!」の再録音源を含む全7曲が収録されています。『New Music Wednesday』にはEPのオープニングを飾る「PALEHELL」がリストインしています。Spotifyではプレイリスト『Loud Rock Japan』のカバーも飾っています。

Hedigan’s「サルスベリ」

Hedigan’sの1st EP「2000JPY」がリリースになりました。Hedigan’sはSuchmosのYONCE擁する新バンド。メンバーは河西“YONCE”洋介(Suchmos/Vo. Gt)、栗田将治(Glider、Merchant/Gt)、栗田祐輔(Glider/Key)、本村拓磨(ゆうらん船/Ba)、大内岳(Glimpse Group、AKOGARE、Burgundy、LAIKA DAY DREAM、The9Oz/Dr)からなる5人組。それまでにも不定期でライブを行っていましたが、昨年11月に1stシングル「LOVE(XL)」を突如リリース。その後今年1月に「論理はロンリー」を、今回はそれに4曲を加えた1st EPをリリースしました。『New Music Wednesday』には「サルスベリ」がリストインしています。今週東名阪ツアー『Hedigan’s Live Tour』を開催することが予定しており、2月21日(水)大阪・UMEDA CLUB QUATTRO、2月22日(木)名古屋・NAGOYA CLUB QUATTRO、2月27日(火)東京・SHIBUYA CLUB QUATTROでライブを行う予定です。

My Hair is Bad「自由とヒステリー」

My Hair is Badの新曲「自由とヒステリー」がリリースになりました。My Hair Is Badは2月14日(水)に、2022年にリリースされた楽曲「瞳にめざめて」以来のシングル「悲劇のヒロイン」をリリースしており、今作は2週連続リリースの第2弾。(色んなところでこの2曲が関連性がみえますね。自由と悲劇、ヒステリーとヒロイン。対義語ではないんだけど呼応しそうなタイトルで、ジャケットも同じ人形が描かれています。)3ピースロックバンド×3ヶ所のZeppでの主催イベント『三燦燦』も発表されており、3月5日(火)にZepp Fukuoka(対バン:10-FEET)、7日(木)にZepp Osaka Bayside(対バン:UNISON SQUARE GARDEN)、14日(木)にZepp Haneda(対バン:SHANK)で開催する予定です。

柴田聡子「Side Step」

柴田聡子の新曲「Side Step」がリリースになりました。柴田聡子は2月28日(水)にニューアルバム『Your Favorite Things』をリリースする予定で、新曲はそこからの先行シングル。ミックス・共同プロデュースに岡田拓郎(以前は森は生きているで活動していて、現在は多彩な活動をされてますね。ギタリストとしてROTH BART BARON、優河、柴田聡子、安藤裕子などのレコーディングやライブに参加。この番組でよく紹介している、優河の魔法バンドのメンバーでもあります)を迎え、マスタリングはJディラ「Donuts」をはじめとする名作に関わったLAの巨匠エンジニアデイヴ・クーリー。(M83、パラモア、テーム・インパラなど、インディーやロック作品も手がけています。豪華な布陣での曲はシンセを使ったダンスソングとなりました。)Spotifyでは日本のシンガーソングライターの楽曲を特集するプレイリスト『ブルーにこんがらがって』のカバーも飾っています。

Chevon「ですとらくしょん!!」

Chevonのアルバム『Chevon』がリリースになりました。(Spotifyではこの1年ではリスナー数が右肩あがりで増えています。番組リスナーからも、例えばメッセージテーマで「今年注目のアーティストは?」と呼びかけるとChevon、「注目のJ-Rockバンドは?」もChevonと、たくさんメッセージいただきます。『New Music Wednesday』の中でもアルバムに向けての楽曲がよく聴かれていて、その注目度を肌で感じています。)Chevonは2021年6月9日に結成された谷絹茉優(Vo)、Ktjm(Gt)、オオノタツヤ(Ba)の3人からなるロックバンドで、昨年は『JOIN ALIVE』『ARABAKI ROCK FEST』『RADIO CRAZY』などの大型フェスにも出演しています。今作はChevonにとってキャリア初となる全国流通のフルアルバムで、今まで配信リリースをしてきた楽曲からこれぞChevonという楽曲12曲と先行配信楽曲「ダンス・デカダンス」を含む新曲3曲の合計15曲が収録されています。『New Music Wednesday』には「ですとらくしょん!!」がリストインしました。Spotifyではプレイリスト『RADAR: Early Noise』のカバーも飾っています。

福山雅治「ひとみ」

福山雅治の新曲「ひとみ」がリリースになりました。ドラマ『春になったら』の主題歌として書き下ろされた楽曲です。『春になったら』は 奈緒・木梨憲武W主演で、「3カ月後に結婚する娘」と「3カ月後にこの世を去る父」が、「結婚までにやりたいことリスト」と「死ぬまでにやりたいことリスト」を実現していく3カ月間を描いた、笑って泣けるハートフル・ホームドラマ。楽曲タイトルの「ひとみ」は奈緒演じる「瞳」と同じ名前で、福山雅治は楽曲について「コンセプトは"命名"です。亡き奥様と雅彦さんが、どんな願いを込めて瞳と命名したのか? それを想像して描いてみました。すべての人に当てはまるわけではありませんが、命名とは、その対象に向けて「こういう人生を歩んでほしいな」、「こういう人間性になってくれたら良いな」という願いが込められることが多いかと思います。その願いは、命名した自分にも還ってきて、いつしかそれは「自分自身の人生の願い」と繋がっていくのでは、と」とコメントしています。福山雅治が台本を読み込み書き下ろした楽曲となっています。Spotifyではプレイリスト『Pop Legends Japan』のカバーを飾っています。

文=竹内琢也、Y.SHOGO


『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』とは……

毎週水曜日に、その週リリースされた注目の新曲を中心に更新される、Spotifyのプレイリスト『New Music Wednesday』をさらに深掘りするSpotify公式ポッドキャスト。この番組をチェックすると話題の新曲をいち早く、そして詳しく知ることができて、今の音楽シーンがまるわかりに。あなたの通勤、通学、スキマ時間に無料で聴くことができるので是非チェックを。また番組では、Spotifyアプリの「Q&A」からメッセージやリクエストも募集中。あなたのオススメ曲や思い出ソングが紹介されるかも!? 番組への感想やリクエストは「#NMWミュージックアンドトーク」をつけてツイートを!

SNSでのメッセージテーマは「2024年注目のJ-ROCKバンド」

source:New feed

読売ジャイアンツは2月23日(金・祝)・25日(日)、沖縄セルラースタジアム那覇(沖縄県)でオープン戦を開催する。対戦相手は23日(金・祝)が阪神タイガース、25日(日)が東京ヤクルトスワローズ。

この2試合では試合前のグラウンド上でダンスパフォーマンス実施。23日(金・祝)は沖縄県立小禄高校ダンス部が、25日(日)は「EXPG STUDIO OKINAWA」の総勢52人が登場する。

さらに、25日には豪華賞品の当たるお楽しみ抽選会を実施。先着1万人の入場者にラッキーカードを配布し、5回裏終了後に当選番号を発表する。抽選会の賞品は、選手が実際に使用した野球用具や、宮崎キャンプで撮影した限定チェキ写真など。球団創設90周年にちなんで、合計90人にプレゼントされる。

限定チェキ写真をプレゼント

限定チェキ写真をプレゼント

那覇春季キャンプの総仕上げとなる那覇オープン戦。2024年シーズンの幕開けを飾る試合で、新生ジャイアンツの様子をいち早く確かめたい。

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ツユ LIVE TOUR 2024『革命前線』
2024.2.4 Zepp Haneda(TOKYO)

雨降って地固まる、という言葉がもしあてはまるのだとしたら。ツユはここからまた、我々にとって恵みの雨をもたらしてくれる存在になっていくことだろう。

このたび開催された『ツユ LIVE TOUR 2024『革命前線』』は、彼らにとって相当に重要な分岐点になっていたと言っていい。何故なら、昨年11月12日にツユ公式Xにおいて突如“ツユ LIVE TOUR 2024『革命前線』を最後に、『ツユ』は活動休止します。それ以降、動きが無ければ解散したと思って下さい。何卒宜しくお願いします。”というポストがなされ、いわゆるツユナー(※ツユのファンの呼称)の間では困惑と心配の声が多数湧きあがっていたからだ。

礼衣

礼衣

ぷす

ぷす

miro

miro

しかも、その翌日11月13日には再び公式Xに「革命前線」の歌詞がまるごとポストされる、という事態も起きていた。もちろん、そのことを10月30日にデジタルシングルとして発表された新曲プロモーションの一環として解釈することもできなくはなかったが、いかんせんこの曲の詞の中に〈雨 雨 ちっとも降らないね ほら今日もずっと枯れたまま〉〈だ だ だから もう見放して!〉といったフレーズがあることを思うと、やはり情況を楽観視することは出来ないと感じた人が多かったに違いない。

そのうえ、いざ2024年に入り『ツユ LIVE TOUR 2024『革命前線』』が始まってみると、1月27日に予定されていた仙台公演[ – Upper Night – ]は開催の2日前に“ヴォーカリスト・礼衣の声帯出血を伴う声帯炎の症状により”開催中止がインフォメーションされることに。また、2月4日にツアーファイナルとして行われた東京・Zepp Hanedaについても、本来なら昼夜2公演が行われるはずだったが、昼公演[ – Downer Night – ]は開催中止が告知され、夜公演[ – Upper Night – ]のみが実施されることとなったのである。

ツユ

ツユ

これら一連の流れはどれも不安要素でしかなかっただけに、いよいよ2月4日の夜公演[ – Upper Night – ]が始まって1曲目の「やっぱり雨は降るんだね」が場内いっぱいに響きわたった際は、ある種の安堵感がその空間を充たすことになったように感じられた。礼衣の伸びやかな歌いぶり、miroの軽やかな指さばき、ぷすの繰り出すエモいギターの音色。それらはいずれもツユならではのもので、この場に集ったツユナーにとっては自らの耳と目でそこにツユが存在していることをあらためて確認できた、という事実がまずは何よりの吉報だったと思われる。

この日のライブでは、ツユの結成から今までの軌跡を辿るようなセットリストの中に、途中にはmiroによるインスト「雨宿り」や「強欲」などもはさみつつ、本編後半ではぷすがギターソロ曲「Revolution」を披露する一幕もまじえ、彼らは良い意味で“しれっと”このツアーファイナルでツユらしいパフォーマンスを繰り広げていくことになった。その様子は、まるで昨年のXを巡るあれこれや、このところの礼衣の不調がなかったかのような面持ちであり、ツユナーたちの方も彼らのステージングに対してそれぞれの曲に聴き入ったり、あるいは自然と盛り上がったりできるような空気感が不思議と醸成されていたのだ。

ツユ

ツユ

なお、今回の本編ラストを飾った曲はほかならぬ「革命前線」。この記事冒頭では詞の中の敢えてネガティヴな部分を抽出したものの、このライブにおいて特に印象的に聴こえてきたのは〈そして取り戻せよ初心 下克上〉〈命ある限り 創作人生 雨 雨 ざぁざぁ降ってんね ほら革命日和だね〉といったくだりで、つまりはさまざまな“騒動”こそツユにとっての革命を起こすために必要なステップだったのかもしれない……とようやくここで我々は気付かされることになったと言えるのかもしれない。

その気付きはこのあとのアンコールでより強い確信へと変わることになったのだが……なんと、まず再登壇したのはぷすのみ。それも、ぷすはギターを持たずにハンドマイク1本だけを手にして、「下克上」をセンターで熱唱し始めたのだ。この曲はぷすがツユの始動を前にした2019年5月に「この動画をもって『歌い手』としての活動を引退します」と表明したうえで提示されたもので、前述の「革命前線」にも歌詞として出てくるものだと考えると、こうした行動は彼にとっての所信表明だったということになると考えて良いはず。実際に「下克上」を歌い負えたあとのぷすは、オーディエンスを前に以下のような旨を述べ始め、そればかりか“土下座”をしてみせるにまで至った。

ぷす

ぷす

「えー。去年の11月から、この2月になっても僕はやらかしています。(中略)「ろくでもないな」とここにいる皆さんは思っていらっしゃいますか? 本当にそれらの件については、すみませんでした! でも、ちょっとだけ理由を説明させてくれ!」(ぷす)

ここでぷすから語られた赤裸々な発言を要約すると、昨年夏から彼はハングリー精神を失って行き詰まり、曲も作ることができなくなって、そのフラストレーションから暴発して破壊衝動に駆られてしまっていたのだという。

「全てをぶち壊して、後に退けない情況を作って、このままだと誰も寄ってこなくなって俺はこのまま死んでいく、くらいの環境を作らないとマジでもう曲は作れねぇと思ったから、メンバーとかスタッフにも誰にも言わずに、ああいう流れになってしまいました。すみませんでした。でもね、これは後ろ向きなことじゃないです。俺はこれからもツユをやっていきたいから。もっと新曲もたくさんあげて、おまえらにもライブに来て欲しい。そのためにやったんだよ。やり方は荒っぽいし、そのせいで礼衣さんはノイローゼで声帯炎になっちゃったみたいだし、ぷす性格やべぇーって思った人も5万人くらいいると思うし、こういう性格だからこれからもおかしなことは言うと思うけど。それでも、さすがにここまで来たらもう「ツユを捨てよう」とかは思わないです。なので、ツユは解散しません!!」(ぷす)

高らかなるぷすの解散回避宣言を受け、ここで現われたのは礼衣とmiroのふたり。

「……被害者の会です(苦笑)。ほんとにわたしたちはかき乱されたよ。だって、病院の先生が言った声帯炎の原因聞く? 「ストレス」」(礼衣)

「ほんとにね! あの時はみんなのことをどんだけ心配させるんだろうと僕も思ってたよ。なんとか平静は装ってたけど、お腹は痛くなるし、熱も出るし、いろいろ大変だったもん。そんなツユが複雑な情況の中、こうして東京公演に来てくれたみんなと、各地でツアーに参加してくれたみなさん、本当にありがとうございます!」(miro)

ということで、ここからはしばし礼衣、miro、ぷすの3人でぶっちゃけまくりの後日談が展開されたものの、最終的には3人ともツユとしての未来に向けて前向きな気持ちでいる、ということがその会話の中からはよく伝わってきた。

「やっぱり、みんなに「ツユのことを応援しててよかったな」って思ってもらえるようなグループでありたいと、僕はそう思ってます!」(miro)

「ほんとにすみませんでした! これはマジで、曲だけはちゃんとまた良いのを作ってくから。俺にできるのはそれしかないんで。それだけはもうやめません!!」(ぷす)

「そうなんだよね。それがなかったら、うちらもここにいないからね。そして、いろんなことはあったけど、これからもツユは続くということなので。応援よろしくお願いします!」(礼衣)

ちなみに、こうした彼らの言葉のあとに演奏された「新曲」は近日中にYouTube公式チャンネルにて公開されるそうなので、期待して待とう。

ツユ

ツユ

傍若無人なぷすと、健気な礼衣と、気遣いの出来るmiro。歪で不完全なところはあるとしても、この3人が揃うことで生まれるツユの音楽にはそこにしかない空模様があり、時に優しく時に強く降り注ぐ恵みの雨のように、聴く人の心に染み渡るのがツユの音楽なのだとしたら。このたび降った大雨によって地が固まるだけでなく、ここから一雨ごとに季節が進んで行くことを切に願いたい。

文=杉江由紀
撮影=森好弘

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最新EP『DOPING!!!!!!』は、収録されている全曲がコラボレーション。多彩な布陣のフィーチャリング、サウンドプロデュースで完成した各曲が圧倒的に楽しい。ナナヲアカリの豊かな表現力と向き合えると同時に、新鮮な歌声のコンビネーションでワクワクすることもできる作品だ。各曲に込めた想い、制作エピソードについて語ってもらった。

――全曲がコラボレーションですね。

はい。好きなみなさんとのコラボ作品を1枚作れたらいいなと、なんとなくずっと思っていたんです。一昨年の12月頃に「メルティックヘル」の制作に着手し始めた後、「FASHION」のお話も頂いて、コラボがたまたま続いたんですよね。それがきっかけとなって、全曲が様々なアーティストさんとコラボレーションしたEPを作ることになりました。

――『DOPING!!!!!!』というタイトルは、なかなかインパクトがあります。

タイトル通り、ドーピングしています(笑)。お互いのいいとこどりをしているので。

――「チューリングラブ」とかもそうでしたけど、コラボ曲ならではの楽しさは、もともと感じていたんじゃないですか?

