パリ出場権かけた一戦! 『買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会』の予選ラウンドは6月に開催

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バレーボールの国際大会『買取大吉 バレーボールネーションズリーグ2024 福岡大会』の男女予選ラウンドが、西日本総合展示場 新館(福岡県北九州市)で開催される。チケットは3月30日(土)12:00より先行予約を開始。

『バレーボールネーションズリーグ2024』では、男女ともに世界の強豪16ヵ国が参戦。予選ラウンドは第1~3週に分かれており、各週では参加チームが2つのプールに分かれ、各4試合を戦う。

このうち、西日本総合展示場では男子の予選第2週、女子の予選第3週が行われる。各週の日程は以下の通り。

・男子予選第2週:6月4日(火)~9日(日)
・女子予選第3週:6月11日(火)~16日(日)

予選ラウンドの上位8チームは、6月に行われるファイナルラウンドに進出する。さらに、今大会には日本女子代表のパリオリンピック出場権もかかっており、今大会の予選終了時に“FIVB世界ランキングで出場権獲得国を除いたアジア1位”か“同ランキングの3位以内”に入れば、オリンピックへの出場権を獲得できる。

今大会に向けての、日本バレーボール協会 川合俊一会長のコメントは以下の通り。

「バレーボールネーションズリーグは世界の強豪が集う世界最高峰の大会で、今年は初の九州開催。バレーボールファンが大変多いと実感している九州エリアで大会が開催できることを心から嬉しく思います。特に女子バレーはパリ2024オリンピックの出場権が決まる大事な大会。皆さんの応援が選手の力になると思うので、力いっぱい応援してください。最高の瞬間を皆さんで体感しましょう」

すでにパリオリンピック出場権を獲得している男子代表に対して、女子代表にとっては正念場となる大会。選手たちの活躍に期待したい。

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『BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展』が、5月15日(水)より東京・SHIBUYA TSUTAYAで開催されることが決定した。

『BATTLE OF TOKYO』は、LDH JAPANが仕掛ける総合エンタテインメント・プロジェクト。大災害から奇跡の復興を遂げた未来都市“超東京”を舞台とした同プロジェクトでは、神出鬼没の怪盗団・MAD JESTERS(GENERATIONS)、最強無比の用心棒組織・ROWDY SHOGUN(THE RAMPAGE)、変幻自在のイリュージョン集団・Astro9(FANTASTICS)、風狂無頼のハッカーチーム・JIGGY BOYS(BALLISTIK BOYZ)ら特殊能力(スキル)を有したグループの挑戦を描いている。Jr.EXILE世代のグループを中心とした、同プロジェクトは、小説やアニメ、ゲーム、楽曲、ライブなどリアルとバーチャルを横断して展開。2023年7月にはさいたまスーパーアリーナで3日間、京セラドームで2日間のライブを開催した。

『BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展』では、GENERATIONS、THE RAMPAGE、FANTASTICS、BALLISTIK BOYZ、PSYCHIC FEVERらJr.EXILE世代のアーティスト5グループ、総勢45名をモチーフとするキャラクターを、クリエイター・45名の視点で描いた複製原画を展示。クリエイターでは、麻宮騎亜、浅見よう、Azusa、いとうのいぢ、上田バロン、兔ろうと、江川あきら、ERIMO、okojo、カワグチタケシ、弘司、GODTAIL、さいのすけ、さおとめあげは、さくしゃ2、紗与イチ、しらび、新條まゆ、鈴木次郎、鈴木ツタ、TAa、タカヤマトシアキ、武梨えり、タスクオーナ、だんちゃお、悌太、Pako、花邑まい、ハルタスク、左、平尾アウリ、広江礼威、ひろやまひろし、古海鐘一、BerryVerrine、POKImari、皆川亮二、森井しづき、山中虎鉄、雪広うたこ、読、lack、Ryota-H、ReDrop、ワダアルコ(五十音順/敬称略)の参加が発表されている。

公開されたキービジュアルでは、lack×MASATO(≠佐野玲於)、新條まゆ×LUCAS(≠吉野北人)、ERIMO×KARASU(≠八木勇征)、さくしゃ2×X(≠松井利樹)、兔ろうと×HANKICHI(≠半田龍臣)をフィーチャー。なお、同展は6月8日(土)から大阪・TSUTAYA EBISUBASHIでの開催も決定している。

会場では、展覧会を記念したイベント限定グッズの販売のほか、コラボレーションカフェも開催。カフェでは、オリジナルのフード・デザート・ドリンクの提供をはじめ、フロア内にはフォトスポットとして、特大パネルや、衣装・関連グッズなどのディスプレイ展示を行い、ライブ映像の配信や、オリジナル限定グッズの販売も予定しているとのこと。チケットの販売は、4月15日(月)12時からスタートする。詳細は、BATTLE OF TOKYO オフィシャルサイトを確認しよう。

『BATTLE OF TOKYO』参加メンバーのコメントは以下のとおり。

GENERATIONS 白濱亜嵐

「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」の開催おめでとうございます!

今回、素晴らしいクリエイターの皆様が集結しコラボレーションをしてくださるとのことで大変光栄に思いますし、日本の誇るアニメやゲームといった素晴らしい文化をBATTLE OF TOKYOを通して世界に広めることができるきっかけになるのかなと思います!

今回開催される「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」を通して、BATTLE OF TOKYOファンの皆様、そしてLDHファンの皆様にBATTLE OF TOKYOをさらに知ってもらい、楽しんで頂ければ幸いです!!

 

THE RAMPAGE 川村壱馬

この度「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」を開催して頂きありがとうございます!

漫画、アニメ、ゲームと言えばもう僕にとっても、人生に欠かせない、人生一部とも言えるもの…その世界、ジャンルで第一線でご活躍されているクリエイターの皆様がコラボレーションしてくださり光栄でございます!!

このようなご縁を皆様本当にありがとうございます。

BATTLE OF TOKYOと言っても、まだまだ伝わっていない部分も多いかと思います。

これをきっかけに、より物語を深掘りしたり、ご興味を持ってもらえる機会になれば大変嬉しく思います。

僕も自身のキャラクターLupusをクリエイターさんが描き下ろして頂いたものを拝見した時感激しましたし、今後もどんな展開がなされていくのか僕自身も改めて楽しみになりました。

どうぞお楽しみください。

 

FANTASTICS 世界

「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」開催おめでとうございます!

そしてありがとうございます!

今回はまた新たな挑戦という事で、本当にたくさんのクリエイターの皆様に集まっていただき、夢のような事が現実に起こってしまったのではないかと思います。

クリエイターの皆様には感謝と尊敬の念が止まりません。

皆様が知っているクリエイターさんもいらっしゃれば、今回の超拡張展で初めてみる方もいらっしゃるかと思います。

それこそまさにあなたの人生を超拡張する事に繋がるかもしれません。

僕らが作品の中で演じているキャラクターがクリエイターの皆様の手によって新たな表現をイラストの中から魅せてくれる。

面白いチャレンジをしますよね、BATTLE OF TOKYOは(笑)

僕も個人的にとっても楽しみでした。

この超拡張展が、ファンの皆様にとってBATTLE OF TOKYOの新たな面白さを知っていただくメモリアルなイベントになると、心から嬉しいです。

是非それぞれの楽しみ方で、たくさんBATTLE OF TOKYO楽しんでください!

世界としてもテクウとしてもまたいつか皆様にお会いできる日を楽しみにしております!

 

BALLISTIK BOYZ 松井利樹

この度、「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」を開催して頂きありがとうございます。

そして、おめでとうございます!

プロフェッショナルな方々とこの様な形でコラボレーション出来ることが凄く光栄ですし、日本のエンターテイメント業界に新しい形で、力を合わせて発信できること大変嬉しく思います。

BATTLE OF TOKYOの今後の展開が自分自身もすごく楽しみですし、この新しいスタイルのエンターテイメントが、沢山の方に届くことを心から願っております。

自分自身のキャラクター" X "を見た時は不思議な感覚と共に、とても感動しましたし、本を読んだ後は、毎回今後の展開がとても楽しみになっています。

とても面白い新しいエンターテイメントだと思いますので、皆様も是非今後の展開を楽しみにしてくださると嬉しいです。

引き続き、BATTLE OF TOKYOをお楽しみください。

 

PSYCHIC FEVER 半田龍臣

「BATTLE OF TOKYO 超東京拡張展」開催おめでとうございます!

そして皆様ありがとうございます!

今回は沢山のクリエイターの方々が、BATTLE OF TOKYOのキャラクターを、それぞれの視点で描いてくださり、本当に素晴らしい作品だらけです!僕自身も絵を見るのが大好きなので、こういう見え方もあるんだなと感じて、新たに気づく部分もあり、とても幸せでした!

自分はHANKICHIというキャラクターで、本の中では、性格は少しフワフワしているけど、戦うと機械を操れるすごいキャラクターになっているんですが、今回の絵を見た時にカッコいい!!と素直に思いました!!

僕的には少し可愛い感じなのかなと思っていたのですが、こんなにカッコよくしていただき感謝しかありません!

この作品を通してまたBATTLE OF TOKYOを好きになっていただけたら僕達も嬉しいですし、今回の企画を通してこれからの可能性も広がったと思うので、今後の展開も楽しみにしていただけたら嬉しいです!

そして他にもグッズやコラボレーションカフェなどもありますので、是非足を運んでいただけたら嬉しいです!!

これからも龍臣そしてHANKICHIの応援もよろしくお願いいたします!