そうですね。たくさんディスカッションをして和気あいあいと楽しんで作れるのがコラボなんです。今回も制作がすごく楽しかったです。

――もともと幅広いタイプの曲を歌いたいというのがナナヲさんの中にあると思うので、そういう点でもコラボは楽しいんでしょうね。

そうなんです。もしかしたら1人でやるのと比べても、マインドの違いはそんなにないのかも。明確にフィーチャリングとかプロデュースとか銘打っているので、聴いてくださるみなさんの方が新鮮に感じる部分があるのかもしれないです。

 

――「FASHION feat. GaL」は、NintendoSwitch™用ソフト 着せ替えファッション&コミュニケーションゲーム『ファッション ドリーマー』CMソングですね。

はい。CMソングのお話を頂いてからGaLさんと制作を始めたので、ゲームの世界とナナヲをリンクさせた曲になっています。

――『ファッションドリーマー』、面白そうです。ファッションに興味がある女の子とか、夢中になっているんでしょうね。

そうだと思います。私も3DSの頃にファッションを題材にしたゲームに夢中になっていたんです。だから『ファッションドリーマー』は、「こういうゲーム、小学生の頃めっちゃ好きだった!」とテンションが上がりました。ファッションに対する感性も磨くことができるゲームだと思います。

――ゲームの世界観を踏まえつつ、GaLと曲の制作を進めたんですね?

はい。ナナヲ自身も洋服がすごく好きなので、『ファッションドリーマー』とリンクする部分がたくさんあったんです。私は基本的にはストリートファッションが好きなんですけど、場面に応じて着替えるのもすごく好きなんですよね。服を変えると気持ちや自分の芯にあるものも変化するというか。ちょっと性格も変わるような感じがあるんです。

――スーツを着ると普段よりもちゃんとした性格になるような感じとか、僕も覚えがあります。

やっぱりそうですよね? 服が持っているそういう力とかにもフォーカスした曲にしたいとGaLさんとお話をした結果、とても難易度の高い曲が完成しました(笑)。

――怒涛の展開です(笑)。

初めて聴いた時、“この曲のキー、なに?”ってなりました。キーがいろいろ変化し続ける曲ですからね。

――“ナナヲさんなら歌いこなせるに違いない”というのが、クリエイターのみなさんの中にもあるんだと思います。

そうかもしれない(笑)。「FASHION」の難易度の高さには、かなりしびれましたよ。でも、そういうのをクリアする楽しさもあるんです。練習のしがいがありました。

――《もし世界が終わるとしても 世界中でほめられたい》というフレーズがあるのも、この曲の面白さです。

「今日も世界でほめられろ❤」というキャッチフレーズのゲームでもあるので、敢えてスケールを大きくしました。

――世界が終わるのにほめられたいって、ものすごい承認欲求ですよね。

ほんとそうですよね(笑)。“絶対に生きのびたい”とかよりも“ほめられたい”“最後の最後までいいねが欲しい”というような感覚は、すごく今時な感性な気もします。

――《どんな終末さえ シェアしていたい 私がミューズ》というフレーズもインパクトがあります。

こう言い切ってしまうのって、なんかかっこいいですよね。ここまでファッションにフォーカスした曲を歌ったことは今までになかったので、そういう点でも気持ちが良かったです。

20代前半の頃は何に焦っているのかもわからないまま常に追われている感じだったけど、最近、加齢に対するネガティブな感情が一切なくなってきて。

――ナナヲさんのファッションに注目しているファンのみなさんは多いですよね?

そうかもしれないです。私はもともと服が好きで、自分で作ったりすることもあるので、ファンのみなさんが服に興味を持つきっかけになることもあるみたいです。“衣装がかわいかったので調べてみました”と、同じ服を買ってくれたりもするので。

――この曲をGaLと制作することになったのは、どういう経緯だったんでしょう?

素顔を公表しないで活動しているクリエイターチームなので、ずっと気になる存在だったんです。だからこの機会にぜひご一緒したいと思いました。私は普段からいろいろな曲をディグるのが好きなので、気になるクリエイターさんは、結構いるんです。

――ネット出身のクリエイターは、個性豊かな方々がたくさんいますからね。

そうなんです。何かのきっかけで注目されて、スターになってもおかしくない人たちがたくさんいると思います。ボカコレとかを聴いていると10代前半の子たちとかの作品もありますから。DTMソフトを使ってリズムゲーム的な感覚で作っちゃう小学生とかがいるのかもしれないですね。

――ボーカロイドでしか表現できないような怒涛の展開を遂げる「FASHION」を歌えてしまうナナヲさんは、やはりすごいですよ。

ありがとうございます。中学生の頃、初音ミクとかボーカロイドが憧れだったので、“難しい曲を歌いたい!”っていう気持ちは今でもすごくあるんです。

 

――「メルティックヘル feat. 超学生」も、すごい展開の曲ですね。ナナヲさんと超学生さんは、歌声のキャラが正反対なのも面白いです。

超学生くんも最近のインターネットから飛び出してきた新世代のスターですからね。彼はSNSの使い方や自己プロデュースの仕方がすごく上手いですし、ずっと気になっていたんです。この曲はTikTokとかSNSにフォーカスしているので、超学生くんと歌いたいなと思いました。お声がけをしたら超学生くんも私のことを知ってくださっていたので、すぐに打ち合わせをしてナユタン星人さんと一緒に制作を進めることになりました。

――超学生さんとは、どのようなことを話しました?

“切り抜き命”みたいな昨今のSNS事情についてとかめっちゃお話をさせていただきながら作り込んでいきました。超学生くんはとても論理的にインターネットを運用して、狙ったところにちゃんと届けていくタイプなんです。だからこの曲に出てくる悪魔くんにもロジカルに全部を知り尽くしているキャラとして歌ってもらうことになりました。

――TikTok、インスタグラムをやっている人にすごくリアリティを感じてもらえる曲だと思います。

そうですね。SNSとの向き合い方に疲れているところもありつつ、“バズりたい”という願望もどこかしらで抱いていると思うので。相反する感情が表裏一体となっているSNSを表現できた曲なのかなと感じています。この曲は音もすごく気持ちよくて、歌の掛け合いも気持ちいいんですよね。

――「チューリングラブ」が好きな人は、この曲にもはまると思います。あの曲もSouさんとの掛け合いが気持ちいいですから。

Souくんは音域が高いんですけど、超学生くんは低音に特化したボーカリストなんです。ここまで声質のコントラストがはっきりしたフィーチャリング楽曲は、もしかしたら初めてなのかも。

 

――「あなたじゃなくても feat. 澤田 空海理」も歌声のコンビネーションが素敵です。ものすごく切ないラブソングに仕上がりましたね。

ありがとうございます。デュエットソングです。結構前にこの曲の土台となるメモを書いていたんですよね。“どういう曲を歌いたいかな?”と考えていた時にメモを見つけて、“これを形にしよう。この温度感は澤田 空海理だろう”ということになったんです。

――男女それぞれが抱いている気持ちが歌われていて、とても物語を想像できます。

もう終わりなのに終わらせていない2人を描きたかったんです。そういう人ってめっちゃいると友達の話を聞いても感じるんですよ。“そんなだったら別れたらいいじゃない?”って言っても“そうなんだけど。うん……”って別れなかったりするので。傍から見ると幸せそうなんですけど、中身は地獄だったりもして。

――この曲のMVも切なかったです。何気ない日常の幸せをたくさん捉えた感じの映像ですけど、2人の心がまったく通い合っていないのがわかりますから。

すごくリアルに作り込んでいただけたMVです。

――この曲を聴いた小中学生くらいの子たちは、恋愛のリアルな部分を学んでいるのかも。

ものすごい英才教育ですね(笑)。

――(笑)。聴きながら改めて感じたんですけど、ナナヲさんは曲で描かれている登場人物に完璧になりきりますよね?

なりきるというか、なれちゃうというか(笑)。私の中で大きく分けると“ナナヲアカリ”と“ダ天使ちゃん”という2つのスイッチがあるんです。

――歌っている曲のキャラクターに日常生活が引っ張られることとかはありますか?

それは滅多にないです。昔はそういうこともあったんですけど。

――俳優さんは、演じているキャラクターに引っ張られることがあるみたいですよ。

俳優さんは、そのキャラクターになっている時間が長いですからね。歌は4、5分とかなので、そこまで引っ張られることはなくなりました。

――ナナヲさんがスイッチを切り替えてキャラクターと完璧に同化する感じは、「NOBODY KNOWS PARTY feat. 玉屋2060% (Wienners)」を聴いても感じます。「あなたじゃなくても」の対極にあるような歌ですからね。

最近の私の中にある願いが一番こもっているのが、実は「NOBODY KNOWS PARTY」です。ぱっぱらぱーな感じの曲なんですけど(笑)。“優しい世界にしましょう!”という曲です。SNSとかを見ていると他人に対して優しくない人が多過ぎるのを感じて、“なんで?”って悲しくなった時期があったんです。玉屋さんもとてもピースな方なので、“わかる! 俺、そういうのがあるから全然SNSをやりたくないんだよね”とおっしゃっていました。そういうお話を経て、こういう曲になっていきました。

 

――変態紳士クラブのGeGさんがプロデュースした「Jewel」も、温かいメッセージが伝わってくる曲です。

この曲は、演じていないナナヲアカリですね。GeGさんはもともと個人的に好きで、プロデュースされている曲をずっと聴いていたんです。レコーディングはGeGさんの大阪のスタジオに行って、打ち合わせから爆速でしたね。ナナヲのイメージのビートを頂いて、それを聴きながら歌詞を書いていきました。そういえば、歌を録ってくださったエンジニアの方は私と地元が一緒で、最寄り駅が同じなんですよ。そんなお話もできて、面白かったです。

――器用に生きられず、回り道するような人生を肯定する気持ちが伝わってくる曲です。

20代の前半くらいの頃の私は何に焦っているのかもわからないまま常に追われている感じだったんです。でも、今になって振り返ってみると、焦ったり、悩んだり、くすぶっていた時期も“まあ、いっか”と肯定できる感じがあるんですよ。こういうことを歌える自分になれて良かったなと思っています。

――年齢を重ねると、受け入れられることの幅が広がるというのはありますよね。

そうなんです。最近、加齢に対するネガティブな感情が一切なくなってきていて。そういうことも含めて伝えられたらいいなと思っています。

――年齢を重ねたからこそ歌える歌は、今後も生まれていくんじゃないですか?

そうだったらいいですね。例えばむちゃくちゃかっこいいジャズ、ブルースとか、まだ自分が歌っていないジャンルの曲への憧れはありますから。

 

――「I LOVE MEでいられるように feat. 湊あくあ」は、BPMがものすごく速いですね。

そうなんです(笑)。“理由はないけど、自分のことを褒めて認めよう!”という曲です。「NOBODY KNOWS PARTY」や、広い意味で言えば「メルティックヘル」もそういうテーマですね。他人に優しくするためには、まずは自分に優しくするべきだと思うんですよ。自分に余裕がないと他人に対して強く当たってしまったりもしますから。あくあちゃんも活動を通してそういうことを伝えていると感じて、それはナナヲアカリとリンクする部分なのかなと。あと、この2人で歌うんだったらバラードとかよりも、やっぱりアッパー系なのかなと思って、こういう曲になりました。

――これを歌いこなせるナナヲさんと湊あくあさんは、やはり只者ではありません。

あくあちゃん、すごかったですよ。完璧に歌いこなしていて、それに刺激されるものがありました。

――これをもし1人でカラオケで歌おうとする人がいたら、ものすごい勇者です。

やって欲しい(笑)。歌ってくれたら嬉しいです。1人チャレンジが流行ったら面白いですよね。

――チャレンジする人がいるかも。歌ってみたくなる曲でもあると思うので。

この曲、楽しいんですよ。こういう速い曲って、問答無用で楽しくなっちゃうんですよね。乗っちゃうと、あっと言う間に終わっちゃうんですけど。

――楽しいと同時に、元気になれるメッセージがまっすぐに伝わってきます。

嬉しいです。意外と励まされる人が多い曲なのかもしれないですね。

――この曲で歌っているように、ご自身のことを愛せていますか?

そうですね。昔はネガティブ過ぎて自己肯定感が鬼低かったんですけど、ここ1、2年はアイ・ラブ・ミー過ぎて“誰か止めて!”っていう気持ちです(笑)。

――(笑)。ネクラロイド(※)の頃があったとは思えないですね。(※アルバム『ネクラロイドのあいしかた』2017年8月発売)

ネクラロイドの時代を切り抜けて、今は“誰か止めて!”の人になってしまいました(笑)。

――(笑)。今回のEPは、素敵なメッセージもたくさん込められた作品だと思います。

ありがとうございます。そうかもしれないです。もちろん曲それぞれの物語があるんですけど、歌いたいことを自然に詰め込んだ結果、全体的にポジティブなものになっていったのかなと思います。

――ジャケットのアートワークも素晴らしいですね。さすが寺田てらさんです。

もう、かわい過ぎます! コラボしたみなさんに縁のあるアイテムも散りばめられているので、いろいろ探しながら見るのも楽しいと思いますよ。

――このEPがリリースされるのは、ツアーが終了した後ですね。どんなツアーになったと感じていますか?

新曲を各地で1曲ずつ増やしていったんですけど、聴いてくれる人が目の前にいるからこそ説得力を増す曲もありました。「メルティックヘル」もそうでしたね。SNSに対するシニカルなことも言っていますけど、あれがあったからこそ繋がれたのがライブに来てくださったみんななので。ライブで歌いながら、そういうことをすごく感じました。新曲の意味をより強く、リアルに実感できたのが、今回のツアーだったと思います。

――ネットへの動画投稿から始まったナナヲさんの音楽活動ですが、お客さんの前で歌うライブに対してはどんな想いがあったんですか?

もともとライブを観に行くのは好きだったので、憧れはあったんです。もちろん最初の頃はめちゃくちゃ緊張しましたけど、緊張よりも憧れが上回ったというか。

――ネットで音楽に触れるのが主体のお客さんも、ナナヲさんがきっかけでライブの楽しさを知っているのかもしれないですよ。

そうですね。“人生初ライブです”とか言ってくれる人もいて、めっちゃ嬉しいことです。ライブで音楽を聴くって、やっぱり何にも代えられないものがありますから。

――今後、海外でのライブの機会も増えていくかもしれないですね。昨年の11月に始まって今年の1月にファイナルを迎えた『RPG TOUR』も、北京、上海、広州公演がありましたから。

中国で私はnana(ナナ)って呼ばれているんです。かわいい愛称で嬉しいです。海外でのライブもどんどんやっていきたいですね。欧米も行きたいなあ。

――海外の人にとってもナナヲさん曲は新鮮だと思いますよ。今回のEPに入っているようなサウンドは、アメリカやイギリスとかの音楽にはなかなかないタイプですから。

J-POPならではの曲もたくさんありますからね。

――ガラパゴスとか否定的なことを言われることもありますけど、J-POPならではのサウンドは誇ってもいいと思います。

そうなんですよね。これは文化だなと私も思っています。「FASHION」みたいなえぐいコード進行をする曲が好きな人は海外にもいるはずなので、そういうみなさんと出会っていきたいですね。

取材・文=田中大 撮影=大橋祐希

 

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世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ発表会が2024年2月19日(月)に開催され、芸術監督の白井晃、『饗宴/SYMPOSION』から橋本ロマンス、せたがやアートファーム2024 音楽劇『空中ブランコのりのキキ』から野上絹代、『ロボット』からノゾエ征爾、シアタートラム・ネクストジェネレーションvol.16 ―演劇―に選出されたくによし組『ケレン・ヘラー』から國吉咲貴、サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE』から桐山知也が登壇した。

ラインアップ発表に先立ち、白井は「2022年度から芸術監督に就任して、昨年度までは前任者からの引き継ぎという形でプログラムを推進してきたが、2024年度からは最初の企画段階から含めてプログラムした。今回登壇している方々は、世田谷パブリックシアター主催公演には初登場の方ばかり。新しい劇場の姿を目指して頑張っていきたい。コロナ禍の4年間で舞台芸術を取り巻く環境も大きく変化したし、世界情勢も変化があった。今年は「わたしは、この世界とどのように向き合うか」を活動のテーマにしていきたい」と挨拶をした。

白井晃

白井晃

続いて白井からラインアップが発表された。

GWに開催される『フリーステージ2024』は開館当時から実施している事業で、文化活動を行っている世田谷区民団体に表現の場を提供して、劇場がサポートしながらステージを作り上げる。

5月6日(月・休)〜6月9日(日)には、エンダ・ウォルシュの最新作を白井晃が演出する『Medicine メディスン』が上演される。これまでも『バリーターク』『アーリントン』〔ラブ・ストーリー〕とエンダ・ウォルシュ作品の演出を手掛けてきた白井は「エンダ・ウォルシュは社会の中で孤独な人々をテーマに書いている作家で、今作について彼は「我々が弱者をほったらかしにしたらどうなってしまうのか、ということを描きたい」コメントしている。出演者は田中圭、奈緒、富山えり子の3人の俳優に、ドラム奏者の荒井康太を加えた4人で上演する」と述べた。

7月初旬に上演される『饗宴/SYMPOSION』について、演出・振付の橋本ロマンスは「2021年に制作した『Pan』は、古代ギリシャの劇場の観客席が市民を形成する装置として逆説的に機能していることをもとに、劇場の持つ機能を現代の東京にトレースできないか、ということを試した作品だった。プラトンの「饗宴」は、特権性のある古代アテネ市民の知識階級の男性たちが愛についての演説を行っていく対話編で、私はそれを批判的に見たいと思っている。2024年の東京で「饗宴」が行われるとしたら、そこにはどんな人がいるべきなのか、どんな愛が語られるのか、現代の東京において安全に愛を語れる場所は存在するのだろうか、ということを主軸に置いた作品になる。昨年10月からのパレスチナの状況を見て、アーティストとしての技術をどう使うべきかということを考えていて、現代社会において透明化されている存在を示していくことに自分のアーティストとしてのリソースを使っていきたい」と語った。

橋本ロマンス

橋本ロマンス

7月~8月には『せたがやアートファーム2024』が開催される。4つの公演とワークショップ等から構成され、7月21日(日)の『せたがや 夏いちらくご』は、2020年に始まって今年で5回目の開催。プロデュース・出演を春風亭一之輔が務め、子どもも大人も楽しめる寄席公演になっている。7月上旬には、アクロバティックなパフォーマンスを得意とするカナダ・ケベック州生まれのサーカスカンパニー、マシーン・ドゥ・シルクによる『ゴースト・ライト』が上演される。8月8日(木)〜8月10日(土)は、同じくカナダ・ケベック州で2013年に設立された、ユニークなファミリー向けパフォーマンスを数多く創作しているカンパニー、ル・グロ・オルテイユが初来日し『図書館司書くん』を上演する。

8月に上演される『空中ブランコのりのキキ』は、別役実の童話「空中ブランコのりのキキ」「山猫理髪店」「丘の上の人殺しの家」を原作に、野上絹代が構成・演出、北川陽子が脚本を担い、新たに創作される音楽劇だ。野上は「別役実さんは憧れの作家。作品に出てくる設定やキャラクターはアイデンティティを無くしたものが多く、それらが切実で愛おしく感じる。「空中ブランコのりのキキ」に登場するキキも空中ブランコのりというアイデンティティに悩む少女。キキは咲妃みゆさん、キキを支えるピエロのロロは松岡広大さんが演じてくれることになった。サーカスの設定なので、日本を代表するサーカスアーティストの方々にもお声がけして作品を支えてもらい、オオルタイチさんには音楽の面から盛り上げてもらう。今の子どもたちの多くはパンデミックなどで、これまで日常だったものがガラリと変わってしまう経験をした。子どもたちに劇場に来てもらって、生きる喜びをたくさん受け取ってもらいたい」と語った。

野上絹代

野上絹代

このほか『せたがやアートファーム2024』では「泥棒対策ライト」の新作公演(提携公演)、音楽家のASA-CHANGによるワークショップ、フランスを拠点に活動しているジャグラー・ダンサーの小辻太一によるこども向けワークショップ、大学生のインターンシップ、小・中・高校生それぞれ対象の「エンゲキワークショップ」が実施される。

10月には世田谷アートタウン2024『三茶 de 大道芸』が開催される。1997年のスタート以来、毎年秋恒例のフェスティバルとして街全体が大道芸で賑わいをみせる2日間となる。

10月〜11月は、白井の演出で『セツアンの善人』を上演する。白井は「ほぼ100年近く前に書かれたブレヒトの作品群には、現代を相似形のように表しているものが多いと常々思っている。現代的にアダプテーションしながら作っていけたら」と述べた。

11月〜12月は、カレル・チャペックの戯曲『ロボット』をノゾエ征爾による潤色・演出で上演する。ノゾエは「ロボットと人間が共存する時代はきっと来る。一般的にはロボットが侵食していくことがあたかもよくないことのように描かれがちだが、必ずしもそう言い切れないのではないかと思っている。この作品もロボットたちが人間たちを凌駕して世界を支配していくという話で、まずこれが100年前に描かれていたことがすごいと思う。本作を潤色しながら、どこを現代的にアレンジしていくか悩んでいる。人間の愚かさを描きたいわけではないし、そこに終始するのは前時代的だと思うし、とても大きな課題を突き付けられているが、でも創作とはそういう問題に向き合うということだと思う」と語った。

ノゾエ征爾

ノゾエ征爾

11月20日(水)〜22日(金)は、北欧を代表する現代サーカスのカンパニー、サーカス・シルクールが6年振りに来日して『ニッティグ・ピース』を上演する。白井は「非常に美しいサーカスを作るカンパニー。平和への願い、戦争に対する思いが込められた作品になっている。2018年に世田谷で上演した作品『LIMITS/リミッツ』も難民問題をテーマにしていたし、非常に社会性のあるサーカスではないか」と述べた。

12月20日(金)〜12月22日(日)は、次代を担うアーティストの発掘と育成を目的としたシアタートラム・ネクストジェネレーション演劇部門に選出された、くによし組『ケレン・ヘラー』が上演される。くによし組主宰で作・演出の國吉は「この作品は2018年に上演された、ヘレン・ケラーの不謹慎なコントをするお笑い芸人がお喋りロボットのサリバンちゃんと手を組んで芸人のトップを目指すという物語。初演のときは、SNSで刺激的なコンテンツが増えて行く中で、面白いと不謹慎の境目はどこなんだろう、ということをテーマにした作品だった。初演から5年経って改訂再演になるが、主人公が面白さを追求して壊れていってしまった原因は本人だけではなく周りの人にもあったのではないかと思い、「盲目だったのは誰か」という部分をテーマにして書き直した。キャストも初演から全員変えて、全然新しいものができるのではないかと思っている」と述べた。

國吉咲貴

國吉咲貴

2025年2月〜3月は、サイモン・スティーヴンス ダブルビル『ポルノグラフィ PORNOGRAPHY / レイジ RAGE』が上演される。イギリスの劇作家サイモン・スティーヴンスの2作品を、同じ演出家・出演者により同時上演(ダブルビル)する企画で、演出を務める桐山知也は2021年にKAAT神奈川芸術劇場で『ポルノグラフィ』をリーディング公演として上演している。ちなみにこのリーディング公演は、本来は白井晃がKAAT芸術監督として在任中の2020年4月に上演予定だったが、コロナ禍で上演が1年先延ばしになったという経緯がある。桐山は「今回の上演作品を何にするか、白井さんや劇場側との話し合いで複数の作家が候補に挙がったが、僕がサイモン・スティーブンスから離れられなかった。一番やりたいと思っていた作品が『レイジ』だったが、この作品で行こう、と決めきれずにいたとき、ダメ元で白井さんに『ポルノグラフィ』はどうかと提案したところ、2本ともやろうということになった。『ポルノグラフィ』はモノローグの時間が長く、その人の内なる声を耳を澄ませて聴くという印象で、『レイジ』は非常に暴力的で人種差別的なことがあふれていて、その声を聞かされてしまうという印象で、その対比が面白いと思った。2025年に上演するにあたり、現在そしてこれから先の世界がどうなっていくのかを考えながら作っていきたい」と語った。

桐山知也

桐山知也

2025年3月は、ドイツのマインツ州立劇場に所属するコンテンポラリーダンスカンパニー、タンツマインツの初来日公演『PROMISE』が上演される。振付は、タンツマインツとのコレボレーションは3作目となる、世界的に活躍するシャロン・エイアルが務める。白井は「マインツ州立劇場は様々な活動をしていて、公共劇場という視点からも非常に共感する。タンツマインツは刺激的なダンスカンパニー。今後も毎年海外からのダンスカンパニーを招聘できるように頑張っていきたい」と述べた。

2025年3月に開催される『地域の物語2025』は、地域の人々とワークショップのプロセスを通じて演劇を作っていく、開館当初から継続して毎年行われている演劇ワークショッププロジェクト。白井は「地域の皆さんとテーマについて語り合いながら物語を作って上演する。公演事業とは違う創作過程で、見ていて刺激になる」と述べた。

また、提携公演の中に「フィーチャード・シアター」というものを新設し、若手のカンパニーとも積極的に手を組むことができるように、白井芸術監督の推薦するアーティストやカンパニーを招聘して公演をサポートしていく。2024年度は11月のスペースノットブランク、12月の贅沢貧乏がその対象となっている。

学芸事業では、地域社会の活性化を目指す「コミュニティプログラム」、地域社会の抱える課題解決に向けた様々な演劇の実践を行う「地域連携プログラム」、舞台芸術にかかわる専門家育成の場としてプログラムを実施する「専門家育成」など、多岐にわたる活動を例年に引き続き展開する。

また、世田谷パブリックシアターが今年1月に発表した「ハラスメント防止ガイドライン」について、白井は「劇場文化の中からハラスメントが絶対に起こってはならない。主催公演には必ずハラスメント講習を実施している。ハラスメント講習はイコールリスペクト講習でもある。お互いが尊重し合いながら創作を続けられる現場を作ること、ひいてはそれがいい作品を生み出す土壌になっていくと思う」と述べた。

世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ発表会

世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ発表会

質疑応答において、近年の物価高により影響を受けていることはあるかと問われた白井はまず「むちゃくちゃあります」と力強く答え、「コロナ禍の4年間で観客が演劇から離れているという危機感がまずある。物価高で美術の材料費も高騰していて、チケット代を上げざるを得なくなるが、そうすると若い観客にとって演劇が遠いものになってしまうという悪循環に陥っている。劇場文化が衰退しないように踏ん張るのも公共劇場の役目ではないかと思っている」と説明した。また、若い世代の劇場離れについては「非常に閉じた観客層になって来ていると危機感を持っている。自分の舞台に出演してくれた20代の若者たちに、先日世田谷パブリックシアターで上演した公演を見に来てもらったら、この劇場に来るのが初めてだという人がほとんどだったことにショックを受けた。これはなぜかということをみんなで考えなくてはならないと思う」と自身の経験も交えて語った。

世田谷パブリックシアターの芸術監督に就任した当初から白井は、自分の役割は未来の世代への橋渡しだと述べ、若い世代と積極的に交流し、彼らに機会を与えたいという意思を示してきた。就任3年目となる2024年度のラインアップ発表会も、その思いが強く感じられるものだった。若い世代への期待を口にし、実際に起用することは多くの演劇人にとって励みにもなるだろう。また、フィーチャード・シアターなど、新たなアーティストやカンパニーを起用する機会をより作り出そうとする姿勢も評価できる。それと並行して、長年世田谷パブリックシアターが取り組んできた海外招聘公演や学芸事業を継続して大切に守っていることも伝わってきた。この劇場がこれまで培ってきたものを生かしながら、新たな種を蒔いていこうとする白井芸術監督の方向性が、舞台芸術における希望としてさらに発展したものになっていくことを期待したい。

世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ発表会

世田谷パブリックシアター2024年度ラインアップ発表会

取材・文・撮影=久田絢子

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オーストリアの劇作家アルトゥル・シュニッツラーが1900年に発行し、当時のウィーン社会にセンセーションを巻き起こした問題作『輪舞』を、「現在」「東京」に翻案し、3月にPARCO劇場にて、4月に福岡、大阪、広島にて『東京輪舞(トウキョウロンド)』と題して上演する。台本は、劇団「範宙遊泳」を主宰し、2022年に『バナナの花は食べられる』で第66回岸田國士戯曲賞を受賞した山本卓卓。演出はプロデュース公演カンパニーKUNIOを主宰し、演出家・舞台美術家として活躍する杉原邦生が担う。出演はHey! Say! JUMPの髙木雄也と、清水くるみ。それぞれ5人の「男」と「女」、計10人の登場人物を演じ分け、10の情事の風景をリレー形式で描いていく。

葛藤の末に選択した「やる」という思い

同作で一人8役を演じる髙木が、大阪での取材会に登壇。作品への思いや、今後の展望などを語った。

まず、オファーを受けた当時の心境を次のように明かした。「正直、今の自分にできるのかという不安もあったのですが、作品自体は面白いので、どうしてもやりたいなという気持ちがありました。まだ実力が伴っていないという葛藤もすごくありましたが、悩んでいくうちに、「やらないで後悔するより、努力を選んだ方が今後の自分のためになる」と思って、出演させていただくことになりました」。

この取材会は読み合わせ稽古が始まったばかりのタイミングで開かれた。感触を尋ねると「セリフが多い(笑)!」と真っ先に回答。「でも、山本さんと杉原さん、清水さんとしゃべりながら読み合わせを進めていって、悩んでいるところをちょっとずつ解消しているので、まだ悩みもいろいろとありますが、楽しみも大きくなってきています」と和やかな笑みを見せた。

当初は5役だった髙木。ところが、この取材会で8役に増えたことが発表された。「Hey! Say! JUMPの東京ドームのコンサートに、杉原さんたちが観に来てくださったんです。コンサートが終わって挨拶をしたとき「あ、そういえば1役増えるかも」と言われてお帰りになりました(笑)。「え? 俺、1役増えんの?」と。で、蓋を開けたらもう2役、増えていました。自然と増えてましたね。でも、5役に挑戦するなら8役でも大丈夫という気持ちです」。

初めての杉原演出だ。「杉原さんが演出した舞台を観させていただいて、時代物の作品だったのですが、急にラップが出てきたりして。(時代背景を考えると)あり得ないけど、そのラップが作品にとっていい刺激になって、いろんな世代の方が楽しく観られる作品になっているのかなと思ったり。『東京輪舞』でも、どんなふうになっていくのかなという楽しみはありましたね。杉原さんは、すごく話しやすい方で、会話のキャッチボールもしてくれるので、話し合いながら自分の可能性を広げてもらえたらいいなと思います」。

ハイテンションの役は「自分の課題」

髙木雄也

髙木雄也

演じる年齢層も幅広い。それだけに、自身より年上の登場人物はより向き合いたいと気を引き締める。年齢に限らず、未知なるキャラクターはいるのだろうか。「「夫」か「インフルエンサー」ですね。そもそも僕は恋愛でしか知らないし結婚もしていないので、夫の気持ちが……。女性への一言も、付き合っているときと、結婚しているのとでは、言葉の重さも違ったりするので、難しいなと思っています。不倫とか、浮気とかの感情も、付き合っているときとどう違うのかもわからない。結婚している友達に聞きながら演じようかなと思います(笑)」。

インフルエンサーは、ハイテンションであることが「克服すべく課題」という。「まだ(キャラ設定がどうなるか)わかりませんが、今、作っている感じではちょっとテンション高めで。僕は普段から「イエーイ!」という方じゃなくて。以前『裏切りの街』に出演した時に、演出の三浦大輔さんから「(テンションを上げる演技が)すごく苦手だね」と言われていて、自分の課題でもあります。高いテンションを持続している姿は、自分とはちょっと違うなと思います」。

なお、杉原は根っからのお祭り男。「じゃあ、杉原さんをモデルにします(笑)。杉原さんを見ていたら、そのテンションも引き出せるかもしれません」。

相手役の清水とも初共演。「お会いする前に、舞台『月とシネマ』を観劇させていただきました。ステージの上でもすごく存在感があって、目が行く方。なにか、自然と追っかけちゃうなと思いました」と、その印象を語った。

目指すはリアリティを体現できる役者

稽古は始まったばかりだが、初の杉原演出かつ、一人8役で挑むこの会話劇は、自身のキャリアにどう影響を及ぼすと思うかと尋ねた。「まず8役をやるということは、これから先もなかなかないと思うので、それを経験できることが自分の中で大きいのかなと思います。これから先も人間のリアルさを演じていきたいと思っているので、この作品でちゃんとできたら、別の作品にもどんどんチャレンジしていけるようになるのかなと思いますし、リアリティを体現する役者になっていけたらと思います」。

大阪公演は4月12日(金)から15日(月)まで、森ノ宮ピロティホールでおこなわれる。最後に、改めて意気込みを聞いた。「『東京輪舞』は東京のリアルとエロスを描いた、10の情事の前後の物語ですが、劇中に情事の描写は出てきません。「情事」と聞いてドキドキしているファンの方とか、「わ~、観たくないよ~」というファンの方の言葉も届いていますが、そういう描写はありません。でも、だからこそ、言葉がすごく大事になってくる。(セリフをどう受け止めるかは)ご自身の捉え方でいいので、人間のリアルな会話劇を楽しんでください」。