 

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deadmanが19年ぶりとなるニューアルバム『Genealogie der Moral』の収録曲「静かなくちづけ」のミュージックビデオを公開した。また、3月30日より同楽曲のサブスクリプションでの先行配信も発表となった。

アルバムと同じく19年ぶりの制作となるMV「静かなくちづけ」は、“deadmanらしい”と言える映像美を備えながら、彼らが発する歌詞の世界感をも忠実に生かした秀逸な映像に仕上がっている。

そして、現在のサポートメンバーである、kazu(Bs)、晁直(Ds)もMVに参加。長いアーティストキャリアを経て“バンドとは?”を熟知した彼らの参加がこのMVにおいて更なるバンド感を増幅させる要素となっている点も見逃せない。

また、アルバムの発売を記念して、インストアイベントとして全国ツアーに並走してサイン会も開催される。このサイン会にもサポートメンバーであるkazu(Ba)、晁直(Dr)の参加も決定した。東京以外でこのようなイベントが実施されるのも19年振ぶとなり、かつサポートメンバーも登場するというレアなイベントも見逃せない。

2024年には、今回書き下ろされた新曲で占められたニューアルバムのリリース、「今後の配信は一切無い」と断言されたリテイクアルバムの発売、そしてそのアルバムのフォローアップとなる全国ツアーを展開と、疾走を続けるdeadman。「最新のdeadmanが、最高のdeadman」と言い切れる彼らの動きに注目していてほしい。

 

>>deadman インタビュー https://spice.eplus.jp/articles/327429

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今年1月にメジャー1stアルバム『The Heart Tree』をリリースし、2月から全国29公演に及ぶツアーを行っているDEZERTが、3曲入りのデジタルEP『The Heart Tree ~unplugged selection~』を4月3日(水)にリリースすることを発表した。

アルバム『The Heart Tree』は、インディーズ時代から培ってきた代表曲に新曲が加わった、まさに“今のDEZERT”を凝縮した一枚となっており、ヴィジュアル系のみならず多くのロックリスナーや関係者からも支持を受け、オリコンのアルバムチャートで上位にランクイン。各配信サイトのアルバムランキングでもTOP10に名を連ねる等、フィジカルのみならずデジタルでも結果を残している。

4月3日にリリースすることが発表されたデジタルEP『The Heart Tree ~unplugged selection~』は、そのアルバム『The Heart Tree』から「The Heart Tree」「僕等の夜について」「Hopeless」の3曲をセレクトしてアンプラグドバージョンとしてレコーディングしたもの。一旦完成したサウンドを変えることによって深みと切なさが増したボーカル・千秋の歌声が、歌詞の世界観とメロディーの秀逸さを際立たせる仕上がりとなっているという。

今回の配信では、メンバーのデジタルサイン入りジャケット写真がプレゼントされるほか、抽選でメッセージボイスが当たるクラウンミュージックストア限定盤も発売されるので、そちらもチェックしてほしい。

また、ツアーファイナルとなる6月22日(土) 三郷市文化会館大ホールでのワンマンライブ『DEZERT LIVE TOUR 2024 “The Heart Tree” 【TOUR FINAL】 -僕等の夜について編-』のオフィシャルファンクラブ『ひまわり会』チケット先行受付も本日3月29日より開始している。

なお、DEZERTは年末12月27日(金)に、日本武道館でワンマンライブを行うことが決定している。

 

>>DEZERT インタビュー https://spice.eplus.jp/articles/327299

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andropが6月6日(木)に、EX THEATER ROPPONGIにて『-15th Anniversary Special Live- androp presents "A+"「androp ✕ go!go!vanillas」』を開催する。

15周年を記念する対バンライブ『-15th Anniversary Special Live- androp presents "A+"』。対バン相手はデビュー10周年イヤーとなるgo!go!vanillasで、意外にも今回が初顔合わせとなる。

チケットはスタンディングと指定席があり、3月30日(土)からファンクラブ先行受付を開始。一般先行受付は4月13日(土)から開始となる。

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シェイクスピア全37戯曲を上演することを目指して1998年にスタートした“彩の国シェイクスピア・シリーズ”。演出家・蜷川幸雄が亡くなったあとは、芸術監督のバトンを引き継いだ吉田鋼太郎がラスト5作品を演出することで2023年にシリーズは完結することができた。しかし、その後も吉田の演出によるシェイクスピアを引き続き観たい! との声が相次ぎ、ここに待望の“彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd”が新たに立ち上がることとなった。
その記念すべき第一弾は誰もが知る、シェイクスピア四大悲劇のひとつでもある『ハムレット』だ。キャストにはハムレットに柿澤勇人が扮するほか、北 香那、白洲 迅、渡部豪太、豊田裕大、正名僕蔵、高橋ひとみという新鮮な顔合わせが実現する。演出の吉田と、ハムレット役の柿澤、フォーティンブラス役の豊田、三人が揃うのは初顔合わせとなるこの日、SPICEでは独占取材を決行! 現在の心境や作品への想いなどをたっぷり、語ってもらった。
 
ーー今回“彩の国シェイクスピア・シリーズ2nd”がこの『ハムレット』からスタートすることになりましたが、まずは全体的なキャスティングの狙いと、柿澤さんをハムレット役に、豊田さんをフォーティンブラス役に決めたポイントなどをお聞かせいただけますか。

吉田:全体のキャスティングに関しては、こうして集まっていただいたメンバーの顔ぶれを見ると意外とシェイクスピア経験者が少ないんですよ、決してそれを狙ったわけではないんですけどね。僕と柿澤くんと、あとは『終わりよければすべてよし』で一緒にやらせてもらった(正名)僕蔵くんくらいじゃないですかね。僕蔵くんにしても、いい意味であまりシェイクスピア慣れはしていませんし。

ーー結果的に、そうなっていた。

吉田:そうなんです。そして『ハムレット』という芝居自体はすごく密な芝居で、いわゆる大立ち回りシーンがあるとか、血がものすごく流れるシーンがあるような、スケールの大きい芝居ではないんです。デンマーク王室の話ではあるんだけれども、あくまで家庭内で起こる出来事が描かれているので。ということはそれぞれの人物の関係性を、緻密に表現していかないといけなくなる。すると、いわゆるシェイクスピア作品に必要だと言われている、大きな声とか朗誦法というものはあまり必要ではなく、むしろ映像の時のリアルな演技のほうが『ハムレット』を表現するのには合っているようにも思ったりします。そして柿澤くんのハムレット役に関しては、イギリスに“シェイクスピア役者”とか“ハムレット役者”という言葉が存在するほど、ハムレットを演じるのは難しいとされているんです。できる人とできない人、あるいはやりたい人とやりたくない人とに分かれるというかね。「あんな大変な役は、まっぴらごめんだ」なんて言う人も、実際いますから(笑)。

吉田鋼太郎

吉田鋼太郎

ーーハムレット役に必要となるのは。

吉田:まず圧倒的に、体力が必要です。ノーカットだとおそらく4時間半から5時間かかる芝居なので、その間ずっと舞台に出ずっぱりでやり通すことのできる、しかも公演期間も長いとなれば、最後までやり抜ける体力があるかどうか。その体力も単に力が強いとか筋肉があるというのではなく、俳優としてのブレスがきっちり取れるかどうかのほうが重要です。息があがっちゃったら、演じられませんからね。そういう基本的な技術をしっかり持った上で、大事なのが持久力と瞬発力。ハムレットは、まさに持久力と瞬発力を入れ替え続ける役でもあるので、そこできっちり表現できるか。さらに大切なのが、品。やはりデンマーク王子ですからね、ある程度はちゃんと王子に見える人となりが必要なんです。その点でも、柿澤くんはピッタリでしょう。

ーー確かに、ピッタリだと思います。

吉田:今、ハムレットが演じられる俳優は柿澤勇人以外、僕には思い当たらないですね。それから豊田くんに関してはご一緒するのも、直接お会いするのも実は初めてで。

ーー今日が初めまして、だったんですね。

吉田:映像作品も拝見していましたので、ぜひいつか一緒にやらせていただきたいと思っていたんです。そうしたら今回、出ていただけることになったので非常にラッキーでした。フォーティンブラスって、ほとんど舞台に出てこない役なんですよ。出番が少ないということでは豊田くんには非常に申し訳ないんですけど、やはりこちらも王子ですから品がなければダメですし、物語の中ではハムレットが唯一認めている人物でもあり、それにこの芝居の最後を締める役でもある。具体的な描き方はこれから稽古でいろいろ探していきますけれども、キーパーソンであることは間違いありません。存在感と演技力が求められる上、お客様を惹きつける魅力がないと絶対できない役ですから、これまた豊田くんにはピッタリの役だなと思っています。

ーー柿澤さんは今回『ハムレット』に出ることになって、現在の心境としてはいかがですか。

柿澤:僕が鋼太郎さんと初めてご一緒したのが『デスノート THE MUSICAL』(2015年)で、そこからずっと公私ともに仲良くさせていただいていて。自分も鋼太郎さんみたいになりたいと憧れを持ち、今までやってきたんですが、ずっと前に『ハムレット』の話になったことがあったんです。鋼太郎さん自身もやられていたし、大好きな作品なんだということをお聞きして。その後、二人芝居の『スルース~探偵~』(2021年)をやった時に「カッキーなら、ハムレット役ができるんじゃないか」と言っていただき、嬉しくて、ぜひやらせてほしいと言いました。

柿澤勇人

柿澤勇人

ーー「やりたいです!」と名乗りをあげた?

柿澤:そうです(笑)。だけど今、こうしていざ本格的な稽古開始も目前となり、上演台本も出来上がり、いろいろと本気で準備をしなければいけない時期になってくると、マジで震えてきました!(笑) ヤバイですよ、これは。それと同時に、鋼太郎さんだけでなく(藤原)竜也さんにしても、役や演出は今回のものと違うとはいえ『ハムレット』という作品をやり遂げ、しかも国内だけでなく海外でも上演して成功させてきたということが、どれだけすごいことなのかを思い知らされました。決して今回も、楽な道ではないと思います。今はとにかくスタッフやキャストのみなさんを信じて、やるしかないなという気持ちです。

ーー豊田さんは、『ハムレット』でお声がかかった時のお気持ちは。

豊田:僕はシェイクスピア作品どころか舞台そのもの初めてで。そんな僕を選んでいただけたことがまずは本当に嬉しかったです。出演のお話は、たまたま原宿駅のホームにいる時に聞きまして。結構、人がいる時間帯だったのに、つい「本当ですか!」と大声で叫んでしまい、周りの人にさんざん見られて恥ずかしい思いをしました(笑)。僕、本当に初心者というか、お芝居をすること自体もまだまだで、やり始めてまだ3年くらいしか経っていないので。この大先輩方にどうにかして食らいついて、一生懸命やっていければなと思っています。

豊田裕大

豊田裕大

ーー今回は上演台本も吉田さんが作られるとのことで。どういうところを狙ってまとめられたんですか?