取材・文=Iwamoto.K 撮影=川井美波(SPICE編集)

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2024年3月3日(日)~3月26日(火)歌舞伎座にて『三月大歌舞伎』が行われる。昼の部にて四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言として『傾城道成寺』が上演されるが、本日2月21日、四世中村雀右衛門の十三回忌追善法要が青山霊園で行われた。

四世雀右衛門の墓前に、四世雀右衛門の長男である大谷友右衛門、次男の当代・中村雀右衛門、四世雀右衛門の孫で友右衛門長男の大谷廣太郎、次男の大谷廣松や一門が出席し、故人を偲んだ。

■十三回忌を迎えた四世雀右衛門

四世雀右衛門の墓前で行われた本日の法要はあいにくの雨となったが、平成 24(2012)年2月23日に逝去した父・雀右衛門の葬儀を思い出しながら友右衛門が「12年前の父の葬儀は前日夜からの大雪でしたからね」と笑いながら話すと、集まった面々は往時を偲び和やかな雰囲気になった。

四世中村雀右衛門

四世中村雀右衛門

法要を終えて友右衛門は「早いもので十三回忌ですが、時々、父はまだまだ喋っているんじゃないかなと思う感覚もありますので、それほど遠くないように感じますね」と述べると、雀右衛門は「本当に12年というものは、あっという間に過ぎてしまったなという気がしております。廣太郎くん、廣松くんがこうして成長してきていますので、きっとお墓の中の父も喜んでいるんじゃないかと思います」と亡き父のことを思い出しながら語った。

祖父の四世雀右衛門が亡くなったときは共にまだ二十代だった廣太郎と廣松の兄弟。廣太郎は「叔父さんは成長していると言ってくれましたが、まだまだ全然そんなことはないので……。でも、こんなことを言うとお祖父ちゃんに怒られてしまうので、まずは一つひとつしっかりと芝居に向き合ってがんばっていきたいなと思っています」と言うと、廣松からは「お祖父ちゃんとは色々と話したかったこともありましたが、今となってはもう話せません。その分、舞台を通して、お祖父ちゃんが残してくれたものを大事にしていきたいと思います」と言葉に気持ちを込めた。

(左より)大谷廣松、大谷廣太郎、中村雀右衛門、大谷友右衛門

(左より)大谷廣松、大谷廣太郎、中村雀右衛門、大谷友右衛門

■追善狂言『傾城道成寺』に向けて

「道成寺物」の上演をライフワークとした四世雀右衛門。今回、十三回忌追善として上演される『傾城道成寺』は、昭和55(1980)年から平成4(1992)年まで毎年開催された自主公演『雀右衛門の会』でも上演された古風で雅やかな舞踊。『傾城道成寺』が上演された歌舞伎座での自主公演にも兄弟揃って出演している友右衛門は「父もよくさせていただいていた狂言を、今回は父の追善で雀右衛門がするということが、とても嬉しいです」と気持ちを伝えると、雀右衛門は「兄のところと、私のところが一丸となって父が残した大事な演目を、父の舞台をご覧いただいていた方にも、あ、そうだったなと思い出していただけるような舞台を勤めることができれば」と意気込んだ。

歌舞伎座『傾城道成寺』特別ビジュアル

歌舞伎座『傾城道成寺』特別ビジュアル

四世雀右衛門の七回忌追善狂言『男女道成寺』にも出演した廣太郎の「最近はこの四人で揃うことがなかなかありませんでしたので、そのことも楽しみです」という言葉に続けて、廣松は「お祖父ちゃんが大事にしていた演目を叔父さんがされて、そこに出演させていただけること、少しでも十三回忌の節目に力を添えられるような存在になれたのかなと思ってがんばりたい」と、追善の舞台に向け、改めて気を引き締めた。

(左より)大谷廣松、大谷廣太郎、中村雀右衛門、大谷友右衛門

(左より)大谷廣松、大谷廣太郎、中村雀右衛門、大谷友右衛門

 
四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言『傾城道成寺』(あらすじ・解説)
紀伊国の古刹、道成寺。白無垢姿の傾城清川が忽然と現れると、僧の安珍と出会います。
安珍は実は平維盛の世を忍ぶ仮の姿で、二人はかつての恋人同士。清川は恋の妄執に苦しむと……。
紀州道成寺に伝わる安珍と清姫の伝説をもとにした「道成寺物」の中でも、『京鹿子娘道成寺』とは異なり、清姫の霊が傾城として登場する趣向の作品。古風で雅やかな舞踊をご堪能いただきます。この度は名女方の四世中村雀右衛門十三回忌追善狂言として、四世雀右衛門の次男で、父の名跡を五代目として継いだ当代・中村雀右衛門の傾城清川、長男・大谷友右衛門の妙碩、尾上松緑の安珍、四世雀右衛門の孫で友右衛門の長男・廣太郎の難波経胤、友右衛門の次男・廣松の真名辺三郎、そして尾上菊五郎の尊秀という配役、ゆかりの演目で名優を偲びます。

 

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2024年3月21日(木)~24日(日)東京・IMM THEATER、3月29日(金)~31日(日)大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール、4月4日(木)~7日(日)までIMM THEATER(東京凱旋)にて、舞台『モノノ怪~座敷童子~』が上演される。この度、新たなビジュアルが公開された。

『モノノ怪』は、2007年にフジテレビの深夜アニメ枠「ノイタミナ」にて放送され、「ノイタミナ」15周年の企画として行われたファン投票で、数十作品の中で上位となった人気作。2022年には、『モノノ怪』の放送から15周年の記念企画のひとつとして、大奥を舞台とした、完全新作の劇場版プロジェクトが発表。2024年夏、劇場版ならではのスケールで“完全新作”の『モノノ怪』が誕生する。

そして本公演はアニメ『モノノ怪』の舞台化第2弾となり、2007年にアニメ放送された『モノノ怪』の一幕目となるエピソード「座敷童子」を描く。

出演者は、謎の男・薬売りを演じる新木宏典のほか、西銘 俊・白又 敦(Wキャスト)、大平峻也、岡田夢以、新原ミナミ、加藤里保菜、中村哲人、田上真里奈、西 洋亮、高山孟久、井筒しま、波多野比奈、藤原ひとみ、長島静莉奈。

公開された新規ビジュアルには新木宏典扮する薬売りの姿。

そして、舞台『モノノ怪~座敷童子~』チケット特典が「ランダムアクリルスタンド(全3種)」に決定した。絵柄は主演・新木宏典演じる薬売り3種。第1弾で発売したジオラマと同じサイズとなっており、前回来場した方にも嬉しい仕様となっている。

チケット特典 ランダムアクスタ(3種)        (C)舞台『モノノ怪~座敷童子~』製作委員会

チケット特典 ランダムアクスタ(3種)        (C)舞台『モノノ怪~座敷童子~』製作委員会

物語を通じて現れる謎に満ちた薬売りの様々な一面を劇場で体験しよう。

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ウエノコウジのバースデーライブ『ウエノコウジ56歳誕生祭~3x3x3~』京都公演の配信が決定した。

2024年3月27日(水)に東京・新代田FEVER、3月30日(土)に京都磔磔の2会場で開催される同ライブ。東京・京都公演ともに有観客チケットを発売したところ両会場ともに即時完売につき、今回京都公演の配信が決定した。配信チケットは、2月24日(土)10:00からイープラスにて販売開始となる。

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歌手、声優の佐々木李子が、2024年4月より放送がスタートするTVアニメ『リンカイ!』オープニング主題歌「Windshifter」でバンダイナムコミュージックライブの音楽レーベル“Lantis (ランティス)”からデビューすることが発表された。佐々木李子からのコメントも届いている。

<佐々木李子コメント>
ランティスデビュー、本当に嬉しいです!! 
新たな佐々木李子として、気持ちも髪色も明るく、気合十分で音楽を届けていきます!
TVアニメ『リンカイ!』のオープニングを彩る「Windshifter」。
今、変わりたいと思った瞬間から未来は変えられる。
風向きすらも自分の意思のままにシフトしていく。
前向きで熱い想いを、夢に向かって加速していくようなイメージで歌いました!
アニメの物語と一緒にお楽しみください!

TVアニメ『リンカイ!』は、MIXI_ANIMEオリジナルコンテンツ第2弾となる、女子競輪キャラクターコンテンツプロジェクト『リンカイ!Project』の一環として制作されるTVアニメ。
『リンカイ!Project』は女子競輪を題材とし、全国の競輪場をホームバンクとする女子競輪選手のキャラクターを制作するなど、「競輪」の魅力を発信し、全国の競輪場を盛り上げようというプロジェクト。
TVアニメ『リンカイ!』では「女子競輪」の世界を舞台に、主人公・伊東泉や運命のライバル・平塚ナナらが競輪を通して成長していく姿が描かれる。佐々木自身も現役女王キャラクター・久留米美虹役としても出演している。

佐々木李子「Windshifter」アーティスト盤

佐々木李子「Windshifter」アーティスト盤

佐々木李子「Windshifter」アニメ盤 (C)RINKAI League Committee(C)RINKAI Project

佐々木李子「Windshifter」アニメ盤 (C)RINKAI League Committee(C)RINKAI Project

TVアニメ『リンカイ!』のオープニングを彩る「Windshifter」は、前向きに上向きにチャレンジし続け夢に向かって加速していくような疾走感あふれる一曲。もがき苦しみながらも“どんな向かい風でも突き抜けてゆく”、新しい一歩を踏み出し、夢に向かって一生懸命な全ての人の背中を押す応援ソングにもなっている。アーティスト盤、アニメ盤の2形態で発売される。

「Windshifter」は4月10日(水)に先行配信、そしてパッケージ盤は5月22日(水) に発売。アニメの放送と共に楽しみに待ちたい。

 

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2024年8月17日(土)・18(日)にZOZOマリンスタジアム&幕張メッセ、万博記念公園にて開催される『SUMMER SONIC 2024』の第1弾出演アーティストが発表された。

イタリアから彗星の如く登場し、鮮烈にロックシーンの新たなスターに駆け上ったマネスキンが洋楽アーティストとして、米英以外から初のヘッドライナーに決定。そして昨年行われたNEX_FESTでフェスの概念を見事に更新した新世代メタル/ハードコアの最高峰ブリング・ミー・ザ・ホライズンが今年のサマソニのメインを飾る。

さらに、ジャンルの垣根を超えたビッグネームも名を連ねている。多彩な表現力で多くのファンを魅了するノルウェー出身の新世代歌姫オーロラ、ダンスシーンの最重要プロデューサー、ディプロ率いるメジャー・レイザー(東京のみ)、大ヒット・シングル「アイ・エイント・ウォーリード」他世界的ヒットを連発、ライアン・テダー率いるワンリパブリック、今年新作をリリースするダンス/エレクトロシーンのレジェンドアンダーワールド(大阪のみ)が決定。

アダム、ジャック、ライアン・メットの兄弟で構成されるポップロック・バンド AJR、ネオアコ〜インディ・ファンを魅了し続けるグラスゴーの至宝ベル・アンド・セバスチャン、テイラー・スウィフト他数々の世界的ヒット曲を手がけるプロデューサーであるジャック・アントノフのソロプロジェクト ブリーチャーズ、インスタフォロワー1800万人を超えるタイの国⺠的俳優/アーティストのブライト、 “ロックの未来”と評され全ロックファンを魅了し続けるグレタ・ヴァン・フリート、イギリス出身の注目ポップアーティスト ヘンリー・ムーディ。

あらゆる音楽を追求し、ライブでは観るもの全てを虜にするマルチアーティスト ジョン・バティステ、先日のグラミー賞最優秀トラディショナル・ポップ・ヴォーカル・アルバム賞を受賞したアイスランド出身の第注目SSWレイヴェイ、英ブライトン出身のロックバンド ラヴジョイ、新世代のPOPアイコン マディソン・ビアー、着実に成⻑しUKロックシーンの中枢を担う存在となったナッシング・バット・シーヴス、『BBC Sound of 2024』にも選出されたUKネオ・ソウル/R&Bシーンの若き才能オリビア・ディーン、UKガラージ/2ステップやドラムンベースといった90年代ダンスシーンを最新のサウンドにアップデートさせるトレンドセッター ピンクパンサレス、米テネシー州ナッシュビル出身若干20歳のSSWステファン・サンチェス、世界的大ヒットソング「ウォーター」で一躍スターに輝いた南アフリカの新星歌姫タイラ、独自サウンドを展開しながら大胆に音楽性をスケールアップさせてきた異形のロックスター イヴ・トゥモアの22組が決定。

チケット代が割引で購入できるクリエイティブマン会員先行は2月22日(木)から、チケットキャッシュバックなどお得な特典満載のオフィシャル先行は3月1日(金)からとなる。

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江戸時代から続く糸あやつり人形芝居を継承する劇団のひとつ、糸あやつり人形 一糸座(いっしざ)。人形と人形遣いと生身の人間の俳優が同じ舞台にあがり、人形と人間が共演する。その一糸座が新作『崩壊~白鯨ヲ追ウ夢~』を、2024年2月28日(水)~3月3日(日)に、東京は座・高円寺1にて上演する。

作・演出に東憲司(劇団桟敷童子)を迎え、松本紀保、原田大二郎、藤吉久美子が出演する他、劇団桟敷童子から鈴木めぐみ、稲葉能敬、川原洋子もキャスティングされている。人形遣いを担うのはもちろん一糸座の面々~江戸伝内、結城一糸、結城民子、結城まりな、眞野トウヨウ、土屋渚紗だ。

2月28日の開幕に先駆け、一糸座のアトリエ(稽古場)で東、松本、原田、藤吉、そして伝内と一糸に話を聞いた。稽古場写真とともにお届けする。

 

■“崩壊と生成”のテーマに『白鯨』で応える

——今回の企画の経緯をお聞かせください。

江戸伝内 東さんのことは、かねてより存じてはいたのですが、5年ぐらい前に、とある打ち上げの席で照明家の沖野隆一さんが、ずっと東さんの話をされていたのです(笑)。その熱量があまりにも高かったので、「これはもう、ぜひ一度」と思い、東さんに連絡を差し上げました。

—— 東さんの作・演出に期待されることは? 

伝内 今回「崩壊と生成」をテーマに作劇して欲しい、とお願いしました。崩壊が始まると終わりがくる。そこから新しい生成の動きが出て、変化し、また崩壊してまた生成して。新しいものを生み出すには必ず一つの崩壊がある。そういったテーマで。そして人間と人形で、場面を分けることなく一緒に舞台に立つように、とも。そんな芝居を、東さんがどう組み立ててくれるのか、とても楽しみにしています。あとは、なるたけこちらから要求せず、東さんにお任せしています。

糸あやつり人形 一糸座 江戸伝内

糸あやつり人形 一糸座 江戸伝内

—— 東さんは伝内さんからのオファーをどのように受けとめましたか?

東憲司 人形芝居は初めてですから、話を聞いて、単純にものすごく嬉しかったです。それから、一糸座の皆さんとお話をするために、この地下のアトリエに来ました。ここで皆さんのお人柄に触れると共に、あれらの人形を見せていただいたら、やはり血潮が騒ぐというか、原風景を垣間見た思いがしました。一糸座の皆さんは、今も人形を作りながら稽古をされています。職人技をそばで見せていただき、それだけでも感動です。「ああ、絶対にやりたい」と思いました。

—— 本作では三つの世界線が交錯します。第一に、精神病院。その登場人物たちは生身の俳優の皆さんが担います。第二に、ハーマン・メルヴィルの小説『白鯨』の世界。ここは一糸座の人形たちが勤めますね。そして第三に、脱走少年兵たちの世界があって、そこは人形と俳優の混成チームなんですね。それらの中で特に気になるのは、『白鯨』から想を得ている点です。

伝内 当初はフィッツジェラルドの短編小説『崩壊』を題材にしていただくことも考えました。作中で奥さんが精神を病むのですが、そこから「崩壊と生成」というテーマに行き着いて……。

—— それに対して、東さんは『白鯨』で応えようと?