吉田:先程も言ったようにノーカットでやると4時間半くらいかかるので、それをまず3時間にはしなきゃいけない。長くても休憩入れて3時間半。それが第一の目標で、あとは戯曲を読まれると分かると思いますが、明らかにいらないなっていう箇所があるんです。つまり、おそらくここはシェイクスピアの筆ではないだろうなと思われるところが確実にある。そこは全部カットしました。それから、最初から最後までハムレットは駆け抜けていきますから、その疾走感を削ぐようなところもカットしています。

ーーでは、とても観やすい『ハムレット』になっていそうですね。

吉田:僕のマネージャーがカットされた台本を読んで「すごくわかりやすかったです」って言っていましたから。たぶん、すごくわかりやすくなっていると思います(笑)。そもそも『ハムレット』は、すごく良くできた芝居なので。筋立ても、起承転結も、何を言いたいかも含め、シェイクスピアの中で一番わかりやすい芝居になっているんですよ。

ーーまだ本格的な稽古は先ですが、現時点で柿澤さんはハムレット役をどう演じたいと思われていますか。

柿澤:いや、まだ全然わからないですね。もちろん、自分でこうしたいなというのはありますが、実際に3時間ないし3時間半で芝居を通した時、自分には何が見えているだろうかということは、やってみないと何も見えないです。まだ台本を読んだだけではわからないことだらけですし。だけど自分の人生と重ね合わせてみると、僕の場合はたったわずか36年ではあるけど「この気持ち、めちゃくちゃわかる!」と思えるところも沢山あるんです。『ハムレット』ならではのものすごい独白がボンボンと出てくるところも、声に出してセリフを言ってみると意外とハマる瞬間もあったりして。難しい言葉やふだんでは使わない言葉も多いですが、それを何とか自分自身の実感として口にすることができたら、役者としても少しは成長できるのかなとも思ったりしています。

(左から)豊田裕大、柿澤勇人、吉田鋼太郎

(左から)豊田裕大、柿澤勇人、吉田鋼太郎

ーー豊田さんは、稽古開始に向けて現在のお気持ちとしてはいかがですか?

豊田:僕はとにかく初めてのシェイクスピアですし、戯曲というものを全部通して読むこと自体も初めてで。まず思ったのは「こんなにも長い本がこの世に存在していたのか!」ということでした(笑)。

一同:(笑)。

豊田:その驚きと同時に「この作品を主演でやれるなんて、ハムレット役の柿澤さんは化け物だ!」とも思いました。

吉田:それは、そうかもしれないなあ(笑)。

豊田:それから『ハムレット』の戯曲は翻訳が違うもの2冊読んだあとで今回の上演台本を読んだのですが、本当にわかりやすくなっていた印象が強かったです。稽古に向けて、できるだけ理解してから進んでいきたいと思います。フォーティンブラス役については、最初に読んだ時には正直「あれ? これだけしか出てこないんだ?」と思ったんですけど。でも他の『ハムレット』の舞台を観てみるとみんな大体同じくらいの分量なんですよね。だけど絶対に出てくる役ではあるので、フォーティンブラスの存在意義を自分なりに見つけてみたいと思っています。

ーー芝居を締める立場ですから、とても大事な役ですよね。

吉田:そうです。すっごい大事な役ですよ。

柿澤:フォーティンブラスをやる人ってみんなスターになっていくと言われていますからね。

吉田:ああ、それはある。藤原竜也が20歳の頃にやった『ハムレット』の時は、小栗旬がフォーティンブラスだったな。

ーーそれは、豊田さんの今後の活躍も含め、非常に楽しみですね!

豊田:僕も楽しみです!(笑)

豊田裕大

豊田裕大

ーーお二人は今回やり遂げたいこととか目標などはあったりしますか。

柿澤:噛まずにセリフを言いたい、とか?(笑)

吉田:それは当たり前のことだろう?(笑)

柿澤:ハハハ。僕はこれもまだわからないですね。このお芝居を通してやってみた時、最後に自分は果たして何を思うのか。本当に想像してもまったくわからない。無になるのか、達成感があるのか。ただただ疲れた! と思うだけなのか(笑)。

ーーそれは本番の舞台を終えてみないとわからない感覚。

柿澤:本番も長期にわたるとなると、その数カ月の間にもいろいろなことが変わってきそうだし、できなかったことができるようになるかもしれない。

ーー確実に、新鮮な経験にはなりそうですね。

柿澤:絶対にそうなると思います。わかっていることをひとつ言うとしたら、この作品は自分にとって大きなターニングポイントになるということ。きっとターニングポイントどころじゃないな……人生が一変してしまうくらいの経験になると思います。

豊田:今、柿澤さんがおっしゃったみたいに、僕もまさにこの作品で人生が変わりそうです。こんなに素晴らしい役者の先輩方がいらして、舞台でみっちり役を作り上げる経験がご一緒できるなんて非常に贅沢だということ以外、何も言えないというか。必死に食らいついていくしかないですね。あとはとにかく物事を新鮮に受け止めるということと、あまり構えすぎず、柔らかく、みなさんを頼りながら、自分でも一生懸命がんばっていきたいです。

ーー初共演の方ばかりですか?

豊田:みなさんと、初めましてです。

柿澤:僕も、鋼太郎さん以外の方とはほぼ初めましてです。北 香那さんともドラマで同じ作品に出ていたというのはありますが、お芝居を一緒にしたことはないですね。僕が鋼太郎さんと初めてシェイクスピアをやらせてもらったのは『アテネのタイモン』(2017年)という作品だったんですが、あの時は蜷川組と言われる人たちと、鋼太郎さん主宰の劇団AUNの人たち、それぞれ育ってきた環境が違う者同士による芝居の戦い、演技バトルがすごく面白かったんですよ(笑)。今回はまたあの時とも違う顔ぶれですから、一体どうなるんだろう? と思っています。

柿澤勇人

柿澤勇人

ーー演出については、今回どんなことをやろうと思われていますか。

吉田:シェイクスピアには実はハムネットという息子がいて、11歳で夭折しているんです。僕はシェイクスピアを観始めた18歳の頃にその事実を知ってから、ずっと気になっていたんですよ。なぜ、自分の息子に似た名前の『ハムレット』という作品を書いたのか、何か関係があるのかな、と。それで僕なりに本を読みこんでいくうち、最近少しわかってきた気がするんです。よく『ハムレット』ってどういう芝居かを簡単に語る時、自分のお父さんを殺された王子が悩み、どうやって復讐するかを考え抜いて、最後に復讐を遂げるヒーローの話だとされることが多いですが、僕はまったく違うと思うんです。要するに彼は復讐すると言い、激しい決意を胸に抱いてるくせに、ずっと復讐しないんです。結果的には、ハムレットって復讐しない人の話になるんです。人類最初の殺人であるカインとアベルの時代から、今現在も続く争いごとまで、人が人を殺すという行為は絶えたことがありませんが、もちろんシェイクスピアがこの作品を書いた時代もそうだった。ということは、つまり自分の息子には人を殺すことに対して躊躇する人になってほしかったのでは、と思ったんです。優しさを持ち、まずは知性で考えられる人、そういう人になってほしいという願いを込めたのではないか、と。だから『ハムレット』というこの芝居は、復讐を成し遂げるヒーローの話ではなくて、絶対に人を殺してはいけないよということを言い続けている話のような気がしてならない。逆説的な見方ですけどね。でももちろん、ハムレットは劇中でそんなことは一言も言いません。ずっと、いかに、どうやって殺すか機会を狙い続けている。でも最後、芝居を観終わった後に「あれ?」とお客様に気づいてほしいんです。「これは復讐劇なのか?」と、やっぱりちょっと思ってほしいんですよ。ひどい人間が仕掛けた罠にハマって、みんな死んでいってしまう。言ってみればそれは偶発的なことで、意志とは関係ないところで起きてしまうことなので。

ーー確かにそうですね。

吉田:いかに人間が人を殺したらいけないと語っていたとしても、偶発的なことは必ず起きるし、自分の意志だけではどうにもならないこともある。それも、ちゃんとシェイクスピアは織り込んでいるわけです。綺麗事だけでなく、人は死ぬ時は死ぬんです、と。ドストエフスキーでもトルストイでも、夏目漱石でも芥川龍之介でも、物を書くことの基盤は大概、希望を語ろうとしていますよね。その希望を語るという意味でも、『ハムレット』は最高峰の芝居なんじゃないか、と思うんです。で、言ってしまえば、その遺志を継ぐのがフォーティンブラスなんですよ。そう考えると、フォーティンブラスがその遺志を受け継いだ先には、もしかしたら戦争がない世界になっていくのかもしれない。フォーティンブラスって、そういう役だという気がしますね。

吉田鋼太郎

吉田鋼太郎

ーーフォーティンブラスがそれを受け止めて持って行こうとする姿に、お客さんが光を感じられたらいいですね。

吉田:そういうことです。

ーーでは最後にお客様に向けてそれぞれ、お誘いの言葉などをいただけたらと思いますが。

吉田:今申し上げてきました通り、世界に数ある戯曲の中でも、おそらく一番面白い芝居だと思います。これは本当に観ておかないとダメ!(笑) 観て損はしませんから来てください、なんて消極的なことではなく、観ておかないとダメな作品です。しかもそれを柿澤勇人という、当代随一のハムレット役者がやるんですから。プラス、そのハムレットのために集まってくれたのが、あたかも、この芝居のためにいらっしゃるような俳優陣たちですので。これまた、なかなか二度と観られない『ハムレット』になるかと思います。シェイクスピアが面白いとか面白くないとか、退屈だからとか、そんなことは関係ないです。とにかく一回観てください、必ず面白いですから。

ーー力強いお言葉です(笑)。豊田さんは、いかがですか。

豊田:なんだか同じようなことばかり言っていますが、初めての舞台なので、やはり僕自身もたくさんの人に観てもらいたいと思っています。シェイクスピア初心者の僕でもこの『ハムレット』はなぜかスッと腑に落ちるっていうか、とても面白い。全部を言葉にしろと言われたら、まだそれはできないんですけど、きっと初めてご覧になる方にもきっと面白い物語になっているはずだし、さらに吉田鋼太郎さんが作った、この台本ならとても観やすくなっていると思うので、ぜひ僕と一緒の初シェイクスピアの方も来てくださると嬉しいなと思います。

ーーでは柿澤さんに、締めていただきましょう。

柿澤:僕自身ずっと夢見ていた、やりたかったけど、やれないんじゃないかとも思っていた『ハムレット』です。念願が叶ったわけですが、今は本当に「嬉しい!」とか「楽しみ!」という気持ちは一切なく「マジでちゃんとやらないとヤバい!」と思っています(笑)。万が一、手も足も出なかったら本当に役者を辞めるつもりでいます!

吉田:ハハハ、それはすごい覚悟だな!

柿澤:いや、本当にです! ですから、その様を楽しんでいただければいいなとも思いますし、最後には豊田裕大くんがすべてをひっくり返して全部持っていくはずなので、その様も大いに楽しんでいただければと思います(笑)。

(左から)豊田裕大、柿澤勇人、吉田鋼太郎

(左から)豊田裕大、柿澤勇人、吉田鋼太郎

 

■柿澤勇人
ヘアメイク :松田蓉子
スタイリスト:五十嵐堂寿
衣装クレジット:
ジャケット11万円、パンツ5万5000円(ともにジョゼフ オム/オンワード樫山お客様相談室 TEL 03-5476-5811)、コート12万1000円(キャバン/キャバン 丸の内店 TEL 03-3286-5105)、他スタイリスト私物
※全て税込価格

■豊田裕大
ヘアメイク :松田蓉子
スタイリスト:杉浦 優

衣装クレジット:
ジャケット5万5000円、パンツ3万3000円(ともにネフォロジスト/ネフォロジスト  http://nephologist.com/)、インナー8800円(フォルトゥナオム/ラッキージャパン TEL 03-6322-5268)

 

取材・文=田中里津子    撮影=中田智章

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ドワンゴジェイピーオーディオブックより、2.5次元舞台やミュージカルで活躍する俳優の小西成弥・稲垣成弥主演で、オリジナルボイスドラマ『灰とカセットテープ』を、2024年3月29日(金)に第1話をリリースする(全3話)。

本作は、映像を中心に横断的コンテンツプロデュースを行うクリエイティブ・プロダクションCreative Hub Swimmy(石川竜之介[脚本]、前川達哉[演出]、原田季和[編集])によるオリジナル作品。
今回、俳優の小西成弥・稲垣成弥主演で、オリジナルボイスドラマとしておくる。

なお、『灰とカセットテープ』はボイスドラマの世界を補完するマルチメディア展開も6月より予定。詳細を待とう。

【あらすじ】
「1999年。そのカセットテープに残っていたのは、懐かしい歌声だった」
表舞台から姿を消したミュージシャン・倉津フミヤ(小西成弥)によって語られた、“ある曲”を巡る日々の音声記録。それを入手したかつてのバンドメンバー、折原翔(稲垣成弥)によって紐解かれていくフミヤの秘められた想い。時代を交錯して織り成される、青春の埋葬と昇華の物語。

 

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長谷川寧が2021年より行ってきた染空間ミュージカル『人間失格』。24年12月には長谷川寧演出・振付による新作『インファナル・アフェア』も控える中、『人間失格』の中国国内ツアーが継続することが発表された。

Original musical No Longer Human's Official trailer

2023北京・天橋音楽劇年度盛典(2023北京・天橋ミュージカル年間式典)では長谷川寧も年間優秀ミュージカル演出家賞(許チュウヨウ・長谷川寧)及び年間優秀ミュージカル振付家賞を受賞し、その他にも年間優秀ミュージカルプロデューサー・脚本・照明・優秀ミュージカル男優・有望ミュージカル俳優・年間有望ミュージカル女優等各賞を受賞した本作が、今年も帰ってくる。

長谷川の中国での最初のミュージカルとなった『白夜行』も未だ上演中の中、『人間失格』では今年は新たなキャストとして叶麒圣も加わり、再び本作が中国を駆ける。

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宝塚歌劇団 花組が2024年5月25日(土)東京宝塚劇場にて上演する、ミュージカル『アルカンシェル』~パリに架かる虹~と、翌26日(日)に上演する宝塚歌劇団 花組トップスター 柚香光の退団公演、「柚香光ラストデイ」の模様が全国各地の映画館にてライブ・ビューイングされることが決定した。

上演される作品は、フランスが生んだレビューの灯を消すまいと立ち上がった一人のダンサーを主人公に、パリ解放に至る過程をドラマティックに描き上げる物語『アルカンシェル』~パリに架かる虹~。宝塚歌劇ならではの絢爛豪華なレビューシーンを交えてお届けする、大作ミュージカル・レビュー。そして、26日(日)の公演は、東京宝塚劇場千秋楽をもって宝塚歌劇団を退団する花組トップコンビ 柚香光、星風まどかのラストステージとなる。ライブ中継では、公演はもちろん、サヨナラショー、退団者挨拶まで余すことなく届ける。

宝塚歌劇 花組東京宝塚劇場公演『アルカンシェル』 ライブ中継

宝塚歌劇 花組東京宝塚劇場公演『アルカンシェル』 ライブ中継

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2024年3月28日(木)より東京・新国立劇場にて、RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』の日本初上演が開幕し、4月14日(日)まで上演中だ(2024年4月27日(土)より京都・ロームシアター京都でも上演)。『TIME』は2021年、世界最大級の舞台芸術の祭典「ホランド・フェスティバル」(オランダ・アムステルダム)で世界初演され高評価を得た舞台作品で、音楽は2023年に逝去した坂本龍一さんが生前全曲を書き下ろした。「時間」をめぐって、パフォーマンスとサウンド、インスタレーション、ビジュアルアートが融合し、夢幻的世界を立ち上げる。東京公演に先立って行われた公開ゲネプロの模様をお伝えする。

■坂本龍一さんの一周忌に開幕する、不思議な因縁

坂本龍一さんが世を去って1年。ちょうど命日にあたる2024年3月28日(木)、坂本さんが生前に全曲を書き下ろした舞台作品の日本初上演が幕を開けた。坂本さんの生前から決まっていたそうだが、不思議な因縁を感じずにはいられない。と同時に、坂本さんと一緒にコンセプトを手がけ、ビジュアルデザインを担った高谷史郎(ダムタイプ)をはじめとする名だたるスタッフ&出演者による新たなコラボレーションに触れることができるという期待感も覚える。初日前夜、新国立劇場中劇場の客席で、静かに、しかし少し高揚した気分で開演を待った。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

暗闇のなか、雨音がしている。ステージは水で満たされている。冒頭、下手から宮田まゆみ(笙奏者)が笙を奏でながらあらわれる。悠久の時を感じさせるような、すべてを包みこむような響きがこだました。続いて、上手から黒いローブをまとった「男」(田中泯)が登場。一体何者か。そうこうするうちに、田中の「こんな夢を見た」に始まる夏目漱石「夢十夜(第一夜)」の語りとともに場面が展開する。下手に「女」(石原琳)が横たわっている姿が浮かぶ。背後のスクリーンには、「男」の動きと同期した映像や「夢十夜(第一夜)」の字幕が写し出される。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

■夢幻的で、遠い記憶を呼び起こすような「時間」の流れ

上手のベンチに「男」が横たわると、田中の語りによって能「邯鄲」が物語られた。中国の蜀の国の盧生という男が主人公で「一炊の夢」のエピソードで知られる。また、同じく中国の荘子による説話「胡蝶の夢」も引用された。ここでは、夢にまつわる言葉・イメージが、重層的に提示されていく。静謐で引き締まりつつ幽玄を感じさせる舞台は、夢幻能のようでもある。いにしえの時代から今にいたるまで変わらぬ、大いなる「時間」の流れに身を置くことができた。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

音楽には笙や能管がもちいられ、観る者の遠い遠い記憶を呼び起こすような根源性がただよう。音色をしっかりと感じさせつつ、開演前から印象的な雨の音ともおのずとなじみ、自然と一体となったかのようである。高谷とともにコンセプトから立ち上げただけに、繊細な音響や照明、映像と絶妙に調和して、劇場空間全体に豊かに響いて包みこむようであった。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真           撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

■「人類」を生きて踊る田中泯、込められたメッセージとは

「男」の田中泯の踊りと存在が忘れ難い。田中は出演を依頼された際に坂本から「初めて水を見る人類の一人を演じ作品の内にい続けてほしい」と言われたと振り返る(田中泯コメントより)。国際的なダンサーである田中は、1974年から独自のダンス、身体表現を追求する。また、2002年の映画「たそがれ清兵衛」(山田洋次監督)以降は、俳優としても名高いのは周知のとおりだ。『TIME』では、まさに生の根源に触れた「人類の一人」として、夢とうつつの間に自然と「い続け」るのである。瞬間瞬間を生きる田中の生命の踊りが「時間」と響きあう。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真           撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

70分に及ぶ上演時間の最後、ふたたび下手から宮田があらわれる。そして――。静けさのなかにも、大いなる「時間」の流れを体感し、何とも言えない余韻を味わえた。人類が歴史を重ねても変わるものと変わらないものがあろう。劇場に足を運び『TIME』に接すると、坂本さんが遺し託した、さまざまなメッセージを肌を通して受け止めることができるに違いない。

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

RYUICHI SAKAMOTO + SHIRO TAKATANI『TIME』舞台写真          撮影:井上嘉和

高谷史郎(ビジュアルデザイン+コンセプト) コメント

1年前に坂本龍一さんの訃報を知らされたとき、衝撃を受けその現実が受け入れられませんでした。そして亡くなった日が奇しくも『TIME』東京公演の初日である3月28日だということに言葉を失いました。
パルコさんから『TIME』を東京で上演したい、というオファーをいただいたとき、坂本さんも僕もとても嬉しかったし、とても楽しみにしていました。
人生も舞台も一期一会です。坂本龍一さんが遺してくださった素晴らしい音楽、哲学、この素晴らしい舞台に、多くの方が会いにきてくださいますように。

田中泯(ダンサー) コメント

本公演が坂本龍一さんの命日と重なる奇遇、ご縁に身が引き締まる思いでおります。坂本さん高谷史郎さんとで練り上げられたこの舞台作品に登場する「人間」として私が選ばれたことは、この上ない喜びと思い、迷わず参加を引き受けたものでした。

坂本さんより「初めて水を見る人類の一人を演じ作品の内にい続けて欲しい」と言われました。

人間の諸元の姿、想い、営み、人類のたどってきた長くて短い歴史の明暗、その上で世界の現在。政治・経済に振り回される世界の現在。人間らしさや本当の人間を求めることはただのロマン・夢想なのでしょうか。本物を愛し欲求していた坂本さんの考える「水の循環」で成立する私たち自然・人間の営みと地球ならではの「時の機微」TIME。