東 そうです。伝内さんから「崩壊とか狂気とか、そのような世界を」ときっかけをいただいたのですが、僕は『白鯨』のエイハブ船長の狂気が好きだったので、結局そこに繋げました。『白鯨』はダイナミックな物語ですし、エイハブ船長は片脚を失っています。生身の人間では、そうそうできない設定ですが、船長の片脚も荒々しい海やダイナミックな場面も、人形とならばできると思いました。

捕鯨船の船長エイハブは、モービー・ディックという名の白鯨を追いかけています。

捕鯨船の船長エイハブは、モービー・ディックという名の白鯨を追いかけています。

—— 『白鯨』には昔から愛着があったのでしょうか。

東 ものすごくありました。ただ、小説は中学の頃に読もうとして全然読めなくて(笑)。代わりにグレゴリー・ペックの主演した、ジョン・ヒューストン監督の映画を見ました。今あれを見ると、「鯨がちゃちいな」なんて思うのですが、当時はものすごく興奮したことを覚えています。

—— 脱走少年兵たち、という存在も気になります。やはり今なお世界各地で続く“紛争”や“戦争”という現代的な問題を提起する設定なのでしょうか。

東 こういう時代だから、というのはありました。いただいたテーマから精神を病んだ女を出そう、と決めた時に、帰らぬ息子を待ってる話にしようと思ったので。

東憲司(作・演出。劇団桟敷童子主宰)

東憲司(作・演出。劇団桟敷童子主宰)

 

■東憲司ワールドの魅力

—— 松本紀保さん、原田大二郎さん、藤吉久美子さんの皆さんは、それぞれ劇団桟敷童子への出演経験がありますが、同じ舞台で一堂に会するのはこれが初めてですね。

東 はい。今回、まず狂気を演じる役で思い浮かんだのが(松本)紀保さんで。

松本紀保 ありがとうございます(笑)。

東 白鯨を思わせる大男に原田さん。そして優しくたおやかな藤吉さん。

原田大二郎 ありがとうございます(笑)。

藤吉久美子 ありがとうございます(笑)。

東 紀保さんと原田さんは、人形とも相性がいいんじゃないかと僕が思い込んでいて。そして藤吉さんには、俳優として演じるだけでなく、人形も遣っていただきます。

—— 結果的に、とても贅沢な顔ぶれとなりました。

東 そうなんです。

伝内 実現して本当に良かった。幸せです。

—— 松本さん、原田さん、藤吉さんは、東さんの作品とどのようにして出会ったのでしょうか。そして、どのような印象を抱かれましたか。

松本 東さんと初めてご一緒したのは、椿組の新宿花園神社での野外劇『廃墟の鯨』(2014年。作・演出:東憲司)でした。それがご縁で桟敷童子にも二回出させていただきました(2016年『モグラ…月夜跡隠し伝…』、2018年『その恋、覚え無し』)。東さんの作品は、まずダイナミックな美術と演出による世界観があります。その世界観の中に、日本の懐かしい風景を思わせるところがあったり、登場人物の交わす言葉に日本語がもつ繊細なやさしさが感じられます。そのダイナミックさと繊細さにいつも惹かれています。

松本紀保

松本紀保

原田 僕は、桟敷童子の俳優さんと共演する機会があり、東さんがその公演を見にいらして。そこから僕に「今度ちょっと一緒に」と声をかけていただきました。僕はそれ以前から桟敷童子を観ていて、すっかり惹かれていましたから、二つ返事でお引き受けしました。これまで出演した桟敷童子の公演は『翼の卵』(2018年)、『骨ノ憂鬱』(2019年)、『花トナレ』(2020年)で、今回が4作目になります。もう“自分は東組だ”と思っています。

原田大二郎

原田大二郎

今回も稽古期間から毎日が楽しいです。ずっと稽古をしていたいくらい(笑)。東さんが求めるものはとても高いところにあり、それに向かって皆がものすごく拘って作っていく。それが最終的にダイナミックなジャンプをみせる。この座組に身を投じられるのは幸せだなと思いました。今も、毎日幸せに過ごしております。

(しばしば顔をおおう、東さん)

東 さっきから恥ずかしくて。(一同、笑)

向かって右が東さん。

向かって右が東さん。

——藤吉さんは、俳優として紀保さんと同じ病院の入院患者の役。さらに人形遣いとしても参加されるのですね。

藤吉 東さんとは舞台『めんたいぴりり~未来永劫編』(2019年。原案:川原健、脚本・演出:東憲司)で初めてご一緒させていただきました。それ以来、桟敷童子を観にいかせていただいて、私から「出たい出たい」と押しかけたのがきっかけで、『花トナレ』(2020年)、『老いた蛙は海を目指す』(2022年)、『空ヲ喰ラウ』(2023年)に出演させていただき、今に至ります。

——東さんも藤吉さんも、同じ福岡県のご出身ですしね。

藤吉 そうなんです。また顔を隠されてしまうかもしれませんが(笑)、東さんは本当にピュアな方なんですよね。だから一糸座さんのお人形さんと、恐ろしくフィットすると思います。東さんのお芝居って心の琴線に……ズバン!ってくるんですよね。客席でみるとウッて声が出るくらい泣いてしまう。自分が出演している公演の時でさえ、みんなの声や音楽とかがバーンってかかった時には、舞台袖でウゥ……ってやっぱり泣いてしまうんです。今までそんなに経験したことがなかったのに。毎回です!

藤吉久美子

藤吉久美子

 

■人形と人間

————“東組”の皆さんは一糸座に参加される前は、人形劇にどのようなイメージをおもちでしたか?

東 僕の中では、幼少の頃にみたNHKの『八犬伝』。あとは結城座(伝内は、九代目結城孫三郎の孫。一糸座のルーツは結城座)を何度か見たことがありましたので、いいなあと憧れていました。

原田 僕はこのお話をいただいた後、一糸座さんの『猟師グラフス』(シアタートラム)を見たのですが……すごいのよ。このくらいの小さく見えた人形が、ものすごく大きくみえたりするんですよね。

——寸法の見え方が錯乱してくるような感覚がありますよね。

原田 ええ。それまで知っていた人形劇といえば、紙人形の劇や影絵のイメージでした。一糸座の糸あやつりはまったく違うもので、そこに命が吹き込まれてきます。すごいなと思いました。

松本 私の中では、やはり子どもの頃にNHKなどで見ていた人形劇が最初のイメージです。ドリフターズの『飛べ!孫悟空』も、よく見ていたので印象に残っています(笑)。一糸座さんのお芝居は、『少女仮面』や『猟師グラフス』を拝見しました。生身の俳優、人形、その人形を操る人形遣いの方がいて、それぞれが三つの世界線にいながら、ひとつになる瞬間もある。ある時は俳優さんを見て、ある時は人形を見て、ある時は人形遣いを見て。自分の視点がぐるぐると……あの感覚は普通の舞台では感じたことのないもので衝撃を受けました。今回、自分もその世界を体感できるのがとても嬉しくて。稽古を重ねる中で、五感以外の感覚が生まれてくるような感覚があります。日々新鮮で、本当に幸せな時間を過ごさていただいています。

————藤吉さんは今回、人形遣いにも挑戦されます。

藤吉 お人形を操らせていただくのは初めてで、最初は不安の塊でした。お人形を持っただけで気が動転して台詞がでてこなくなるんじゃないかと心配で。でも一糸さんたちが、惜しげもなく技を教えてくださるんです。それが本当にありがたくて。もちろん技量はまだまだですが、毎日触わるうちに、ふと自分自身と同じ感覚で動けたと思える瞬間があって。それがすごく幸せなんです。

脱走少年兵の一人として糸あやつりに参加する藤吉(左端)

脱走少年兵の一人として糸あやつりに参加する藤吉(左端)

伝内 藤吉さんは、人形を毎日持ち帰りご自宅でも練習されていましたね。すごいエネルギーです。

藤吉 どこかお人形に引っぱってもらって演技してるような感覚があります。この公演が終わってしまったら、どうやって生きていけばいいの!? ……なんて言ったら甘ったれですね(笑)。

東 このまま一糸座さんの一員にしてもらえば?(笑)

ご自宅では、夫・太川陽介さんも人形を遣ってみたのだそう。「私よりも上手いんです!」と藤吉さんは悔しそうに笑っていました。

ご自宅では、夫・太川陽介さんも人形を遣ってみたのだそう。「私よりも上手いんです!」と藤吉さんは悔しそうに笑っていました。

 

■人形と人形遣いがひとつになっていく

——『白鯨』の世界を担うのが一糸座の皆さんです。

伝内 大変ですよね。原作本を読み、映画を見て、デザイン画をもとに、主に3人が人形制作をして。

藤吉 一糸さんに「こんな動きがしたいんです」と相談すると、すぐに糸をシュシュってつけてくださって、スッとひとつの糸を引くとファッとその形になるんです。もう、神? みたいな(笑)。

結城一糸 いやいやいや(笑)。

糸あやつり人形 一糸座 四代目 結城一糸

糸あやつり人形 一糸座 四代目 結城一糸

—— 一糸さんは『白鯨』に登場する船員スターバックの人形を担当されます。

一糸 これまで桟敷童子さんの芝居は何本か観させていただきましたが、世界観が独特でダイナミックで感動しました。そして、今回自分たちの劇団を演出していただくことになり、また素晴らしい役者の方々にも出演していただいて、一緒にひとつの舞台を作れる。これは本当にありがたいことです。実力がまだまだなので、皆さんに追いつけるようがんばります。

結城一糸

結城一糸

伝内 僕らみんな、大変刺激になっています。

東 それは、こちらもです。

—— 一糸座さんは、これまでに数々の演出家を外部から迎えて公演をされています。今回ならではの刺激はありますか?

伝内 東さんはエネルギーの塊なんですよね。それでいて非常に繊細なところがあって。演出家の方々それぞれに特色がありますが、とりわけ東さんは人形とピタッと合うな、というのが今の時点での印象です。

演出をつける東憲司

演出をつける東憲司

—— 演出は激しい?

伝内 激しい(笑)。

原田 このような場で接していると東さんはやさしい人だけれど、演出の現場でその口から出てくるものは激しい。それを芝居で表そうとすると、ものすごく激しい世界になる(笑)。でも、それを何とか表現しよう、と頑張るのが楽しいんですよね。(一同、うなづく)

東さんの演出は具体的で明確。緻密に場面を仕上げていきます。

東さんの演出は具体的で明確。緻密に場面を仕上げていきます。

原田 一糸座の皆さんは、いつも台詞を言いながら人形の操作をなさるんですよね?

一糸 基本的にそうです。

東 昔は人形遣いと台詞が、分かれていたんですか?

伝内 はい。もともとは江戸時代に、人形浄瑠璃と同じように、すべての台詞を義太夫の太夫さんがすべて語っていました。結城座の糸あやつりで人形遣いが台詞も担うようになったのは、明治期からのことです。

一同 なるほど~!

—— 実際、人形と芝居をしてみていかがですか?

藤吉 自分の芝居がどう見えているのか、客席から観たい!ってすごく思います。今までの自分は、舞台で無駄なことばかりしていた、と思うようになりました。人形を持って台詞をいうと、シンプルにスッと台詞が出るんです。今までにない感覚で勉強になります。

伝内 自分の役や演技を客観視できるのでしょうね。糸の分だけ物理的に距離ができますから。

松本 「客席からみたい」という気持ちは分かります。私も人形と対峙していると、自分の視線が今どこにいっているのか、どう見えているのかが気になります。

藤吉 私のお人形が紀保さんの横に行くところがありますよね。紀保さんは、人形に向かって本当に喋ってくださるんです。こんなに人形に喋れる人がいるなんて思いませんでした。なんてピュアな人なんだろう。紀保さんにしかできない役だって(人形を操る)上の方から思っています!(笑)

松本 (恥ずかしそうに消え入るような声で)ありがとうございます……。先日、お芝居の中でふと人形の手を握ってしまったんですよね。アッ! と思ったら、東さんも「(触っても)大丈夫でしたか?」と人形を心配してくださって。ふだんのお芝居だったら他の俳優さんを雑に触れる……というわけでもないのですが(笑)、相手が人形だと、より繊細に「触れる」ことを意識するようになりました。それは目線にも言えることで。何気なくしていたことに、フッと立ち止まるような感覚は今回ならではです。

—— 東さんは生身の人間、人形、およびその人形遣いに対して演出をつけるわけですが、いつもと違う感覚はありますか?

東 全然違います。人形と人形遣いさんがいるから二人分。それがやがて、ひとつになっていくのですが、容積は人間二人分とはまた違います。そこにまだ戸惑っていて、おそらく今後も戸惑い続けていくのだと思うんです。あと僕は個人的に、人形遣いさんの仕草も絵になると思っていて。すごいエネルギーを感じるし、それが不思議であり、この一糸座の魅力でもあると感じています。すごいですよ。だって、人形一体につき、糸は15本くらいあるんですよね?

一糸 そうですね、最低でも。

東 こんなに糸が多いとは思いませんでした。よく絡まないな、と思いますし、どういう神経をしているのだろう、って思います。片手で生きた動きをする、芸術というか職人というか。

藤吉 人間よりも何かすごい表現が行われているような気さえしますよね。ま、私は無茶苦茶、絡まっているんですが。

一同 (笑)

■想像を絶するパノラマに「覚悟して」

—— ご自身の役を演じる時に意識されることをお聞かせください。

松本 私は『白鯨』の物語に取り憑かれ、精神が崩壊してしまった女性の役です。でも異常性を表現するのではなく、なぜこうなってしまったのか。その本当の意味、彼女の生き方を追求したいです。エイハブ船長も白鯨を追いかけて狂気になっていきましたが、『白鯨』という作品には、狂気に至る執念や思いが描かれています。そこに壮大な自分の正義があり、それを掴もうとし続けているドラマがありました。私もそういうものを目指して『白鯨』の世界、「崩壊と生成」の世界を膨らませていきたいと思っています。

—— 原田さんは、その精神病院の医師役です。

原田 昔、友人の精神科医から聞いたんです。「患者と向き合う時、まず最初に自分がノイローゼになっていくんだよ」と。そうでなければ患者の話は聞けない。自分がノイローゼになるところから治療が始まるんだって。僕の役も、おそらくそうだと思うんです。狂気と正気の間は、ひとりの人間の中でも行ったり来たりができるもの。それが普通なんじゃないかなというのが、今のところの役作りの基本指針です。

—— 稽古が終わっても、狂気の側に行ったきりのこともありますか。

原田 いや。僕は酒を飲めば、正気に戻るタイプ。「あれ? 世の中ってそんなに面白くないや」って初めて気が付くような(笑)。

藤吉 役者の仕事は、ちょっとおかしくないとできないですよね(笑)。

原田 本当にそう。たとえばすごく残酷な人間の役だとして、その人間の中に「いま芝居だから」と普通に受け止めて入っていけるわけじゃない? あの感覚はおそらく……間違っている(一同笑)。でも楽しい。本当に楽しいです。

—— 藤吉さんは、ご自身の役に向けていかがでしょうか。

藤吉 脱走少年兵という言葉を、私は今回はじめて知りました。戦争から逃げ出したい子供がいて、でも逃げ出してしまったら脱走兵となるので親の元には帰れなくなる。現実で戦争は起こっているけれど、その最中にも『白鯨』の世界に入ることで一瞬逃避するような世界観を、今回いただいた二つの役でおみせしたいです。今の私がその少年を演じられるのは、生身ではなく、お人形だから。そういう作り方も含めて、本当にすごいお芝居だなと感動しています。

—— 最後に読者の皆さんにメッセージをお願いします。

東 大仕掛けと人形のすごさ。人形と人間のぶつかり合うのをみていただけたらと思います。

松本 ダイナミックかつ繊細さもあって、最後に大仕掛けが待っている。どのシーンを切り取っても見どころに溢れ、「見る」以外の感覚も味わえる世界になると思います。ぜひ劇場で、それを五感で楽しんでいただきたいです。願わくば五感以上の新たな感覚が、皆さんの中に生まれるのを感じていただけたら、嬉しいです。

原田 楽しんでいただければ、それで満足。感動の部分をかなりの分量で背負っていると思っています。本番に向けて、そこはまだまだやっていきたい。そして東さんの舞台ですから。想像を絶するパノラマが展開されます。覚悟してお越しください。

藤吉 ママ友がいっぱい観にきてくれるのですが、子どもを持つお母さんは本当に号泣なんじゃないかな。見たことのない世界になるんじゃないでしょうか。ぜひ2回でも3回でも見に来ていただきたいです。

伝内 なにしろ面白いです。面白くて感動してもらえる作品だと思います。素直にみていただければ、それでもう十分です。

一糸 とても楽しい作品になりますので、ぜひご来場ください。精一杯頑張ります!