こんな作品の内に漂い佇む人でいることは、私にとってはオドリそのものだと思えたのでした。

オランダ、台湾、と2つの国でも公演を経て、舞台は変化し続けている、と思います。日本の観客の眼前に、劇場の空間に身を晒し、坂本さんの魂に触れる夢中のひとときです。

ご来場の皆様には、是非是非、心も身体も開いて、『TIME』をお楽しみ頂きたい、と願っております。

宮田まゆみ(笙奏者) コメント

オランダ公演、台湾公演を経て、坂本龍一さん、高谷史郎さんの世界に私自身段々深く入りこんできたように感じます。坂本さんの音楽の流れと高谷さんの舞台の空間、田中泯さんの存在、その中に居られることが私にとって大きな喜びです。日本でご覧下さる皆様とそれを分かち合えたらこの上なく幸せです。
初日が3月28日になることは前から決まっていたのだと思いますが、坂本さんのご命日と重なったと知った時はほんとうに驚きました。坂本さんが見守る中、いっそう充実した舞台になるに違いありません。

石原淋(ダンサー) コメント

坂本龍一さん、一年がたちましたね。今日から日本で『TIME』が上演されます。叶うことなら観てもらいたい。いや観てくれているだろう。きっとどこかにいるだろう。資本主義に処理されるようなアイデンティティーよりも、植物も含めたもっと他の生き物のように、互いの命の境界線を感知し共存しうるような方に出会うことは稀だ。語弊があるかもしれないが世界の坂本龍一では自分にとってはなく、師匠の田中泯を通して坂本さんに出会え、そして旅だたれた後の喪失感は想像以上にのしかかった。日常的にやりとりをすることができたことも宝物です。『TIME』の中で必死に存在! 頑張ります。

取材・文=高橋森彦

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ちゃんみなの新曲「FORGIVE ME」が、4月2日(火)スタートの火曜プラチナイト・ドラマDEEP『肝臓を奪われた妻』(日本テレビ系毎週火曜24時24分〜24時54分)の主題歌に決定した。

『肝臓を奪われた妻』は「LINEマンガ2022年間ランキング(女性編)」6位にランクイン、国内累計閲覧数1億3,300万viewsを超える大人気作品を、伊原六花地上波連続ドラマ初主演でドラマ化。

物語は、最愛の夫に騙され、義母の肝臓ドナーとさせられてしまった主人公・北山優香を軸に描かれる復讐劇。母親からの愛を一心に受け、献身的で優しく育った優香は、バイト先で出会った好青年・光星とスピード結婚をする。しかし光星の本当の目的は、家族ぐるみで優香を彼の母の肝臓ドナーにさせること。その思惑に気が付かず、肝臓移植手術に臨んだ優香。移植後、離婚を強いられ追い出された彼女は、光星たちへの復讐を心に誓う。

『肝臓を奪われた妻』(C)日本テレビ

『肝臓を奪われた妻』(C)日本テレビ

主題歌起用にあたってのちゃんみなからのコメントは以下の通り。

ちゃんみなコメント

この度、新曲「FORGIVE ME」を主題歌に起用頂きありがとうございます。
衝撃的なドラマタイトルに驚きましたが、人を信じられなくなったけれども、もう一度、愛を信じ、前を向いて歩いていく。というストーリーに、「FORGIVE ME」がドラマ映像と共にどのようにリンクしていくのか楽しみです。

ちゃんみなは、去年12月よりスタートした自身初の全国6都市・8公演『AREA OF DIAMOND 2』の一般発売が1分で完売。そして初めてのアジア単独公演(韓国・香港・台湾)も3月に開催し、大成功を収めた。『AREA OF DIAMOND 2』の集大成となる追加公演を、4月27日(土)・4月28日(日)と二日間にわたりぴあアリーナMM(神奈川)で開催。チケットは一般発売ですでに完売している。

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太田家が、4月19日に3rdアルバム『あいことば』を発売する。

この日は、結成から丸5年の記念日。アルバムには、この2年間の中で太田家が応援し続けてきた作品や企業とのコラボレート曲、タイアップソングを多数収録している。

ゲーム『SAMURAI MAIDEN -サムライメイデン-』のPRソング「言ノ葉ニ咲ク」。カフェ×農家で立ち上げた「ぎふカレー」プロジェクトの応援ソング「咖喱」。ラグビーの応援ソングとして生まれた「沈黙と歓声の間」。青春バンドTRPG「ストラトシャウト」とのコラボ楽曲「君と世界制服」。

さらに、ソーラン節をパンクアレンジした「パンクソーラン」では、MVの振付師に増井みお(ex.PASSPO☆)を迎え、太田家×増井みお×はっちゃけ隊×テアトルアカデミーのスペシャルコラボが実現。アルバムごとに収録しているギター太田エリカ様の最新インスト曲など、全部で11曲を収録。

太田家は、4月19日に渋谷REXで5周年記念ワンマンライブ『おおたの源 5!ゴー太田家』を開催する。渋谷REXは、太田家にとって初となるライブ会場。この日はチケットには、カレースプーンが付いてくることに加え、会場内ではカレー弁当の販売も行われる。

そして、パンクソーランのMVツアーと、6月には仙台、福島、神戸での遠征ライブも発表している。

5周年記念ワンマンライブ『おおたの源 5!ゴ-太田家』フライヤー

5周年記念ワンマンライブ『おおたの源 5!ゴ-太田家』フライヤー

 

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2024年3月28日(木)シアタートラムにて、『ポート・オーソリティ-港湾局-』が開幕し、舞台写真が公開された。

本作はアイルランドを代表する劇作家コナー・マクファーソンによる物語。代表作『海をゆく者』のアンサープレイとも受け取れ、いわば“海を視る者”とも称される。

勝負に繰り出す人生に対して、流れに身を任せ踏みとどまり、海を見つめる静かな生き方をした3人の男たちの心の声を人気・実力俳優たちのリーディングでおくる。

崎山つばさ

崎山つばさ

眞島秀和

眞島秀和

平田満

平田満

出演者は、進むべき道を決めかねている若者役に、崎山つばさ、西山潤、櫻井圭登、橋本祥平。ユーモアあふれる大酒飲みの中年役に、眞島秀和、山中崇。老人ホームで暮らす老人役に『海をゆく者』にも出演した平田満、大谷亮介。

21年にコナー・マクファーソン作『ダブリンキャロル』(出演:首藤康之、山下リオ、小日向星一)を日本初演をしたコンビ、常田景子の翻訳、荒井遼の演出で3月31日(日)まで上演。

マルチキャストによるリーディング。4つの組み合わせで、日本初演となる。

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2024年4月4日(木)~7日(日) 東京国立博物館 九条館にて、東京タンバリン『花に嵐』が上演される。

東京タンバリンは、高井浩子の劇作を本人演出のもと、上演することを目的に設立。現代人の陰を日常会話の中にあぶりだしていく物語を「演劇でしかできない表現」にこだわった演出で上演している。通常の公演だけではなく、1つの劇場で同時に2本の作品を上演する公演、街歩きをしながら演劇を鑑賞する公演、和をモチーフにした「わのわ」公演など、様々な企画を活かした公演も行っている。

「わのわ」公演は2015年5月にスタートした企画で、「和をモチーフに輪を広げていこう」というコンセプトのもと、茶道をモチーフにした演劇などを上演してきた。演劇を楽しみながらいつしかお茶の世界にいざなわれていく空間を作り上げ、終演後は抹茶とお菓子を楽しんでもらう。また、着物で来場された方は割引があるなど、演劇と着物と茶道のささやかなコラボを実現し、2019年にはフランス公演も行った。

2020年に上演した『さとうは甘い』には落語家の柳家喬太郎が出演。今回は講談師の一龍齋貞寿が参加し、講談とのコラボレーション公演となる。わのわ公演への出演回数も多い文学座所属の山崎美貴、劇団「クロムモリブデン」所属の木村美月、舞台・映像と幅広く活動する竹之内隆志をゲストに迎え、東京タンバリン劇団員の遠藤弘章、萩原美智子、青海衣央里、田中博士が出演する。

 
【あらすじ】
1990年、夫を亡くした榎本さくらは 0年振りに仕事に出る。
古い友人が営む日本料理菊池。
しかし、従業員にはなかなか受け入れてもらえず…。

山崎美貴 コメント

山崎美貴

山崎美貴

東京タンバリンの「わのわ」公演では、『花筏』『さとうは甘い』で「さくら」という名前の役をやらせていただきました。作品ごとに違う人物なのですが、今回も「さくら」役です。タイトルにもある通り、女同士のバトルという名の「嵐」が巻き起こる中で、今回はどんなさくらさんなのか、楽しみにしていただければと思います。今回は講談とのコラボということで、他ではなかなか見ることのできない新しい感じの演劇をお届けできると思います。昨年からアンバサダーを務めている東京国立博物館の九条館での公演ということで、会場の雰囲気も併せてぜひお楽しみください。

一龍齋貞寿 コメント

一龍齋貞寿

一龍齋貞寿

今回、初めて演劇公演に参加しています。講談と演劇、全く違う芸能だな、と日々のお稽古の中で感じます。講談は釈台があって座って語るので、釈台がなくて立ってお芝居をするなんて、恥ずかしくてどうしようという気持ちでいっぱいですが、作・演出の高井さんが講談をすごく勉強してくださったので、講談と芝居が非常に面白くコラボレーションされていると思いますし、初めての演劇が高井さんの作品でよかった、と思っています。演者とお客様の距離がとても近い空間で、講談とお芝居を身近に感じていただけると思いますので、ぜひ気楽に足をお運びください。

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ダンスをはじめとするパフォーミングアーツの創造環境を改善しつつ、優れた舞台作品を観客に届けるべく日夜東奔西走する舞台芸術プロデューサーがいる。その名は唐津絵理。愛知県芸術劇場エグゼクティブプロデューサー(※取材時の役職、2024年4月1日より愛知県芸術劇場芸術監督に就任)にしてDance Base Yokohama(愛称:DaBY デイビー)アーティスティックディレクターを務める。横浜・馬車道にあるDaBYとは「プロフェッショナルなダンス環境の整備とクリエイター育成に特化した事業を企画・運営するダンスハウス」(公式ホームページより)である。2020年6月のグランドオープン以来さまざまな画期的事業を展開し、唐津/財団が文化庁や企業メセナ協議会に顕彰されるなど、ダンス界に留まらない反響を呼んでいる。唐津に、DaBYの近況や2024年6月30日(日)群馬・高崎芸術劇場、7月5日(金)~6日(土)神奈川県民ホール、7月12日(金)~13日(土)愛知県芸術劇場にて催される「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024」の概要を聞いた。
 

■芸術支援・振興の新しくまっとうなあり方が評価され各賞を受賞

Dance Base Yokohama(DaBY)エントランス

Dance Base Yokohama(DaBY)エントランス

――2023年10月、唐津さんがアーティスティックディレクターを務めるDance Base Yokohamaの運営元である一般財団法人セガサミー文化芸術財団(2019年設立)が、DaBYへの取り組みを評価され、公益社団法人企業メセナ協議会による「メセナアワード 2023」において大賞にあたるメセナ大賞を受賞しました。評価ポイントとして「アーティストの創作活動と多様で実験的なプログラムを通し、ダンス文化の発展に寄与している」「社会に開かれた場をつくり、全国、世界へとダンスにかかわる人々の交流を促進し、業界全体の改革に向けて挑戦している」(企業メセナ協議会 プレスリリースより)と挙げられるなど高評を受けました。財団設立から4年、DaBYのグランドオープンから3年での受賞です。受賞時のお気持ちはいかがでしたか?

唐津絵理(以下、唐津) とても驚きました。2020年にDaBYを立ち上げるにあたってのコンセプトがほぼそのまま授賞理由になっています。私たちのコンセプトを外の目から見ても必要なことだと認識してくださった。とくに選考委員の方々がいい取り組みだと後押しくださった。このままがんばっていけばいいんだなという気持ちで勇気づけられました。

「メセナアワード2023」贈呈式 里見治紀氏(セガサミー文化芸術財団 代表理事)、DaBYスタッフらと

「メセナアワード2023」贈呈式 里見治紀氏(セガサミー文化芸術財団 代表理事)、DaBYスタッフらと

――DaBYのコンセプトをセガサミー文化芸術財団によくご理解いただけているのですね?

唐津 メセナ活動は1980年代終わり、とくに1990年代くらいから盛んになりました。多くの企業が経済活動で得た利益を社会に還元する形で芸術分野に対してもサポートをしてきました。ですが、企業によっては、さまざまな意見を調整していくうちに、結局は一般的な公演支援になることがあります。しかし、セガサミー文化芸術財団はメセナ活動に関しては後発ということもありますが、育成には継続が大切で創作の場が必要であることを理解してくださいました。

わずか3年の活動でメセナ大賞というのは異例でしょう。でも、逆にいうと、世の中が新らしいムーヴメントを求めている。今の状況ではよくないと思っている関係者の方がたくさんいらっしゃって、芸術支援には長期プロセスが重要だということに気が付いている。それが、私たちがやろうとしていることへの評価につながったのではないでしょうか。

「メセナアワード2023」贈呈式 里見治紀氏(セガサミー文化芸術財団 代表理事)と

「メセナアワード2023」贈呈式 里見治紀氏(セガサミー文化芸術財団 代表理事)と

「メセナアワード2023」贈呈式にて講演

「メセナアワード2023」贈呈式にて講演

――それに先立つ2023年3月、唐津さんが文化庁の令和4年度(第73回)芸術選奨文部科学大臣賞(芸術振興部門)を受賞しました。授賞対象は、愛知県芸術劇場×Dance Base Yokohama「パフォーミングアーツ・セレクション2022」の成果です。DaBYで創作し、愛知県芸術劇場で初演したダンス作品のミックス・プログラムを全国各地で上演したツアーが高評価されました。こちらは個人での受賞ですが、どう受け止めましたか?

唐津 メセナ大賞以上にびっくりました。ダンスにまつわる賞は少なく、しかもプロデューサーがフォーカスされることはほぼありません。芸術選奨の芸術振興部門は全分野が対象ですが、美術や音楽に陽があたることが多いので、ダンスを扱ってくれたことにも驚きました。

ダンスのプロデュースにおいて偉大な功績を持つ先輩方もたくさんいらっしゃるなかで私がいただいた意味を考えています。いま芸術的にも社会的にも閉塞感があるなかで、業界全体の改革に取り組もうとしている人を応援しようということなのではないかと思いました。それに、ダンスの取り組みですが、音楽や美術にも応用できるでしょう。贈賞理由で「ダンスに止まらない芸術の創造と振興・支援施策のあり方両面に影響を与える重要な取り組みを牽引してきた存在である」と触れてくださいました。「これからもがんばりなさい」といわれていると感じています。

メセナ大賞と芸術選奨の受賞によって、今まで関わってくださったスタッフやアーティストの皆さんと一緒にやってきたことがようやく少し日の目を見ました。皆でいただいた賞だと考えていますし、サポートしてくださった方々に本当に感謝しています。これからも志を一緒にする、共感し合えるさまざまな方たちと協力していきたいと思います。

令和4年度(第73回)芸術選奨 贈呈式  写真提供:Dance Base Yokohama

令和4年度(第73回)芸術選奨 贈呈式  写真提供:Dance Base Yokohama

令和4年度(第73回)芸術選奨 贈呈式  写真提供:愛知県芸術劇場

令和4年度(第73回)芸術選奨 贈呈式  写真提供:愛知県芸術劇場

 

■ダンスの受容を広げる「パフォーミングアーツ・セレクション」の試み

――2023年9月から10月にかけて、愛知県芸術劇場のほか高槻城公園芸術文化劇場、高崎芸術劇場、東京国際芸術祭と連携し「パフォーミングアーツ・セレクション2023」を開催しました。その前年も全国公演を行いましたが、2023年のコンセプトはどのように考えましたか?

唐津 2022年のときは、文化庁のアートキャラバン事業の助成を活用することができたので、あまりダンスプログラムをやっていない劇場が手を上げやすかったんですよね。なので全国7会場で開催できました。それはとてもよかったのですが、継続がとても大切です。今回も新規開拓になりましたが、各地の主催者はどこも継続したいということを強くいってくださっています。

どこの会場でも評判はいいです。どの地域にもバレエ教室がたくさんありますし、ダンスは盛んなので、観ることを熱望している観客の方々がいます。高崎ではアンケートの回収率がよく、高槻でのアフタートークでは帰る人がほとんどいない。目の肥えたお客様が増えるだけでなく、演じる側にとって「観られている」という感覚を強く感じるようなのでアーティストも育ちます。

イリ・ポコルニ『Night Shades』 ©Naoshi HATORI

イリ・ポコルニ『Night Shades』 ©Naoshi HATORI

――前年に比べて企画全体のコンセプトに変化はありましたか?

唐津 「パフォーミングアーツ・セレクション」は、Dance Base Yokohamaでクリエーションし、それを愛知県芸術劇場で初演し、その後できるだけツアーに回すというのが1つの流れです。「セレクション」と付いているように、2作品か3作品によるプログラム構成によって、さまざまなタイプのダンスを観ることができることを大切にしています。とくに今回は、ヴァリエーションの豊かな作品をご覧いただきたいと考えました。

1つはイリ・ポコルニ『Night Shades』です。実はワークショップを3年前からスタートをしていて、コロナ禍においてオンラインでやり取りを重ね、3年目に公演ができました。DaBYのレジデンスダンサーと海外のアーティストが一緒に仕事をする機会をようやく持てました。

そして、柿崎麻莉子×アリス・ゴドフリー『Can't-Sleeper』。柿崎さんは、DaBYレジデンスアーティストで、デュエット作品を創ってくださいとお願いしました。彼女は素晴らしいダンサーで、ユニークなソロ作品を発表しています。でも、デュオというのは他者がいるので、ソロを自分に振付するのとはまったく違うと思うんですね。そこも新しい試みでした。ソロとも群舞とも異なる自作自演と振付の間のような作品にしようとしたときに、柿崎さんと同じカンパニー出身で身体感を共有できるアリスさんにお願いすることになりました。

島地保武×環ROY『あいのて』もデュエットですが、ダンサー/振付家の島地さん、ラッパーの環さんは、身体的特徴も表現手段もまったく違います。愛知県芸術劇場で製作した2人の前作『ありか』(2016年)では、お互いのジャンルを乗り越えるというか、分かり合えるみたいなのがテーマでした。けれど、今回はプロセニアムで前を向いて上演してもらうことになるので、立ち位置が違うんですね。第三者的な視点としてドラマトゥルクがいたらいいだろうなとなって長島確さんに入ってもらいました。最終的には言葉の要素が大きい作品になり、コメディタッチの"哲学的コント"という呼び方をしていました。

柿崎麻莉子×アリス・ゴドフリー『Can't-Sleeper』 ©Yulia Skogoreva

柿崎麻莉子×アリス・ゴドフリー『Can't-Sleeper』 ©Yulia Skogoreva

――お客さんからの反応はいかがでしたか?

唐津 いい反応でした。「どの地域で、どの作品を上演するか」をいつも考えていて、劇場の担当者とも相談します。観ていただくお客様を想定するのは重要だと思います。ダンス公演を初めてみてくださる方からの「よかった!」という感想を聞くと、全国各地で公演をするやりがいを強く感じます。初めてご覧になる方をどのようにして増やしていくかが、ダンス文化をどこまで広げていけるのかにつながります。観たい人たちが増え、公演数も増えていかないと、ダンスで生活していく人々の仕事も確保できません。地道に継続していくしかありませんね。

島地保武×環ROY『あいのて』 ©Yulia Skogoreva

島地保武×環ROY『あいのて』 ©Yulia Skogoreva

 

■「マイナーチェンジをしながら継続できるようにしていきたい」

――昨年は、愛知県芸術劇場×DaBY ダンスプロジェクト 鈴木竜×大巻伸嗣×evala『Rain』もありました。サマセット・モームの小説「雨」に想を得た作品で、愛知で初演され、再演時には東京公演(新国立劇場)や愛知公演(幸田町民会館)、北九州公演(J:COM北九州芸術劇場)、秋には香港公演(香港文化センター)も行われました。どのようなコンセプトでしたか?