糸あやつり人形一糸座『崩壊 白鯨ヲ追ウ夢』は、座・高円寺1にて2024年2月28日(水)から3月3日(日)まで。

聞き手:安藤光夫(SPICE)  取材・文・写真=塚田史香

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TEAM NACSの森崎博之・安田顕・戸次重幸・大泉洋・音尾琢真、それぞれが表現したい世界を形にするソロプロジェクト「5D2-FIVE DIMENSIONS Ⅱ-(ファイブディメンションズツー)」。各人各様の演目をおくる、本企画の第4弾を務める音尾琢真の公演詳細が発表された。

『The silence of Takuma Otoo 【This is Who I am】』と題した同公演は、音尾がバンドとともに全国6都市を巡るライブハウスツアー。これまでの活動で自身が手がけてきた楽曲の数々をバンドアレンジで惜しみなく披露する。

解禁された、ギターを爪弾く音尾の姿が凛々しいメインビジュアルは、俳優村上淳の撮り下ろし。兼ねてより親交のあった二人だが、音尾たってのラブコールにより今回のコラボが実現した。

『The silence of Takuma Otoo 【This is Who I am】』は、5月11日(土)の横浜ベイホールを皮切りに、大阪、福岡、仙台、札幌を巡り、ファイナルは東京・新宿ReNYで開催。

なお、オフィスキュー 公式YouTubeチャンネルでは、「OTOO TV」と題し、今作についての音尾のインタビューを随時公開中。

音尾琢真 コメント

音尾琢真

音尾琢真

なかなか詳細をお知らせできなくてすみません。
何をするかと言うとまぁ、ギターを持って歌うんだと思います。。。
ファンの皆様に楽しんでもらいたいと思いつつも、自分の好きな事を好きなようにしている時間になると思います。詳細はOTOOTVをチェックし続けて下さい。

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2024年4月1日(月)~7日(日)新宿シアタートップスにて、一色洋平×小沢道成の二人芝居『漸近線、重なれ』が上演される。この度、本作の創作活動の一環として稽古場にてワークインプログレスを開催することが決定した。

「漸近線(ぜんきんせん)」は数学用語で、グラフ上に曲線があった時、その曲線と限りなく距離が近づくが、決して交わらない直線のこと。本作では、住人たちが時と共に入れ替わっていくアパートを舞台に、毎年訪れる4月を数年に渡って描く。人々は何を機にそこで暮らし、離れ、そして離れた後そこには何が蓄積されていくのか。年月を積み重ねるからこそ獲得できるもの・失うものたちを、温かみとエンターテインメント性を共存させる演出、そして小劇場空間にしてダイナミックな舞台美術で魅了する。

一色洋平

一色洋平

小沢道成

小沢道成

そして今回の企画のコンセプトのひとつとして、人の体温を感じられる小空間で満足度の高い作品づくりを行うことを目標としており、コロナ禍で失った、観客とふれあい対話する機会を取り戻すために稽古場でのワークインプログレスを行うとのこと。稽古場で二人の創作過程を見学してもらい、参加者を交えてディスカッションを行うことで、多様な考え方を作品に反映できる時間をつくる。

演劇に携わっている方、観るのが好きな方、様々なモチベーションの方に参加をして欲しいそうなので、この機会を逃さないでおこう。

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中川晃教、藤岡正明、東啓介、大山真志。ミュージカル『ジャージー・ボーイズ』で共演したことから結成された4人組・JBBが、初のコンサートツアーの開催を発表した。ミュージカル界のスターたちが結成したコーラスグループということで注目度は高く、この日の記者会見は大盛況。4人の息の合ったトークで大いに盛り上がった。

JBB結成のきっかけは、1960年代を中心にアメリカで人気を博したコーラスグループ、フォー・シーズンズの実話に基づくミュージカル『ジャージー・ボーイズ』の共演者として、4人が顔を合わせたところにさかのぼる。結成のきっかけについて、中川は「舞台の袖で“こんなことができたらいいね”と語っていた夢が現実になった」と語り、藤岡は「あの時は自分たちへのご褒美のつもりだったんですけど、終わってみたら“これが始まりなんだな”と思った」と、昨年夏に中野サンプラザで開催されたデビューコンサートについて振り返る。中川と藤岡は同い年、キャリア豊富な年長組としてグループを引っ張る役割を分け合う、頼もしい存在だ。

東が「(中川がグループ結成を言い出した時に)僕はその場にいなかったのであとで聞いた」と発言すると、すかさず藤岡が「別にやりたいわけじゃなかったんだよね?」と突っ込み、東が慌てて「違いますよ!」と返す。グループ最年少の東は自由奔放、みんなに愛される末っ子キャラ。そして年齢的に真ん中の大山はグループの潤滑剤、「またこうやって集まって、このメンバーでいろんな場所に行けることを、本当に楽しみにしています」と話をまとめる役割だ。トークを聞いているだけでも4人が一つのハーモニーを奏でているような、バランスの良さがJBBの大きな魅力になっている。

JBBと『ジャージー・ボーイズ』とのこれまでの関係は、実にドラマチックなものだ。2016年の日本初演と2018年の再演(シアタークリエにて。中川、藤岡が出演)の成功後、2020年に予定されていた帝国劇場での本公演はコロナ禍のために中止され、急きょ「コンサート・バージョン」へと形を変えて上演され、2022年秋には日生劇場へと舞台を移して大成功を収める。中川はグループ結成の経緯の一つとして、「世界的に様々なことが起こる中で、『ジャージー・ボーイズ』という作品をひたむきにお客様に届けてきた時間が生み出したもの」と表現した。存在そのものが4人のエンターテイナーからのメッセージである、JBBはそんなグループだ。

6月に開催されるツアーは、大阪と横浜のビルボードライブ公演と、名古屋、東京、静岡のホールツアーとの二つの形態があり、バックバンドの編成も選曲も異なるものになる予定。そして今春には、昨年の中野サンプラザ公演を収録した初のライブCD作品のリリースも決まった。JBBとしての今後の予定について語る4人の言葉はとても力強く、自信あふれるものだ。

「今回のツアーは、昨年の中野サンプラザ公演よりも実験的な部分を強めていきながら、深みをさらに増していくという、両軸でお届けできるんじゃないかなという手応えをすでに感じています。これがうまくいった暁には、日本中どんなグループを見つけたとしても、我々以上のコーラスグループはないと断言できると、自信を持って臨みたいと思います」(藤岡)

「中野サンプラザから1年弱、各々で活動しつつ、また一緒にやることになるので。自分の個人能力を上げて、より完成度の高いものにしていくためにチャレンジしていきたいと思います」(東)

「僕たちは普段からコーラスグループをしているわけではなくて、役者としてやっているので、芝居の感情や表現を歌詞に載せられる部分もたくさん出てくると思います。よりお客様に伝わる音楽を届けられる自信はあります。自信しかないです(笑)」(大山)

「『ジャージー・ボーイズ』を観に来てくださったお客様は、『ジャージー・ボーイズ』のナンバーで構成されるコンサートなんだろうなと思われるかもしれませんが、中野サンプラザでは冒頭で1、2曲歌った以外はすべて邦楽・洋楽のナンバーを歌わせていただいて、今度のツアーの中でもどんな曲をチョイスするのか、楽しみにしていただきたいです。一番大事だと思っているのは、“4人のコーラスをまた聴きに来たいな”と思ってもらえることで。どうしたらそれが作れるのか、頭で考えるよりも、各々が声を出し合った時に“この歌最高だよね”という気持ちが生まれてくることが原動力だなと思うので、それをこのコンサートで目指したいと思います。ライブCDに関しては、私たちが初めて生まれた瞬間のハーモニーをぜひ楽しんでいただきたいですね。すべてのハーモニーのアレンジは藤岡さんが作っているんですが、ソロとは違うハーモニーの面白さを私たちが作り上げていく中で、とても貴重な作品ですし、宝に思える1枚がリリースされることを嬉しく思います」(中川)

■こうやって巡り合ったのには何か意味がある。“このメンバーだったらこういう新しい試みができるんじゃないか?”と思えたスタートでした。(中川)

記者会見が終わると、次は個別のメディアに対応するインタビューへ。会見でのノリの良さはそのままに、より自由に親密に、それぞれのキャラクターが映える言葉がどんどん飛び出して、時間の経つのがあっという間。会えば必ず好きにならずにはいられない、JBBはそんな魅力あふれる4人組だ。

――先ほどの会見を聞かせていただいて、4人のバランスの良さが本当に素晴らしいなと思いました。東さんがいきなり藤岡さんにいじられるところも含めて(笑)。

:すみません(笑)。

中川:あまりないですか、そういうことは。

――幼馴染みが組んだとかではなくて、舞台がきっかけで組んだグループで、トークも、ハーモニーも、これだけ息が合っているのは、めったにないと思います。

中川:ありがとうございます。“息が合っている”、いただきました。

――(笑)そこをまず、中川さんにお聞きしたかったんです。中川さんが“この4人でコーラスグループをやりたい”と思った時に、歌の技術はもちろんとして、人間的に合うだろうという確信みたいなものはありましたか。

中川:僕が選んでいるわけではないのですが、こうやって巡り合ったのには何か意味があるというか、『ジャージー・ボーイズ』という作品において、それぞれの役がまずあるわけですね。それは実在するフォー・シーズンズというグループの、僕はフランキー・ヴァリであり、藤岡正明はトミー・デヴィートでありという、それぞれのキャラクターと自分とはもちろん違うものなのですが、どこか自分が共感できたり、共通項みたいなところはやっぱりあって。作品の中の役から、自分たちのプライベートに繋がっているようなところはあると思うんです。影響を受けていると言いますか。

――はい。なるほど。

中川:その上で、JBBとして時を過ごす中で、より思うことは、とても真面目で、向上心を持って、枠からはみ出ていこうという野心やバイタリティを持たれているというのが、みんなに共通するところなのかな?と思いますね。それ以外はみんなバラバラだから。

藤岡:確かに。

中川:そこが一つの始まりで、“このメンバーだったらこういう新しい試みができるんじゃないか?”と思えたスタートでした。

藤岡:何か、変な関係値ができているなと思っていて。たとえば人が4人いると、2人組に分かれるとか、4人それぞれにフラットで仲がいいとか、いろいろあると思うんですけど。僕らの場合はこの2人、特にこいつ(東)は一番年下のくせに、俺にはまったく気を使っていないんですよ(笑)。でもアッキー(中川)には微妙に気を使っていたりするような気が、俺はしていて。

大山:あははは。

藤岡:でも、みんながアッキーに気を使ってると、(中川が)一人で浮いちゃうわけです。そして僕はこいつ(大山)には1ミリも気を使わない(笑)。そしてアッキーは、意外とこいつ(大山)には気を使ってる。そういうことは、いろいろあるなと思っていて。

――面白い関係ですね。

藤岡:だって、アッキーと2人っきりでご飯食べに行ったりする?

大山:それは……想像つかないかもしれない(苦笑)。1回もないですよね。サシでしゃべったことはないかも。

中川:稽古場でしゃべるくらいだよね。

大山:そうですね。

:でも、俺は行けますよ。アッキーさんと二人は。

藤岡:そういう問題じゃない(笑)。たぶん僕が間を取り持っているような関係値もあれば、真志が間を取り持っているような関係値もあるし、そこに対してアッキーが、すごく真面目な部分を発揮して“さあ、やろう!”と言ってくれたりとか。

大山:ほんと、そうですね。タイプキープしてくれますよね、アッキーさん。

藤岡:いや、タイムキープは苦手だと思う(笑)。でも「さあ、やろう!」というプレパレーション(*ある動きのために最初にポーズを取ること)は得意。で、トン(東)が今度はムードメイカーになっていたり。

大山:不思議なバランスで成り立ってます。

――絶妙ですね。東さんが、去年は藤岡さんの家に行って、歌を習っていたという話も聞いていますけれど、ということはこの二人は師弟関係でもあると言いますか。

:そうですね。僕の知らないジャンルだったりとか、僕がやったことのない発声だったりを知っているので、それを教えてもらいたいというシンプルな興味と、もちろん尊敬している部分もたくさんあります。

中川:去年の中野サンプラザで歌った「黄昏のビギン」(水原弘)とか、聴いたことはあったかもしれないけど、がっつり聴いていましたということではなかったと思うので。

:そうです、そうです。

藤岡:前回のコンサートは特に、触れたことがない曲もたくさんあったので。トンは「銀色の道」(ダーク・ダックス)を知らなかったりとか。

中川:そこで歌い方とか、音楽性について、藤岡さんが説明してくれる。

藤岡:そんなに俺も詳しくないけどね。そっち系は。

中川:でも一応、通ってきてるでしょ?

藤岡:聴いたことはあったけど、昔の日本の曲って、そんなには聴いていない。

中川:僕はけっこう聴いていました。日本の古き良き音楽を。

藤岡:我々の親世代が聴いてるじゃない? 子供の頃になんとなく流れているのを、聴いていたというのはあると思う。

:僕の両親がアメリカで仕事をしていたこともあり、子供の頃はフォー・シーズンズばっかり聴いてました。

大山:そうなんだ。

中川:逆なんだよね。私たちと。

:だから、日本の古い曲は知らなかったです。

中川:真志は、「ACT SHOW」(スペクトラム)を知らなかったんだよね。

:ドはまりしましたよね。

大山:ドはまりしました。普段からファンクやジャズを聴くのが好きだったんですけど、「ACT SHOW」を聴いて、日本にこんな人たちがいたんだ!と。しかも、この4人で作れたハーモニーがすごく楽しかったから。

――そういう曲をたくさんやられた、昨年夏の中野サンプラザ公演って、選曲はどなたがやられたんですか。

藤岡:プロデューサーと、僕や中川と、色々相談しつつ、“こんなのはありかもね”“あんなのもできるかもね”みたいな感じでしたね。

――そのコンサートがライブCDにもなりますし、あらためて、あのデビューコンサートはどんな体験でしたか。

藤岡:一応、僕がコーラスアレンジを全部やっているんですけど、曲によっては、バンドアレンジも付随してやらなきゃいけないこともあって。元々そこはやってきていたので、よかったんですけど、コーラスアレンジをこんなにいっぱいやったことがなかったから。

大山:ないですよね。

藤岡:ソロアーティストとしてずっとやってきて、コーラスを作る必要がなかったから。そこは新鮮でしたね。それこそ舞台の期間中だったんですけど、どこへ行くにもパソコンを持ち歩いて、ずっと譜面を書いていました。でも楽しかったですし、(3人の)声をよく知っているので、“彼だったらここはきっとこんな声で出してくれるんじゃないかな”とか、そういうことを想像しながら、一人ひとりのパートを譜面に起こしていく。それが楽しかったですけどね。 

――音域で言うと、一番上が中川さんで……。

大山:一番下が僕です。

藤岡:トップがアッキー、僕がその下、トンがもう一個下、真志が一番下。合間合間でここ(藤岡&東)が入れ替わったりとか、色々あるんですけど。

中川:そして、4人それぞれにソロが取れるというところも大事ですね。その話の流れで言うと、「夢で逢えたら」は、いろんな方がやってらっしゃいますけど、藤岡さんが様々なバージョンを踏襲しつつもオリジナリティを持ちたいということで、イントロからアレンジを考えてくれました。

藤岡:曲によってですけど、やっぱりコピーではないので。JBBじゃないと出せないサウンドというか、それはコーラスだけに限らず、アレンジとしてのサウンドもしっかり作っていきたいし。

中川:そのアレンジをもらった時に、“おおー、こういう感じなんだ”というものが曲ごとにあって、本当に幅の広い選曲というのがこのコンサートの面白みでもあるので。一筋縄ではいかないわけですよね。声の出し方も、ハーモニーも、アレンジも、藤岡さんが投げてくる球に1曲1曲シビれながら、4人で声合わせた時に果たしてそこまで行けるのか、完成するのか?という緊張感を持ちながらやっていた、最初の声がこのライブCDには収録されているんですね。

――そうですね。まさに。

中川:これを聴き返すことで、私たちにも発見が多いだろうし、もっと上に行きたいという思いもあるので。

藤岡:『ジャージー・ボーイズ』の中で歌われた「Can’t Take My Eyes Off Of You」(君の瞳に恋してる)は、誰もが知っているあの名曲だけど、ミュージカルの中ではフランキー・ヴァリ役のアッキーがソロで歌っているわけです。そこにハーモニーは入っていないんですけど、『ジャージー・ボーイズ』から離れたJBBだからこそ、ああいうアレンジにして4人で聴かせることができたのは、すごく新鮮だったと思います。

大山:このアレンジ、大好きでした。

:僕も、大好きでした。アカペラで始まるんですよね。

藤岡:あそこは『ジャージー・ボーイズ』へのリスペクトを込めたアレンジですね。そういった部分も楽しめるだろうし、それがスタートというか、JBBは『ジャージー・ボーイズ』からスタートしたんですけど、これから旅立っていくというか、どんどん羽ばたいていくためのきっかけというか。“これがスタートなんだ”というものを、ああいうアレンジで伝えたいなというのはありましたね。

■たぶん、そんじょそこらのコーラスグループがちょっと手を出せない、絶対避けて通りたいところじゃないか?ということをやっています。(藤岡)

――みなさんぜひ、ライブCDを聴いて、コンサートに来ていただけると、さらに深く楽しめると思います。そして今回はそこからさらに一歩進んだ、新しい挑戦を考えているわけですね。藤岡さんの頭の中では。

藤岡:もうね、ヤバいですよ。動き出してはいるんですよ。まだ言えないですけど、すごいことになってるよね? たぶん。

大山:そうですね……。

:大変です(笑)。

――どんなすごいことになっているのか。ちょっとヒントをいただけますか。

藤岡:そんなに簡単な曲じゃないものに挑戦しているよね。たぶん、そんじょそこらのコーラスグループがちょっと手を出せない、絶対避けて通りたいところじゃないか?ということをやっているので。

大山:間違いないですね。(JBBのレパートリーの)歴代でも最難関なんじゃないですか? 前で言うと、「Route 66」(マンハッタン・トランスファー)とか、すごく難しかったですけど。

藤岡:「Route 66」は、ジャズ・アレンジなので、テンションコードに行っているところがたくさんあるんですね、コーラスとして。たぶんそこが難しかったと思うけど。

大山:今度は、そういう難しさじゃない。

藤岡:そう。そういう次元じゃないと思う。

――何の曲なのか、知りたくてしょうがないですけども(笑)。とある曲で、非常に難しいコーラスに挑戦しているわけですね。

藤岡:しかも、1曲だけじゃないですから。“え、それやるの? 大丈夫?”みたいな。そこを超えられたらいいですよね。

――楽しみです。自信はありますか、東さん。

:気合だけはあります(笑)。

藤岡:今、絶賛苦しんでいるところだから、何とも言えない(笑)。

:気持ちだけは持ってます! 誰よりも。でも前回のコンサートで18曲をやり切って、今回新しい曲にチャレンジしているんですけど、すんなり受け入れられるというか、成長してるんだなと気づけたというか。前は何回聴いても、“なんだこの音は?”みたいな、どうしてもそこだけ音が取れないことがあって。今も完璧ではないですが、前よりは減っているなという風に思いました。難しいですけど。

中川:そこがミソじゃないですか? ミュージカルで共演している私たちが、実際にコーラスグループを組んで音楽をやっていくということで、共演者というところだけじゃないわけですね。音を取ること一つを取っても、ミュージカルの場合は稽古というものがありますけど、音楽って、そんなに稽古とかはしないじゃないですか。リハーサルはしますけど。そういうことも含めて、瞬発力とか、その人の持っているポテンシャルみたいなところが出てくる、そこに面白さが生まれると思うんですね。つまり、何がJBBの“らしさ”なのかというものを、まさに今、それぞれが築き始めていると思うので。

――そうだと思います。

中川:先ほどもお話ししたんですが、JBBというものに興味を持ってくださる方々、特に音楽シーンというところに向かっていきたいという思いもあって。そこに(ミュージカルと音楽との)境目があるかないか?ということは置いておいて、元々『ジャージー・ボーイズ』はフォー・シーズンズの軌跡を描いている、フォー・シーズンズのヒット曲で構成されているジュークボックス型ミュージカルなんですね。その、世界でヒットした楽曲たちが、4人の物語とうまく重なっているところにドラマが生まれている。そして楽曲としてはもちろん、ミュージカルとしても今なお全世界で愛されているというところが、JBBのスタートなので。コーラスグループとしてJBBもたくさんのヒット曲、聴き馴染みのない曲であっても、“素敵な曲だな”と思えるようなナンバーまで、幅広いセットリストを歌っていくところがとても大切で。それが今まさに様々な楽曲に挑戦している理由としてあるんですよね。

――なるほど。

中川:なので、“この曲を、なぜこの4人で歌おうと思ったんだろう?”というところも含めて、JBBのコンサートの中で感じていただければと思います。ただ歌いたいとか、歌わされているとか、そういうことではない、一つのミュージカルやドラマを観ているような感覚になるような、そういうコンサートになるのかな? という気がしています。ぜひ観に来ていただきたいですね。

取材・文=宮本英夫

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新国立劇場オペラ 2023/2024シーズン リヒャルト・ワーグナー『トリスタンとイゾルデ』が、2024年3月14日(木)から3月29日(金)まで同劇場 オペラパレスで上演される。この公演は、2010年に大きな話題となったデイヴィッド・マクヴィカー演出で、また、当時と同じく大野和士が指揮を務める。物語のキーパーソンとなるイゾルデの侍女ブランゲーネには、2002年にワーグナーの聖地バイロイト音楽祭にデビューして以来、世界の舞台でワーグナーを歌い続けるメゾソプラノの藤村実穂子。本インタビューでは『トリスタンとイゾルデ』の魅力や公演にかける意気込み、そして、長年海外で活躍してきた藤村から若い歌手たちへ向けたメッセージを聞いた。

 

——藤村さんが感じる『トリスタンとイゾルデ』の魅力について、教えてください。また本公演は、話題となった2010年デイヴィッド・マクヴィカーの演出で、注目度のとても高い公演です。楽しみにしているファンに向けてメッセージと抱負をお願いします。

ワーグナーは知人からの借金を踏み倒したり、革命運動に参加した罪で国外追放されても「ガウンの裏地は赤の絹で、こういう赤は駄目」とオーダーメイドするし、普通の人間では考えられない方でした。追放されたワーグナーと妻ミンナ夫婦を共にかくまってくれるオットー・ヴェーゼンドンクの妻マチルデ・ヴェーゼンドンクと恋に落ちてしまうのも、さすが。しかしこれによって『トリスタンとイゾルデ』が生まれます。

ワーグナーとマチルデが既婚者同士でも愛し合った末にうまれた作品『トリスタンとイゾルデ』ですが、作品中特に二幕でトリスタンとイゾルデが光、太陽、日中を嫌い、夜を讃えるのはなぜでしょうか。日中は光があるので物が見えて概念を持ちますが、夜は光が無いため物が見えず既成概念を持てません。つまり敵、味方、婚約者の仇、主人の妻、既婚、未婚という既成概念が無い「夜」にすることで既成概念を否定したと解釈できます。形而上ですね。

主人イゾルデの「毒薬をもれ」という命令に「はいそうですか」と従う事、つまり二人を殺すことがブランゲーネには出来ません。機械でもロボットでもあるまいし、人間として当然です。同時に自分が愛の媚薬を飲ませたばかりに二人が愛し合ってしまったのだと、ブランゲーネは最後まで苦しみます。

そういった蘊蓄はさておき、ただシートにお掛けになって、「o sink hernieder」と歌うトリスタンとイゾルデと一緒に音楽に思いっきり沈んでみたらいかかでしょう。私もどうやったらこんな音楽が作曲できるのだろうと、毎回思います。

新国立劇場『ドン・カルロ』(2001年)より (撮影:三枝近志)

新国立劇場『ドン・カルロ』(2001年)より (撮影:三枝近志)

 

——指揮者の大野和士さんと東京都交響楽団とは何度もご共演されています。

大学の廊下で一年だけお見掛けしたのですがやる気オーラで光っていらっしゃり、その後ミュンヘン国立歌劇場来日公演の際に東京文化会館小ホールのヴルコプフさんのリサイタルでピアノをお弾きになるのを聴きに行き、研鑽を積むってこういうことなんだなと思っていました。指揮者がオペラハウスでコレペティからの研鑽を積むことは、後々の指揮や音楽に大いに影響があるというのは、自分が舞台に立たせて頂けるようになってから強く感じたことです。

私が向こうでフリーになってから欧米の歌手達から「ミホコ、カズシはとても丁寧で、彼と音楽するのはとても楽しいんだよ」と何度も言われました。私も色々ありましたが、アジア人指揮者が一流オペラハウス或いはオーケストラの音楽総監督になり、そのレベルをキープし続けるというのは、皆さんの想像をはるかに越えて大変なんです。蹴落としてやろうという輩は何万といるのですから。海外で活躍という触れ込みの方はたくさんいらっしゃいますが、もし「大変でしたよね」と言って体感、共感出来得るのは現在大野さんだと思います。そう考えると、まだ誰もそんな大それた事を考えもしなかった時代に、そんな事をなさってしまった故小澤征爾さんへの差別、ご心労、ご苦労はどれ程のものだったろうと思うと、胸が痛くなります。我々が海外で信用して頂けるのも小澤さんが道を開拓して下さったお陰ですから。

オーケストラやピアノは、歌手が歌っている歌詞の深層心理や無意識をも表現しています。今回トリスタンで再びご一緒出来る都響の皆様はいつも私の歌をしっかり聴き、一緒に呼吸して演奏して下さいます。歌いつつ「そうなんです!」と、心の中でオケの方一人一人と握手しています。お互いが敬意をもって尊重し合えるって、今の世の中稀ですし、それが何も言わずに音楽の中で出来るって素敵ですよね! オーケストラが一度トリスタンを演奏したことがあるとその後オケの音が変わるのですが、そちらもまた楽しみにしています。

新国立劇場『ウェルテル』(2019年)より (撮影:寺司正彦)

新国立劇場『ウェルテル』(2019年)より (撮影:寺司正彦)

 

——ヨーロッパを中心に、長年最高峰の舞台でご活躍されています。ワーグナー歌手としてのご活躍もすばらしく、日本人の歌手たちにとっては憧れの存在です。世界の舞台へ挑戦する若い歌手がたくさんいますが、どの歌手たちも藤村さんへの憧れを抱いていると思います。

私の時代はパワハラ、モラハラ、セクハラなどという言葉は存在せず、スキャンダルとして新聞雑誌に掲載されるようなとんでもないことが、日々当然に行なわれていました。おかしいのではと思いつつ、何とかしのいできた世代です。

欧州の歌劇場は州や市からの資金で賄っていますがその経済支援も減少し、ロシアのウクライナ侵攻で舞台装置の材料費は膨れ上がるばかり。舞台技術者や事務、管理関係は公務員扱いの定職者なので、年ごとの契約である歌手に一番少なく支払います。ハウスの経済的困窮は続くばかりなので、毎シーズンごとに新しい歌手を入れていけば初任給で安くすみますし、最近は大学在学中の学生を中途退学させて極端に安い給料で1〜2年歌わせた後、解雇することを繰り返すのが当然になっています。歌手は使っては捨てるティッシュペーパーのようなものなのです。

ヨーロッパの人々がヨーロッパの音大の声楽科を卒業しても、その後合唱を含めてプロとして歌っている歌手は3%に届かないとのこと。ドイツだけでも54あるというオペラハウスで定職に付くのもままなりませんので、失業中の歌手の数は、外国からやって来た歌手を含め、万単位で存在します。聴きに来る人々は勿論欧州の人々。そんな中でフリーランスのアジア人が舞台に立って欧米人を演じるのですから、ソリスト達は他人の失敗を今か今かと待ち構え、一つのオファーも奪い取ってやろうと手ぐすねを引いています​。

日本で初めてお仕事をさせて頂いた時、皆さん和気あいあいと稽古なさっていて、椅子から落ちるほど驚きました。そんな中「海外で活躍して、憧れ」等と言われますが、では全ての方にお勧めできるかと訊かれれば考え込んでしまいます。私には偶然忍耐強さ、うたれ強さ、英語でいうresilienceがあって何とかやってきましたが。「耐えられない苦しみは与えられないはずだ」と、「こんな事も耐えなくちゃいけないのか」が紙一重な毎日だからです。

現代の様にインターネットの普及で簡単に多くの演奏が聴ける今、誰かの真似をしているコピペの歌手はいくらでもいます。でもそれってコピー機と同じですよね。海外で歌っているイコール素晴らしいとか、外国人だから素晴らしいとか、そういった単純な決まりは無いと思います。どこで歌うにしろ、他の歌手には歌えない歌、この人にしか歌えない歌、自分の歌をうたって欲しいと、強く思います。単語一つ一つの意味を調べ、考え、詩の状況を想像し、その立場に自分を置き、楽譜を読んで、ピアノあるいはオケの転調の意味、和音のニュアンスを体感し、作曲家の意図を知る。ここから自分の歌を、音楽を建てることこそ、その人の文化であり、その人の芸術なのではないでしょうか。

新国立劇場『ラインの黄金』(2001年)より (撮影:三枝近志)

新国立劇場『ラインの黄金』(2001年)より (撮影:三枝近志)

 
【プロフィール】藤村実穂子 FUJIMURA Mihoko (メゾソプラノ) :
ヨーロッパを拠点に国際的な活躍を続ける、日本を代表するメゾソプラノ歌手。東京芸術大学声楽科卒業、同大学大学院及びミュンヘン音楽大学大学院修了。主役級としては日本人で初めてバイロイト音楽祭にデビューし、フリッカ、クンドリー、ブランゲーネ、ワルトラウテ、エルダなどの主役で9シーズン連続出演。メトロポリタン歌劇場、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、バイエルン州立歌劇場、パリ・シャトレ座、ベルリン・ドイツ・オペラ、ザクセン州立歌劇場、フィレンツェ歌劇場、ヴェローナ歌劇場、バルセロナ・リセウ歌劇場、ザルツブルグ祝祭大劇場等に出演の他、ウィーン・フィル、ベルリン・フィル、ロイヤル・コンセルトヘボウ管、バイエルン放送響、ロンドン響、ロンドン・フィル、ティーレマンパリ管、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管、スイス・ロマンド管等の世界的なオーケストラ、ティーレマン、アバド、メータ、エッシェンバッハ、シャイー、ヤンソンス、ネルソンス、ネゼ=セガン、ガッティ、ドゥダメル等の著名指揮者と共演している。またブランゲーネ役でプラシド・ドミンゴとのCD録音 「トリスタンとイゾルデ」(EMI)でも各方面より注目を浴びた。2002年出光音楽賞、03年芸術選奨文部科学大臣新人賞、07年エクソンモービル音楽賞、13年サントリー音楽賞、14年紫綬褒章をそれぞれ受賞。新国立劇場では『ラインの黄金』(01年)と『ワルキューレ』(02年、21年)フリッカ、『ドン・カルロ』エボリ公女(01年)、『神々の黄昏』ヴァルトラウテ(04年)、『イドメネオ』イダマンテ(06年)、『ウェルテル』シャルロット(19年)に出演。 

取材・文:東ゆか

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太平洋戦争下の広島県呉市に生きる人々の暮らしを丁寧に描いた、こうの史代による漫画『この世界の片隅に』。生きることの美しさが胸に迫る作品は、映画やドラマなど、様々なメディアミックスがなされてきた。

初のミュージカル化で脚本・演出を務めるのは、『四月は君の嘘』をミュージカル作品にした実績もある上田一豪。ミュージカル全編を彩る珠玉の音楽を手掛けるのは、国民的合唱・卒業ソング「手紙 ~拝啓 十五の君へ~」を作詞・作曲し、ミュージカル音楽作家として10年ぶりに再始動するアンジェラ・アキ

絵を描くことが大好きな主人公の浦野すず役を昆夏美大原櫻子、すずが嫁ぐ相手の北條周作役を海宝直人村井良大、すずと周作と三角関係になる白木リン役を平野綾桜井玲香、すずの幼馴染の水原哲役を小野塚勇人小林唯がそれぞれWキャストで務める。また、すずの妹の浦野すみ役を小向なる、周作の姉ですずの義姉の黒村径子役を音月桂と、人気と実力を兼ね備えたキャストが勢揃いしている。

製作発表会見には、昆夏美、大原櫻子、海宝直人、村井良大、平野綾、桜井玲香、音月桂、脚本・演出の上田一豪が登壇。アンジェラ・アキからのメッセージ動画も届いた。

アンジェラ・アキ メッセージ

最初に上田さんの台本を読ませていただいた時、元々大好きな漫画をこういうふうに舞台化するんだと本当に感動しました。読んだばかりなのに、目を閉じると舞台で作品が繰り広げられる様子が見えてきて、自然にセリフや音が聞こえるくらい、カラフルでわかりやすい台本でした。そこから上田さんと細かく打ち合わせして作り上げ、ワークショップで客観的に聞けた時は本当に感動しました。素晴らしい原作を舞台化する意味を感じられる台本に寄り添える曲を作りたいと思って書きました。稽古でキャストの皆さんとお会いできるのを楽しみにしています。全国各地でご覧になる皆さんに楽しんでいただけるよう全身全霊込めて作りました。ぜひ楽しみにしていてください。

 

――ミュージカル化にあたって、上田さんが脚本を書くうえで大切にしたこと、演出プラン、見る方に伝えたいことを教えてください。

上田:アニメ、映画など、様々な形で語られている作品です。戦争を描いていながら、日常を暮らす人々の機微、内面が繊細に描いています。それを舞台にするのはすごくチャレンジング。原作にいかに迫るかを考えて構成しました。たくさんの人がご覧になっている作品なので、新しいものをお届けすると言うよりは、主人公の感情の道をどのように舞台上で表現したらより届くのか。“誰かの特別なお話”ではなく、“私たち一人ひとりの物語でもある”ことが届くようにと考えました。「戦時下だからこう、この時代だからこう」ではなく、普通に生まれて死んでいく人間が感じることをただ丁寧に描いていることがわかるように、原作を丁寧に扱いました。セットや衣装の打ち合わせが進んでいますが、演出においても奇を衒ったことをやりたいわけではありません。登場人物たちの感情がしっかり届くように、お客様が耳を傾けたくなるものにしていきたいと思っています。

作品を通して伝えたいことについては、“この世界の片隅”にいる人たちにも人生や物語があり、その積み重ねがこの世界である。忘れがちですが、この物語を通して自分が生きている世界や国のことを少し感じていただける作品になったらと思っています。

上田一豪

上田一豪

――ご自身が演じる役柄について改めて教えてください。また、出演が決まった時の想い、周りの反応はいかがでしたか?