DaBY設立時に鈴木竜さんがアソシエイトコレオグラファーに就任しました。その集大成という位置付けです。DaBYではフェアクリエーションを掲げています。集まる人たちが、お互いなるべく意見交換をきちんとして、開かれたクリエーションの場でいい作品が生まれていくということを実現したい。これまでもコレクティブとして建築や音楽、ドラマトゥルクといった振付家/ダンサー以外の方に対等に入っていただいて話し合い、議論をしながら創ってきましたが、『Rain』では美術の大巻さんや音楽のevalaさんという、キャリアのある方々と竜さんが組みました。ダンス作品というと、どうしても観る人が狭まってしまいます。美術や音楽と対等な立場で創作することによって、総合芸術としての作品を創りたいと考えました。

『Rain』東京公演 米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル) 撮影:大洞博靖

『Rain』東京公演 米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル) 撮影:大洞博靖

――狭義の「ダンス」ではなく、パフォーミングアーツとして提示されたと。

唐津 そうですね。「パフォーミングアーツ・セレクション」というタイトルにそう付けているのも同じです。「ダンス・セレクション」でもいいのですが、イメージが制限されてしまう。もっといろいろなものが含まれるんだよというニュアンスを出したいのです。総合芸術として多くの人々の心をつかむ力のある作品、スケール感のある作品を観ていただきたいという想いがあります。『Rain』の国内公演には新国立劇場バレエ団プリンシパルの米沢唯さんに出てもらいましたが、参加してくださる皆さんにとっても新しい挑戦の場になればと願っています。

『Rain』香港公演 写真提供:New Vision Arts Festival 2023

『Rain』香港公演 写真提供:New Vision Arts Festival 2023

――2023年11月に香港で行われた芸術祭「New Vision Arts Festival 2023」において『Rain』を上演された際の手ごたえや反響はいかがでしたか?

唐津 スケジュールの都合で出られなかった方の代わりに現地でオーディションをした2名が新たに入りました。演じる方によって見え方が変わってくるなと感じましたね。香港のお客さまたちの反応はもの凄くよかったです。「こういうものは観たことがなかった!」と。芸術祭に招聘していただいたのですが、全演目のなかで最初にチケットが売り切れているんですね。舞台美術の存在感が大きいヴィジュアルや物語をベースにしているコンテンポラリーダンスということで注目されたようです。

『Rain』香港公演の会場となった香港文化センター

『Rain』香港公演の会場となった香港文化センター

『Rain』香港公演 終演後に 出演者・スタッフ一同と

『Rain』香港公演 終演後に 出演者・スタッフ一同と

――DaBYの新路線として進めていることはありますか?

唐津 いま始めたことをマイナーチェンジをしながら継続できるようにしていきたいですね。レジデンスアーティスト募集に関してもマイナーチェンジをしていまして、今年度は制作補助費が付きますし、遠からず公募採用したレジデンスアーティストのなかから「パフォーミングアーツ・セレクション」あるいは本公演に抜擢したいと考えています。

設立当初は、ダンスを創る場、創り手と観客がフラットに出会う場を作りたいと考えていました。しかし、コロナでリアルな空間としての場に制限がかかったことによって、制度や慣習といった非空間的環境についてより関心が向かっていきました。それが、作品を創るだけではなく、その後の再演にどうつなげていけるのか。それが、創る/観る環境について提言するフェアクリエイション宣言(※下部に詳細説明)につながっています。

Dance Base Yokohama(DaBY)アーカイブエリア

Dance Base Yokohama(DaBY)アーカイブエリア

――唐津さんご自身が今後に向けて取り組んでいきたいことは何ですか?

唐津 DaBYでは、フェアクリエイション宣言によって健全な創作環境を構築するために、創作に関わるすべての人がキャリアを超えて尊重し合うこと、観客を含めた第三者が参加するオープンな空間を創出することを掲げました。いっぽうで、たとえばMeToo運動などを通して、これまで隠されてきたり、抑圧されたりしてきた問題が勇気ある方々によって客体化・見える化されてきています。そういった問題を許容し、増長させてきた業界の構造や環境をつまびらかにすること、その上で再構築していくのが私の使命なのではないかと思っています。

Dance Base Yokohama(DaBY)アクティングエリア

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■NDTが5年ぶり来日! 世界のダンスの最前線&最高のクオリティに触れる

――海外招聘公演についてうかがいます。昨年、カナダからクリスタル・パイト率いるダンスカンパニー、キッドピボッドの初来日公演『リヴァイザー/検察官』を実現しました。2024年は6月~7月に「NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)プレミアム・ジャパン・ツアー2024」を群馬、神奈川、愛知で行います。NDTアソシエイトコレオグラファーのクリスタル・パイトとマルコ・ゲッケ、巨匠ウィリアム・フォーサイス、ピーピング・トムのガブリエラ・カリーソ、日本で初めて本格紹介されるシャロン・エイアール&ガイ・ベハールという5組の振付作品を日替わりで3作品上演します。近年の現代ダンスきっての大型招聘ですね?

唐津 "プレミアム"と付くようにスペシャルです。通常トリプル・ビルでは3作品を紹介します。つまり3作品しか来ない。ですが「どうしても5作品上演したい!」とお願いしました。日替わり上演の場合、テクニカル的に大変です。毎回吊り物や舞台装置を変えたりしないといけないので。ですが、今回は5作品を日替わりで上演します。本当は1つの会場で全作品を観ていただきたいのですが、1カ所の会場で2公演行う場合トータルで4作品を上演できる形までなんとか交渉できました。2会場に来ていただかなければいけないのですが、そうすれば5作品をご覧いただけます。本来であれば3作品しかできないところをツアー全体で5作品全部観られるようにしました。

観たい作品を選んでいただく。それはとても重要だと私は思います。自分で何かを選択をする、演目がたくさんある場合に自分はどれを面白いと思うかと考えて選ぶ。高崎で観てみよう、愛知で観てみようというように、観る環境を選ぶこともできる。観るということは、自己決定であり能動的です。そこが、映像やテレビで流れているもの見るのとライブとの一番大きな違いです。チケットを買い求めていただく際から能動的なアクションを体験していただければ幸いです。

『Jakie』by シャロン・エイアール&ガイ・ベハール ©Rahi Rezvani

『Jakie』by シャロン・エイアール&ガイ・ベハール ©Rahi Rezvani

『One Flat Thing, reproduced』by ウィリアム・フォーサイス  ©Rahi Rezvani

『One Flat Thing, reproduced』by ウィリアム・フォーサイス ©Rahi Rezvani

――なぜ、いまNDTなのかを今一度お聞かせいただけますか?

唐津 財政状況が厳しく円安でもある状況において、世界一流のダンスカンパニーが来日する機会が大幅に減っています。そういったなかでも圧倒的な作品を観てほしいという気持ちがあります。私たちの世代は、フォーサイスやピナ・バウシュもどんどん来日していて、海外の最先端のダンスをたくさん観ることができました。それによって自分の目線が上がったというか、もっと凄いものを創りたい、面白いものを観たいということにつながっていると思うのです。今の若い人たちにも観たことのないユニークな作品を観ることができる状況を作っていきたいですね。

そのとき、何か一つの作品を上演することはできますが、いろいろなタイプ、さまざまなアーティストの作品があったほうが選択肢が広がります。だから3作品ではなく5作品なのです。そうすれば5人の振付家の思想やフォルムに触れることができる。その5人のなかでよく知られているのがフォーサイスと、前回来日したマルコ・ゲッケ、クリスタル・パイト。それに、ピーピング・トムのガブリエラ・カリーソ。そして、今回初めて日本に本格的に紹介するエイアール&ベハール。ベテランから最前線の作家までの作品に接すると、西洋の舞踊史、世界の現代ダンス史に触れることができると思うんです。そこを重視するとNDTになりました。

『Solo Echo』by クリスタル・パイト ©Rahi Rezvani

『Solo Echo』by クリスタル・パイト ©Rahi Rezvani

『La Ruta』by ガブリエラ・カリーソ ©Rahi Rezvani

『La Ruta』by ガブリエラ・カリーソ ©Rahi Rezvani

『I love you, ghosts』by マルコ・ゲッケ  ©Rahi Rezvani

『I love you, ghosts』by マルコ・ゲッケ ©Rahi Rezvani

――唐津さんから見た、NDTの凄いところとは?

唐津 ダンサーのクオリティが本当に素晴らしい。世界中から入りたい人が詰めかけるなかから選ばれるメンバーですから。そして、どんどん新しい作品をクリエーションしています。素晴らしいダンサーたちに振付をする機会を得ると振付家も鍛えられます。したがって、そこから生み出されている作品のクオリティはもの凄く高くなります。

なお、NDTのダンサーにも触れていただきたいので、今回のツアーの全会場でワークショップやトークも計画中です。

ちなみに、このカンパニーは国立の舞踊団ではありません。オランダ国立バレエ団から、もう少し自由な表現を追求したいというダンサーたちが自分たちで始めたカンパニーです。そのプライベートな団体が、60年経ってここまでの規模になって、常に最先端のダンスを上演し続けている。それでいてビジネスとして成立しているのも凄いですよね。プロデューサーとして運営手法的にも学ぶところが多いです。

――神奈川公演で18歳以下対象の無料招待、愛知公演では「劇場と子ども7万人プロジェクト(小・中・高校生招待)対象公演」を実施します。その意図をお聞かせください。

唐津 ダンスを観たことのない方々に劇場に来ていただきたいという思いから、これまでにも若い世代の皆さまへの招待を継続的に行ってきました。子供時代に初めて接した作品が、生涯の出会いになることもありますから、最初の一歩としてどんな作品を選ぶかもとても大切ですね。「子供にわかるかしら?」と心配される保護者もいらしゃるかと思いますが、子供たちは大人以上に想像力が豊かなので、若い感性でダンスのエネルギーを身体いっぱいで受け止めてくれると思います。また、神奈川公演では、昨年までは横浜市内在住・在学の方々を対象としていましたが、より多くの方々に触れていただきたいという考えから、居住/在学地を限定しない方針に変更しました。愛知と神奈川、いずれも対象の方であればどなたでもお越しいただけますので、皆さまのご来場をお待ちしています。

【PV】NDT Japan Tour 2024/ネザーランド・ダンス・シアター プレミアム・ジャパン・ツアー2024

 

取材・文=高橋森彦

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ミュージカル『ビリー・エリオット〜リトル・ダンサー〜』(脚本・歌詞:リー・ホール、演出:スティーヴン・ダルドリー、音楽:エルトン・ジョン)が、2024年7月~10月に東京建物Brillia HALL(東京都)、11月にSkyシアターMBS(大阪府)で上演される。日本公演は今回で3度目となる。

本作は、イギリス北部の炭鉱町でバレエダンサーという夢を見つけた少年ビリーと、彼の背中を押し、希望を見いだす人々を描いた傑作ミュージカルだ。“家族のドラマ”としての見どころもたっぷりなこの作品で、ひときわチャーミングな人物像と愛情表現で目を奪うのが、ビリーのおばあちゃん。ちょっと認知症気味でありながらも家族を見つめ、ビリーにたっぷりと愛情を注ぐおばあちゃん役(ダブルキャスト)を演じるのは、根岸季衣阿知波悟美。ピュアなビリーに「キュンを感じる」という、ベテランのふたりから話を聞いた。

 

■ビリーの“今だけの輝き”を毎日見れる幸せ

—— おふたりがそれぞれ考える、この作品の魅力をお聞かせください。

根岸 この作品にはいろんな人生の、いろんなテーマが入っているんです。子供が中心のミュージカルではあるけれども、目線を変えると、ものすごく大人なドラマがたくさん描かれています。それは 男の生き方だったり、女の生き方だったり、老女のこれまでの人生振り返りだったり、炭鉱夫たちの組合が抱えている社会的な問題まで、あらゆるものが詰め込まれている。それぞれが必死で生きている様が、全編を通して表現されています。それでいて、観ている人にはすごく楽しめる。そして上演の質的レヴェルはとても高い。技術的にもいろんな要素が入っていて、魅力が盛りだくさんだと思います。 

阿知波 本当に、もう全部なんです。どこか一部を挙げて「ここが魅力的ですよ」と言っても、それはあくまで一部でしかなくて。突出して「ここ」ということではないんです。元々私は劇団(劇団NLT)に所属している役者なので、その立場から言わせていただきますが、外部のミュージカルに出演していると、楽曲の部分が前面に押し出されるあまり、芝居の部分がおざなりに作られてしまうことがあるんです。でも、この『ビリー・エリオット』は、芝居の部分も本当に細かく作られている。気持ちの変化、それから根岸さんもおっしゃったように社会情勢、また、認知症になるくらい年老いていく祖母の心情とか、とにかく全部に関して芝居がきっちり作られている。そこが「すごいな」と思います。アンサンブルの皆さん一人ひとりのキャラクターも全部きっちり決まっていて、「うまくできているなぁ」と思いますね。

—— ビリーにとって、もちろんお稽古はすごく大変で、いろんな苦労もあるのでしょうけれど、 おばあちゃんを演じるおふたりにとっては? この作品のお稽古というのはどういうものですか?

根岸 ビリーが4人いるので。「やりにくい子とかいるの?」なんて聞かれることもあるんですが、まったく感じないですね。やりにくさを感じたことは一度もない。それってすごいことだと思うんですよ。かといって一人ひとりが個性を押し殺しているのかと言うと、そうじゃないでしょう。普通に考えれば、「4人も相手が変わってどうなの?」と思うかもしれないけれど、それが成立するところがまたすごいところだなと思うんです。演出がよく練られているから、ビリーたちをフォローするようにできていて、彼らに無理がかからないような形で呼応できるようになっているのかもしれないですね。とにかく違和感を感じさせない。いろんなキャストが入れ替わるような舞台でも、そうは感じさせないんですよね。だから誰とやっても面白いんだと思います。その代わり、お約束事はとてもたくさんあるんですよ。でもそれさえ(頭と身体に)入ってしまえば、あとは本当に何も違和感なく、どの子とも一緒にやれる感じですね。

—— そのお約束事が枷(かせ)にはならないんですね。

根岸 そうならないために、お稽古をするんです。でも、そのお約束自体も、本当に上手に作られてるんですよ。ちゃんと芝居がやりやすいようにできている。だから期間が長くても、ダレていかないんですね。そう、飽きるとかダレるとか、そういうことはないですね、ずっと。

—— やはり、ビリーを演じる子どもたちの、本当の成長というのがあって。そこで成り立っているということもあるかもしれないですね。

阿知波 そうかもしれないですね。本当にこの“今だけの輝き”みたいなものもあるからね。

根岸 同じ舞台に出演している私たちまで「見逃したくない」と思うほどの、そのくらい素敵な輝きだから。毎日見ることができて幸せです。見られてラッキー、みたいな(笑)。

阿知波 ビリーのパフォーマンスがひとつ終わると、なんかこっちも力が入る感じになるんです。自然と応援しちゃってる、というか。

根岸 「よし、今日もやった!」みたいなね。ターンがちょっとでも失敗したりするとね、もう本当にハラハラするし(笑)。

阿知波 でも、あの子ら、ひとりで立ち直るんですよー(笑)。

根岸 製作発表の時だって、リハーサルの時にちょっと失敗して、裏で大泣きしていたのに、本番では途端にニッコニコで、「面白かった!」だって。すごいよ、もう。

阿知波 彼らを見ていると、初心に帰るっていうよりも、もっともっとピュアなものを感じるんです。私たちが大人になって役者になった時の初心なんて、もっと汚れていたから。

根岸 製作発表を観て、すごくうるうる来てボロ泣きしちゃったの。「ダメだー、ヤバいヤバい」って。もうずっと鼻水が出ちゃって大変だったんですけど。もっともっとピュアな何かがある感じ。もちろん4人の中でそれぞれに切磋琢磨もあるんでしょうけれども、でも、向かう方向が同じだから、心を打たれるんでしょうね。

—— ビリーたちの助け合う関係性が、製作発表でのパフォーマンスの演出にも入ってましたね。応援し合い、支え合う感じが微笑ましかったです。

根岸 みんなオーディションの時から、一緒にやってるうちに仲良くなっちゃうみたいですね。だから、選考する側も(不合格者に対して)すごく痛みを伴うらしいです。最後の方では情が移っちゃって、もう切れないっていうぐらい。そういうことを経て、みんな結束が固くなっていくのでしょうね。

■ビリーが大人になって踊る姿をおばあちゃんに見せてあげたい

—— 根岸さんと阿知波さんは、互いのおばあちゃん役の舞台を観たりされますか。

根岸 はい。自分がやっている舞台って普通は観られないじゃないですか。それを観られるのは、すごく嬉しいな。

阿知波 ダブルキャストって、長くてもあんまり苦になりませんからね。年寄りに優しい。今回も公演期間はすごく長いですけど、そんなに苦にならない。 

根岸 年相応の体力でちゃんとやれるようになっていますよね。

阿知波 ただ、フィナーレはちょっとね……びっくりな格好させられますけど。

根岸 えー、私はすっごく嬉しいですよ。いやもう、だって、昔バレエを習っていて、トウシューズは持ってたけど、チュチュは着たことがなかったから。「うわ、60過ぎてチュチュ初めて着られるわー!」って、私はすごく嬉しかった。

阿知波 ほんとですか!? 私は「あらやだ、こっぱずかしいわぁ」と思いながらやってましたけど(笑)。

根岸 私、結構テーマですよ、あそこ。

阿知波 なるほど。よし、じゃあ私も今回は根岸さんと同じように、そう思うようにします。「やったー、嬉しい」と思ってやっていると、ちょっと違うかもしれません(笑)。

—— おばあちゃんといえばやっぱり、暴力男だけど踊ればマーロン・ブランドだったとおじいちゃんを回想するナンバー。ものすごく心に残ります。

根岸 そこではDVを取り上げているわけですよ、今で言えばね。でも昔はもうそれが当たり前だったんですよね。どこの国の女性でもそうであったという、歴史みたいものをね、さりげなくちゃんとミュージカルの中に入れていて。自分たちであのナンバーをソロでやらせてもらうっていうのは、とても素敵な経験をさせてもらっているなと思います。

阿知波 私も同じです。私、今まで随分とミュージカルをやってきましたけれど、こういうグランド・ミュージカルで、ソロで歌うってことがなかったんですよ。大体掛け合いだったり、コーラスと一緒にとか、そういうのが多かったので。だから、初めてのソロです。

根岸 え? そうとは思えないね。阿知波さんのキャリアをもってして。ミュージカルも数々やってきて、そうだったの?

阿知波 何人かでやるというのはあったのですが、ミュージカルで完全にソロで歌うというのは初めてだったんです。だから初めてそのシーンに入った時には、ちょっと震えました。「誰にも助けてもらえないんだな」というのがあって。そんな風に思ってますよ。あそこのシーン、しかも男性のダンサー付きじゃないですか!

根岸 幻想の男性ダンサーたちが素敵なのよね。だから演出補のトムも振り付けの時は、めちゃめちゃ男性の方に力入ってましたけどね。でも来日スタッフの彼らが再演のプログラムで「すごく気に入ってる、いいシーンだと思ってる」と言ってくれた。「何? 私たちのあれ、いけてるのかな」と、すごく誇らしかったです。

阿知波 そうなんです。本当に光栄です。

—— 1曲の中に入ってるものが、すごく豊かですよね。おばあちゃんの人生そのものが入っているような。

阿知波 ねえ、本当にそうです。それで最後、ビリーがまた泣かすわけですよ。チュ、なんてしちゃって。手に手をそっと取ってチューなんてしてくれるから、なんかもうキューンってなっちゃうの(笑)。「ありがとうー!」って。

根岸 あそこは不思議なものがありますよね。恋愛とはまた違う、なんとも言えないキュンがね。ちょっとやって「良かったよ」なんて言われると、本当にそうなる。不思議な恋心みたいなトキメキが湧いてきて、あのままギュッてしたくなるんだけど、そういう演出ではないのでやらないんですけど。もう本当にね、泣かすんですよ。ただそれだけで泣かすって、すごいですよね。

—— ウィルキンソン先生役のおふたりと「この作品はウィルキンソン先生とビリーのラブストーリーでもある」という話をしていたんです。でもこれ、おばあちゃんとビリーのラブストーリーでもありますね。

根岸 嬉しいですねー。そう言っていただけると嬉しいです。

阿知波 でも、本当にそうかもしれませんね。愛の形は違ってもそう、ラブストーリーでしょうね。だって、ビリーはとっても愛してくれているから。で、私たちもビリーをとても愛しているから。 おばあちゃんは大きくなったビリーを見られたのか見られていないのかわかりませんけど、「見せてあげたいな」と思いますよね。ビリーが大きくなって、ロイヤルバレエで踊ってる姿を、「おばあちゃんに見せてあげたいな」と本当に思います。

—— では、読者の皆さんにメッセージをお願いします。

根岸 観ていただいて損はないです。絶対に感動します。100%感動すると思うので、ぜひ劇場に足を運んでいただきたいです。

阿知波 できればおひとりじゃなく、どなたかと見にいらっしゃれば、その人と帰りに豊かなお話ができる作品じゃないかなと思います。ぜひご家族やご友人と複数でご覧ください。そして、複数回ご覧ください。いろんな発見があると思います。

取材・文=若林ゆり  写真撮影=池上夢貢

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