昆:すずさんは不器用であたたかくて可愛らしい人だと思いました。作中で「お前は普通の人じゃ」と言われるシーンがあります。すずさんの「普通」ってなんだろうと考えて、稽古で答えを見つけたいと思っています。すずさんは不器用ながら、一瞬いっしゅんを素直に感じていたんだということを、稽古でより深く理解したいです。

出演が決まった時は素直に嬉しかったのと同時に意外さもありました。日本人役をあまりやったことがなくて(笑)。でも日本の歴史を日本人の感性で作れるのが楽しみです。色々な方から「原作が好き」「楽しみにしている」と言われるので、原作ファンの方の期待にも応えられるように、みんなで作っていきたいです。

大原:どんな困難があっても元気に前向きで、明るくチャーミングな女の子だと思っています。脚本や音楽をいただいた時に涙が止まりませんでした。アンジェラ・アキさんの音楽を聴いた時にミュージカルならではの世界にすごく感情を揺さぶられました。1曲1曲が素晴らしくて、歌える幸せを感じました。周りの方からの反響もすごく大きかったです。

海宝:全てのキャラクターが真に迫ってきて、実在感があります。周作は真面目で愚直な男。不器用で人間臭いところが魅力に感じます。この作品が持つ生々しさや世界観が舞台上でどう立ち上がっていくか楽しみです。多くの方にすごく愛されている作品なので、ミュージカル初演に携われるのは光栄ですし、アンジェラさんの再始動1作目に携わるのも幸せ。すでにワークショップが始まっていて、長い時間をかけられるのは贅沢だと感じます。楽しみですね。

村井:周作を演じるにあたって色々と調べました。周作は良かれと思って行動するけど空振りすることもあるし、すごく大黒柱というよりは家族の中で毎日を実感しながら生きている人間だと思います。愛らしいし憎めないし、とにかく優しい男。本作に出られると決まった時に思ったのは、僕はタキシードやスーツが似合わないので良かったと(笑)。このメンバーの中で和服ならいけると思ったので安心しました。日本オリジナルミュージカルですし、日本を代表する作品にできたらと思っています。

平野:リンはすずが初めて感じる感情を芽生えさせるきっかけになったり、新しい世界が広がったりする要素を与える存在。リンにとってもすずはそんな存在なので、お芝居を通して作品のエッセンスになれるようにしたいなと思います。たくさんの方に愛され、日本はもちろん世界中の方々から注目されている作品です。ミュージカルであるということにも意味があると思うので、こだわりながら進めていけたらと思っています。

桜井:白木リンは貧しい家庭で育ち、色々な事情で売られて、という苦しい過去があり、生きたい気持ちもあるけどどこか諦めていて、でも夢を見ていてと、複雑な気持ちを胸に秘めて葛藤している女性です。これから作っていくにあたって、彼女の感情にもっと向き合っていきたいと思っています。色々なメディアミックスがされてきた作品で、今まで本作に携わってきた方にお会いする機会もありました。その方々に「あまりにもリアルすぎて、自分がどう感情を受け止めたか言語化しにくい作品。すごく悩んだし大変だったけど、かけがえのない財産をもらったからあなたも頑張って」と言われました。今回、しっかりと演じられたらと思っています。

音月:私が演じる黒村径子さんという人は、当時では珍しく恋愛結婚をしていて、家庭的なすずさんとは真逆な、不器用で家事もできない型破りな女性という印象でした。女性の強さ、当時を生き抜いてきた人たちの熱い血のようなものをまとめた役という感覚があり、演じるのが楽しみです。最近はストレートが多かったので、情報解禁の時には「久しぶりに歌うんだね」という声をもらいました。アンジェラさんの音楽にすごく心が動いたので楽しみです。

昆夏美

昆夏美

大原櫻子

大原櫻子

――楽曲制作について話したこと、楽曲を聴いた感想を教えてください。

上田:作曲プロセスは作曲家さんによって違いますが、今回はある程度楽曲の構成がわかる台本をお渡しし、楽曲に直していただきました。その場で一緒に作業できるわけではないので、デモを送っていただいて。アンジェラさんが歌っているので、初めて聴くときは「おお!」と。日本語の細かいニュアンスや楽曲で何を一番伝えなきゃ行けないかを細かく打ち合わせて調整しながら仕上げました。

昆:なんて素敵な楽曲なんだろうと心から思いました。力強くもあり温かい、寄り添うような楽曲が作品にぴったりはまっています。アンジェラさんが原作と一豪さんの脚本へのリスペクトを持って1曲ずつ大切に作られたんだなと感じました。早くすずさんとして歌いたいなと思っています。

大原:アンジェラ・アキさんの楽曲は学生時代から大好きなので、聞く前からワクワクしていました。その上で聞いて、ワクワクを通り越してゾワゾワするくらい感動し、これは絶対歌いたいという思いが強まりました。

海宝:アンジェラさんのセンスと演劇的な勉強が融合されて、今までにない感覚を受けました。とても美しくて繊細で、作品の瑞々しさにマッチしているなと。アンジェラさんとお話しする機会も何回かあったんですが、俳優の演技や一豪さんの脚本に柔軟に、アグレッシブに対応してくださいます。その姿を見て、僕らも音楽をしっかり表現しないといけないと感じました。

村井:「純粋だな」と思いました。作品にぴったりな楽曲が目の前に現れて、完成形が見えてしまった。包み込んでくれるような楽曲が多くて、早く劇場で聴きたいなと思いました。ぜひ見にきていただきたいです。

平野:初めて触れたのはオーディションの時でした。歌った時にすごくイメージが湧いて、歌っていても聞いていても染み渡っていくような包容力を感じました。早く稽古場で他の曲を聴きたいです。

桜井:色々な楽曲がありましたが、意外に感じたのは空襲のシーンや戦争を表現するシーンで流れる楽曲。アンジェラさんはこう表現するんだ、という新しさを感じました。私は卒業式や合唱コンクールでアンジェラさんの曲を歌ってきたドンピシャの世代。あの曲を作られたアンジェラさんなので、絶対に感動できること間違いなしという曲が今回もたくさん生まれていす。ぜひ期待してきていただけたらと思います。

音月:ミュージカルの楽曲はエネルギッシュでパワフルに歌い上げる印象が強いと思いますが、とても素朴で温もりがあって、心の中がふわっとあたたかくなるような印象を受けました。そこに自分の声を乗せていくのはデリケートな作業ですが、大変よりも楽しみな気持ちの方が強いです。観劇後に皆さんが鼻歌で歌ってくれたら嬉しいなと思います。

海宝直人

海宝直人

村井良大

村井良大

――原作で好きなシーンや楽しみなシーンはどこですか?

音月:径子さんがすずさんに「あなたの居場所はここだよ」と伝えるところ。女性同士だからわかること、理解できることもたくさんあると思っていて、先輩の径子さんがすずさんにかける、不器用だけどすごく優しい一言がグッときました。

桜井:周作さんが拗ねているすずちゃんを一生懸命慰めようとするシーン。まだ二人が距離を測っているシーンではあるんですが、仲良い夫婦って包み隠さずなんでも言い合える関係が素敵だな、理想だなと思うので、そういう二人の姿にキュンとします。

平野:すずとリンが桜の木の上から再会するシーンの絵の美しさが印象に残っています。漫画は色がついていないのに、急に桜の色が思い浮かんですごく印象的でした。演出にどう反映されるか楽しみです。あとお茶碗のシーンは三角関係に繋がる部分で、面白いシーンになるんじゃないかと思っています。

村井:楠公飯のシーンが好きです。すずさんがご飯をいっぱい食べられるように考えて振る舞うんですが、あまり美味しくなくてどよ〜んとする。漫画だと美味しくないとかオチがつくと思うんですが、こうの先生が素敵なのは「楠公飯を美味しくいただける楠公は豪傑な人だったんですね」というオチをつけるところ。優しい世界観にずっと包まれているのが好きです。

海宝:原作の小さいコマなんですが、すずさんがアメリカ軍のビラをクシャクシャ丸めていて、周作は翌日の海兵団の剣道大会に備えているシーン。すずさんがくしゃくしゃのビラを投げて周作が一生懸命当てようとするけど一個も当たらなくて、最終的に突っ伏す。鈍臭さと素直さに周作の魅力が出ていると感じて好きですね。

大原:グッときたのが、リンさんに「誰でも、何か足らんくても居場所はそうそうなくならないよ」と言われるシーン。この作品のテーマというか、いい言葉だなと思いました。あとは、周作さんからキャラメルをもらって映画館に向かうシーン。周作さんのすずさんへの愛を感じてほっこりします。

昆:さくちゃんの好きなシーンを聞いてびっくりしたんですが、同じシーンが心に残っています。居場所を見つけざるを得なかったリンさんが作中でずっと居場所を探し続けているすずさんにかける言葉をいうことで、すごく印象に残っています。読者の皆さんも今回見てくださる皆さんも、すずさんが本当の自分の居場所を探すというところに重きを置いてご覧いただけると思います。

平野綾

平野綾

桜井玲香

桜井玲香

音月桂

音月桂

――すずと周作を演じる4名に、Wキャストの印象と全国公演についてお聞きしたいです。

村井:海宝くんとは二度目です。疑問に思っていることがあるとすぐに教えてくれるのが印象的で、ミュージカルについてなんでも知っている方だなと。全国公演ということで、呉でできるのが幸せです。この作品が持っているメッセージをしっかり届けたいと思います。

海宝:(村井は)お芝居に真摯な方という印象です。でも、昔はすっごく尖っていたとどなたかから聞きました。

村井:え、そいつの名前教えてください!

海宝:(笑)。芝居に対する想いがすごく強いと感じているので、たくさん刺激をいただけるんだろうなと楽しみです。素晴らしい作品をミュージカル化するのはすごく価値があることだと思うので、全国の皆様にお届けできるのが嬉しいです。

大原:昆さんとは『ミス・サイゴン』の稽古場で一緒でした。コロナ禍で中止にになってしまい本番は一緒にできなかったんですが、役のことも普段の体調管理についても色々相談させていただいて、いいお姉ちゃんのような存在です。ミュージカルを見に行く時も、客席から本当にかっこいいなと見ているので、ご一緒できるのが本当に嬉しいです。全国ツアーで、ミュージカルは初めてという方にも見ていただけると思いますし、今回の曲にはポップスの要素も詰まっていてミュージカルファンも新鮮に感じると思います。老若男女に愛される作品になるように頑張りたいです。

昆:さくちゃんとは『ミス・サイゴン』でも今回も同じ役で、とてもご縁を感じています。さくちゃんの人を幸せにするような可愛い笑顔がすずさんにぴったりだなと思っています。さらにたくさんお話しして、すずさんを一緒に作って行けたらと思います。戦争の話ではありますが、その中で生きた人々の暮らしに焦点を当てた作品です。人との繋がりやささやかな幸せを繊細に描いた作品が皆さんの心にまっすぐ届いたらいいなと思っています。

本作5月9日(木)〜5月30日(木)まで日生劇場で上演されたあと、北海道・岩手・新潟・愛知・長野・茨城・大阪と全国ツアーを行い、『この世界の片隅に』の舞台である広島県呉市にて大千穐楽を迎える。また、作中で歌われる楽曲を収録したアルバム「アンジェラ・アキsings『この世界の片隅に』」は2024年4月24日に発売されることが決まっている。

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昨年、レコードレーベルLantisよりメジャーデビューを果たした来栖りんが、2ndシングル「Believer」を2024年5月22日(水)に発売する。その表題曲「Believer」が4月より放送のTVアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』エンディング主題歌に決定した。

TVアニメ『転生したらスライムだった件』は、小説投稿サイト「小説家になろう」で9億PVを突破、コミック、小説、スピンオフ作品など、関連書籍のシリーズ累計発行部数は4,000万部を突破した異世界転生エンターテインメント作品。

(C) 川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会

(C) 川上泰樹・伏瀬・講談社/転スラ製作委員会

2ndシングル「Believer」は、初回限定盤・通常盤A・通常盤Bの3形態で発売予定となっており、表題曲「Believer」は"届かない、それでも届けたい願い"をテーマにした、切なくも前向きで、来栖りんの澄んだ声がマッチした楽曲に仕上がった。

カップリングには昨年開催された1st Liveでサプライズ披露され、音源化希望の声が多かった「SUMMER JOY」ほか、新規楽曲1曲を収録。初回限定盤にはCDのほか、フォトブックやスリーブが付属され、同梱のBlu-rayには「Believer」Music Videoとメイキング映像が収録される。なお通常盤Bは、TVアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』描き下ろしイラストジャケットとなっている。また、シングル発売を記念して各店舗特典や応援店情報、リリースイベント情報も解禁となった。

TVアニメ『転生したらスライムだった件 第3期』は2024年4月より日本テレビ系各局&BS11にて連続2クール放送。

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Charisma.comが、今年初となるデジタルシングル「Shut up」を2月21日(水)にリリースした。また、同日21時にMVのプレミア公開を発表した。

2024年最初のリリースとなる今作品は、ストレートなタイトルとは裏腹に、目に見えない何かに追われる感覚への葛藤を表現した作品となっている。

1曲目の「shut up」は、デビューアルバム『アイアイシンドローム』の制作に携わったマリモレコーズの江夏正晃(ebee#1)が作る、切なくも洗練されたサウンドの上に、これまでのいつかとは思えない“抱きしめながら、突き刺す”ような言葉が並んでいる。

Music Videoには、昨年リリースの「カンブリアダンス」MVでも奇才を放ったyuki naritaを迎え、“逃げきれない何か”をぶっ飛んで表現した映像となっている。

 

2曲目の「HIM」は、「Here is mine」の略式となっており、トラックメイクには、昨年からCharisma.comのライブサポートにも登場しているMO MOMAの土器大洋を迎えた。空間を弾ける様な音が散りばめたトラックの上を、通常フル運転のいつかのラップが走り抜ける。

両楽曲にはゲストボーカルに、pollyの志水美日の別名義shimiminsを迎え、澄んだ歌声が孤独な浮遊感をより一層引き立てている。

さらに、Charisma.comは今作品を皮切りに、2024年隔月新曲をリリースすることも発表した。

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福岡を拠点にBeat Maker / DJとして活動してきたShiggeによる新曲「YOU feat. Chriskris」が、本日・2月21日(水)にリリースされた。

「YOU feat. Chriskris」は、シンガポールのR&B/Soulシンガー・ChriskrisをfeatしたエレクトロニックなR&Bソング。Shiggeとしてもボーカリストのfeat.をメインとしたアルバムを鋭意制作しており、アルバムにも収録される先行シングル第2弾となる。

なお、同作はSnowkやAmPm、Tokimeki Records等のプロデュースを手掛けるYutaka Takanami(NAMY)のレーベル・Namy& Recordsからのリリースとなる。

Chriskris コメント

Shiggeは1月にNamyを通して僕に初めてコラボレーションの話を持ちかけたんだ。彼は2、3のビートを送ってきたんだけど、どちらも本当にドープだった。このジャンルは今まであまりやったことがなかったので、このコラボレーションがどうなるのかとても興味があったし、みんなに聴いてもらうのがとても楽しみだ。

Shigge コメント 

Sincereさんの透き通るボーカルとは裏腹にとても感情が乗ったリリックがこのトラックにとてもマッチして最高にクールな仕上がり になっています!後半につれて盛り上がっていく展開とSincereさんのコーラスは必聴です!

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